session-22で安保法案の裏で審議されていた重要法案を特集していたので、まとめておこうと思います。
改正労働者派遣法について
佐々木亮(弁護士)
今まで派遣会社は一つの業務について3年しか労働者を使うことができず、その後は直接雇用に切り替えなければなりませんでした。
しかし、3年で人を変えれば一つの業務を継続することができるようになります。
また、無期契約社員に至ってはずっと派遣のまま使い続けることができる。
政府は研修の義務付けを理由にキャリアアップと言っているが、研修内容は企業任せなうえに通常業務を行うためのスキルなので今までと変わりません。
賛成派と反対派の意見で一致していたのは「派遣社員が増える」ということ。
でも、政府はこれを認めませんでした。
国会の中で安倍総理は何回も正社員への道を口にしていたが、それ以上の言葉を持っていなかったのは残念です。
改正マイナンバー法&改正個人情報保護法について
鈴木正朝(新潟大学教授)
マイナンバーを用いるのは「預金口座」「医療分野」「地方行政」の3点です。
個人情報保護法については個人情報委員会の設置と権限の拡大、他には社員5000人以下の会社には適用しないとなっていたものを撤廃、匿名加工や第三者提供する場合の記録義務、罰則の強化や開示などについて大きな変更がありました。
マイナンバーのリスクについて誤解されているのが情報を一箇所に集めるということです。
情報は分散して管理するのですが、問題なのはデジタル化したうえでの名寄せ作業はリスクが高いということ。
気をつける点としては、国家権力が選挙の際に低所得者向けの政策を行う為に所得情報を使うことが考えられます。
これからはマイナンバーを使った制度についてチェックしていくことが重要です。
だからと言って管理社会に走られては困りますが。
4000円を還付する為に全てのレジにカードリーダーを設置し、自動販売機を交換し、カードセンターを設立するまでにどれだけ時間がかかるのでしょうか?
費用対効果としてもおかしいですし、使う方は「低所得者です」と明示することになります。これは自尊心を傷つけますよ。
医療保険制度改革関連法について
大野更紗(作家)
内容は多岐にわたりますが、主な点でいうと国民保険の運用が自治体から都道府県に移るとか、高齢化と財政難についてどう対応していくかということです。
目立つのは患者の自己負担が増えること。
例えば、今まで入院時の食事代が1食260円だったのが段階的に引き上げられて、2018年には最終的に460円になります。
食事は三食ですから3食で1380円の負担になります。
今はどこの病院にもかかることができますが、救急を除いて大病院にかかる場合は紹介状がないと、初診料と合わせて定額負担(現在は5000円か1万円を決めている)が必要になります。
ほとんど報道がありませんが、私が気になっているのは患者申出療養の創設です。
先端医療を患者が望んだとしても、今までは国の安全審査に6ヶ月が必要でしたが、これが6週間で審査されるようになるのです。
「患者申出」となっていますが、患者が専門的な知識を得ることは難しいです。
医師に医療方法を提示されたときに選択できるのでしょうか。
刑事訴訟法改正案(今国会では見送られた)について
指宿信(情勢大学教授)
主な変更点を挙げるなら5つあります
- 取り調べの可視化
- 司法取引の導入
- 録音・録画の義務
- 盗聴対象と方法の拡大
- 検察の証拠リストの開示
- 被害者に対する保障
村木厚子さんの事件が発端となって取り調べの可視化が必要(明確な立法事実)とされたわけですが、警察側は録画や録音をすると犯人が本当のことを言わなくなってしまって供述が取りにくいと言い出しました。
だから盗聴法の拡大が必要なのだと。
問題なのは今まで特定の場所で行われていた捜査が、誰も見ていないところで行われることでしょう。【以上】