モブトエキストラ

左利きのメモ魔が綴る名もなき日常

「日本会議の正体/著 青木理」の感想

 

 私にとってラジオは必要不可欠な存在で、JamTheWorldを聴くことは日常の一部となっている。世の中の様々な事件や出来事に対して多くの見方ができるので聞いてて飽きない番組だ。


だがしかし--


いくらメッセージを送っても読まれることはほとんどなく、私のメッセージが読まれたのは一度だけ。その一方で、グリーンアースさん、さとしんさんの採用率はズバ抜けており、メッセージの内容も他のリスナーが言わないであろうという意見。
エースストライカーのポジショニングセンスを目の当たりにし「もう読まれなくていいやぁ。球拾いしてよう」という気分になっていた。

 

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そんな中、青木理さんの新刊「日本会議の正体」がまさかの当選!

本来であれば参院選の前に書店に並ぶはずだったのに、なかなか原稿が上がらず、遅くなってしまったお詫びに青木さんが5冊をリスナープレゼントしたという流れです。 球拾いしていた私は「下さーい」みたいな、自分でも内容をほとんど覚えていないメールを送って…笑

 「本当に私でいいのだろうか? 」という困惑と当選の喜び、合わせて宗教色の強い本を読み終えることができるのかという謎プレッシャーを抱えてページをめくり始めました。めでたしめでたし…と見せかけて、はじまり、はじまり。

 

うわぁ…

http://merkmal-for-someone.hatenablog.com/entry/2016/06/19/184332

日本会議については他番組のSESSION-22でも特集されていたので、簡単な予備知識は入っているつもりでした。

でも、組織を説明する必要があるので登場人物が多く、人物の名前を覚えられない私にはヘビーでした。また、青木さんの文章をちゃんと読むのも初めてで、ラジオの気さくな印象と違う鋭利な文章に「青木さん、洞察力が鋭すぎて凶器ですね」と思ってしまいました。

内容については日本会議が現在に至るまでの系譜、中心人物、変革などが詳細に綴られていて、批判するスタンスとはまた別にとても重要な資料に感じられました。

取材内容を例えるなら、RPGで初めて行くダンジョンの中にいるモンスターの確認とマッピング作業に似てます。

とても地味な作業でありながら、必ず帰還できるある程度の腕前が無いといけないのです。日本会議という巨大であるのに秘密のベールに隠れた組織を取材できるジャーナリストの数も限られていると私は感じるのです。そういう意味でもこの本は貴重だと思いますし、何より日本会議を取材していて「面白い」と思えなければ本にはできないわけなので、青木さんの探究心もヤバいんじゃないか?と…笑

とりあえずの感想はこれぐらいにして、ザックリとした流れを書いておこうと思います。

 

出口なお大本教を創設

谷口雅春大本教の信者であり「生長の家」という個人誌を発刊。軍人や未亡人をターゲットに手紙を送り、記事のネタを募集する「手紙布教」という形で信者を集め株式会社をつくり、新聞広告を出すなどして購読者という名の信者を獲得していった。「病気の治癒」と「人生相談」の2つを軸とした万人受けする内容と、谷口の文才が購読者を増加させた側面がある。

 

1964年「生長の家政治連合」を結成

 

1966年

生長の家学生会全国総連合」結成

長崎大学教育部を手中に収める

早稲田大学を中心に「日本学生同盟」を結成

 

1969年「神道政治連盟」結成

1974年「日本を守る会」結成

→宗教者と文化人を中心とした団体

1981年「日本を守る国民会議」結成

元号法制度を目的としていた団体

1983年「生長の家政治連合」が活動休止を宣言

1985年 谷口雅春が死去

→これをきっかけに「生長の家」は聖戦という認識であった大東亜戦争を「侵略戦争」とし、反発した信者が排除され、または離脱し谷口雅春の信者たちが「日本を守る会」に流れる。

1987年

日本会議国会議員懇談会」設立

日本会議」結成

→「日本を守る国民会議」と「日本を守る会」が合併。政治に対する圧力を大きくすることと、神道を崇拝する人間たちは創価学会を脅威に思っていた背景がある。

 2001年「日本女性の会」結成

2014年「美しい日本の憲法をつくる国民の会」設立

 

