モブトエキストラ

左利きのメモ魔が綴る名もなき日常

「地下の鳩/タイムカプセル」の感想


私は人情話が得意ではない。
知らない人の歴史に興味を惹かれないからだ。
これは自分のボキャブラリーが少ないから親近感を抱けないと言い換えることができる。

「地下の鳩」は凸と凸の男女の話で、互いにさほど思慮が深くないのに、自分の頭に思い描いた想定内の人や物事に飽きている。そこだけに共鳴し合って生きていく物語。

正直、私には面白くなかった。
まず読み始めた冒頭の文章が頭に引っ掛かってしまって、この文章が最後までほどけることがなかった。
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分からん。

「タイムカプセル」は「地下の鳩」のサブストーリーで、アイデンティティの肯定をいかにするかという問題と、集団生活における迫害が描かれている。

迫害や差別という問題を考えるのは、たいてい被害を受けた側であって、加害者はそんなことを考えない。だからこそ、問題は解決することがないのだが。
この尽きることのない問題をいかに被害者は肯定して(差別や迫害の肯定ではなく、自分の生存権の肯定)いくか。
その答えが少し書かれている。
「タイムカプセル」というタイトルは綺麗だと思った。

地下の鳩 (文春文庫)

地下の鳩 (文春文庫)