モブトエキストラ

左利きのメモ魔が綴る名もなき日常

「クマにあったらどうするか 〜アイヌ民族最後の狩人 姉崎等〜」の感想

足の速い奴ほど…

f:id:ebiharaism:20160414145911j:image
↑この絵が可愛いのでつい借りてしまいました。
この本はアイヌ民族の風習、姉崎さんの生き方から見える戦争体験や戦後の生き方、もちろん猟師に関する部分もあって盛りだくさんの内容となっています。
こうした本を作ることは歴史的にも価値があるなぁと感じました。
とりあえずタイトルに対する答えの部分をまとめておこうと思います。

人間がグマに近づきすぎた!


【クマと遭遇しないために】
  1. ペットボトルを歩きながら押してペコペコ鳴らす
  2. または、木を細い棒で縦に叩いて音を立てる
クマは頭がよく音に慣れてしまうので、「気持ち悪い」という得体の知れない恐怖を持たせる為の工夫が必要ということ。
姉崎さんから見ると、クマは人間に遠慮しながら里の近くで暮らしている生き物だそうです。どうして襲われるのかというと、時代が変わり人間が山奥まで来るようになってしまった事や山を切り開いてドングリのならない針葉樹林を植えたことが主な原因だとのこと。
『クマに迷惑をかけて、国民病になるまでスギの木植えるクソ政治めっ!』と思ってしまいました笑
具体的な対策を書き出してみます。


【クマに遭遇したら…】
  1. 背中を見せる事は命を差し出す行為なので逃げてはいけない。足の速い人ほど殺される。
  2. 腹の底から大声を出す。
  3. 基本的に目をそらさずに動かない。
  4. 腰を抜かしても動かないこと。
  5. 子連れグマに遭遇したら子どもを見ずに親グマを見る。また、遭遇する前にクマは人間に対して地面を叩く警戒音を発するので、それを聞いたら速やかに立ち去る。
  6. クマは蛇が怖いのでベルトを振り回すのは効果的
  7. 釣竿で音を立てたり、柴を振り回す
  8. 柴や釣竿を引きずりながら静かにその場から離れる。
  9. 手負いのクマはハンターを逆に殺そうとする。死んだように動かずに2mの範囲内に人間が踏み込んだ瞬間にシカよりも速く動いて人間を仕留める。
  10. クマとゼロ距離になった場合は勇気を出して、クマの口の中に手を突っ込んで気道をふさぐ。死なない程度の怪我をするが、生き残る確率はある。

クマの食性は草食寄りの雑食性で、好きなものはサルナシ>ハチミツ>ドングリだそうで、とくにハチミツを見つけたら刺されても食べたいんだそうです。
これを踏まえるとくまのプーさん「ハチミツ食べたいなぁ」は過剰演出でもなさそうですね。
そんなクマがなぜ人間を襲うのかといえば人間のせいというのが大部分ですが、具体的に書いてみます。

プーさんが人間を襲う時

①うちの子に何すんのよ!

母グマは子グマが3歳になるまで一緒に行動します。3歳になるまでに山のどこにどのような草が生えているのかなどを子どもに教えることになります。
仮に何らかのアクシデントで子グマが母グマを失った場合、生きていくのは難しく「子どもがいるうちは絶対に死ねないというように、母グマの魂が母親を殺さないんだと思うね」と姉崎さんは語っています。
ですので、クマの親子が近くにいたらその場を離れることが重要です。


②手負いのクマはハンターを狩る
この本を読んで初めて知ったのですが、クマはハンターが足跡を追跡することを理解したうえで、わざと足跡をたくさん残したり、今まで歩いてきた自分の足跡の上を通って引き返し、別のルートに逃げる「止め足」という技法を使うそうです。
また、ハンターが木にナイフでつけた目印を自然のものではないと判断することもできるとのこと。
これだけでも驚きですが、今挙げたのはいかに自分からリスクを遠ざける為に能力を使うのかという面であって、この能力が相手を殺す為に注がれたら…
人間狩る方法はホオジロザメと似ていて、まずは足跡で撹乱したあとに人間の後ろ側に回り込み、坂になっている場合は地形を利用して人間を殺すそうです。
その速さはシカ以上。
f:id:ebiharaism:20160416130722j:image


③若グマがじゃれてくる

人間を恐いと理解する前の若グマの中に、興味を持って近づいてくる個体がいるそうです。
人間と同じように一体ごとに性格が違うそうですが、とくに性格が悪いのはアゴが長い個体だそうです。


④人間って美味しいね
f:id:ebiharaism:20160416131947j:image
アイヌにとってクマは神であり、クマにとって人間は自分よりも弱いのに恐い存在です。なんとも不思議で緊張感のある関係性に思います。
しかし、クマが人間の味を覚えてしまうと人を能動的に襲うようになってしまいます。そうなるとクマの姿をした神ではなく、ただのクマでしかない。クマを狩猟したあとには神をもてなす儀式を行うそうですが、悪いクマを狩った際には敬意を払うこともなく。
それと「なるほどなぁ」と思ったのは、手に持っている食べ物を投げてクマの注意を逸らして逃げるということをクマが理解してしまうと必ず次の被害者が出るという姉崎さんの指摘です。
つまり、人間を脅かせば食べ物が手に入ると理解したクマは人間を襲うということです。誤った知識の流布によって命を危険に晒すことは避けたいですね。

以上が姉崎さんが長年の狩猟生活で身につけた知恵です。この知恵を身につけるまでの人生も濃厚で、戦争や差別、戦後の貧困といった人間社会の根源的な問題も描かれています。
これは是非読んで欲しい一冊です。

クマにあったらどうするか: アイヌ民族最後の狩人 姉崎等 (ちくま文庫)

クマにあったらどうするか: アイヌ民族最後の狩人 姉崎等 (ちくま文庫)





広告を非表示にする