全てがフリになる!
「ああ、この人、ジブリの鈴木さんと対談してた人だ」
そう思って、本を手に取った。
表紙にはUFOと回転木馬、そこから落とされる1人の人間が描かれていた。
ブリューゲルの「イカロスの失墜」を思わせる絵に興味をそそられる。
分厚い本なので何日もかけて読むことになると思いきや、映像が頭に浮かんでくるようなドラマが描かれているので1日で読む事ができた。
何日もかかる本は興味の鮮度が落ちてしまうので、読み終わった際に「楽しい」という感情は少ない。
そういう意味でこの本は私にはちょうどいいボリュームだった。
タイトルを見て分かるように堅苦しさは微塵もないので、エンターテイメント性に特化している印象を受けた。
- 自分の秘密を他人と共有する意味とは?
- コミュニケーションが高いから何なのか?
- 集団と地位と主観について
- 子どもは親の背中を見て育つ
- 全てがフリになる
各話にサブタイトルを付けるならこんな感じに思います。
朝井リョウという作家はトレンドを把握する能力を活かして、問題を浮き彫りにするストーリーを構築するのが得意なんだろうと感じました。
特にそれを感じたのは「13.5文字〜」の話で、ニュースの見出しだけで全体を把握したような感覚に陥る受け手と、記事のPV数に一喜一憂する記者が報道の役割を放棄していく感じが「あぁ、今だなぁ」と。
その分、私にはオチが面白く感じられました。
子どもらしからぬ言葉のチョイスで母親を畳み掛けるシーンが何とも言えない。
しかも、授業参観ですからね。ええ。
登場人物の名前は実在する役者さんの名前をもじった名前なので、頭の中の映像に具体的な顔が見える創りです。
私は登場人物の名前で興味が失せることが多い人間ですが、ギャグというスタンスが分かっているので気になりませんでしたし、逆に見やすかった(人物像を想定して読みやすい)です。
ただ、的確に人間を真下に落とす謎の装置が、緻密な機械なのか、或いはフィクションとしての装置と片付けてしまうのか定義されてないのが引っかかります。
名前が具体的なだけに、その穴だけフィクションというのが腑に落ちないというか。舞台裏で監督が汗まみれになって装置を動かしているのもアリだと思いました。
- 作者: 朝井リョウ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/11/19
- メディア: 単行本
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