 

ざっと年表から抜き出してみるとこんな感じです。何十年もかけて布教活動をしてきた彼らの組織力は現在では簡単に武道館を満員にできるほどになっているそうです。(いわゆる動員ですね)

青木さんの指摘の中で面白いなぁと思ったカ所があって『自民族中心主義に陥りかねない』と書かれてるんです。

従来の自由民主党(アメリカの間接統治には違いないが)ではなくなったということが、こんなにも分かりやすい言葉で表現できるんだなぁと納得してしまいました。

自民族中心主義の中に含まないから、沖縄に対して差別をしても何にも感じないのだし、根底に民主主義がないので「嫌なら出ていけ!」という単細胞であっても厚顔無恥を感じない。

現代社会における理解しがたいハレーションを納得できるんですよね。

 

しかもこの思想って、アングロサクソンっぽいように思うんです。

つまりは「俺たちが侵略してやったから仲間になれたんだぞ!ありがたく思え!」みたいな論理の飛躍で、自分と異なる意見を排除し続けた結果、比較対象を持っていないから埋めようのない穴があるんです。この埋めようのない穴が自己責任論に帰結するのだと私は思うんです。

 

日本会議を支援する宗教者たち

組織についてのザックリとした概要の次に、資金の流れについてまとめておきたいと思います。

今回、青木さんが取材をするにあたってかんこう令でも出たのか、取材のNGやドタキャンが相次いだそうです。そんな中、横浜市港北区にある諸岡熊野神社宮司である石川正人氏がインタビューに応じてくれました。

個人的にこのパートは目から鱗でした。

 

  1. 全国各地にある神社の総数は8万数千社あり、その90%以上神社本庁の傘下にある。
  2. 神職神社本庁が与えている資格で、神奈川県内で日本会議の運動に参加している神職の方は15〜20%
  3. 1882年に伊勢神宮が神宮皇学館をつくり、これを明治政府がバックアップして神宮皇学館大学に格上げした。敗戦後の1946年にGHQにより廃学とされるも、出身者と政財界の有力者により1962年に私学として現在の皇学館大が創られた。
  4. 普通の地元の神社にお金はなく、日本会議の運動に参加することで参拝者が減ってしまうことを考えると、活動するのは難しいと考える神社関係者は多い。
  5. 資金があるのは山手線沿いに所在する神社であり、中でも突出した資金力があるのは明治神宮である。
  6. 明治神宮はブライダル事業や球場を所有しており、知名度と資金力は突出している。
  7. 神宮の活動をサポートしている団体として新興宗教、仏教系、神道系、自衛隊OB会、日本遺族会が挙げられる。
  8. 日本会議自民党に限らずに改憲勢力を増やしたい。陰ながら力になってくれるのは民進党内部に多く存在する改憲派
  9. 様々な考え方がある中で「緊急事態条項」一点突破するのが活動方針となっている
  10. 宗教右派団体は戦後民主主義に嫌悪し、天皇中心の国家体制へと回帰させ、政教分離という民主主義社会の大原則を変えたいのではないか?と青木さんは指摘する

 

いやー。これは面白いですよね。

伊勢神宮でサミットを行った意味も分かりますし、メディアに目を向けると爆笑問題が「ぶっちゃけ寺」でPRするたびに日本会議の活動資金が増えていき、タレントの優香が挙式をしても日本会議の活動資金が増えていく。野球の観客が増えてもそうです。

つまり、単に宗教者だけで資金を工面しているわけではなく、継続的な活動をするにあたってのマーケティング力が彼らにはあるということ。(この能力を別のことに使えばいいのに…)

そして、資本主義を最優先としたメディアには監視の力もインテリジェンスもなく、スタジオの中でシンバル猿のように手を叩き、重篤な状況を看過する。

もちろん、全ての神社が加担しているわけではないことは先ほど書きましたが、組織は腐敗しますから力のない末端の人間は簡単に流されるに決まってます。

 

 

おわりに

以上のことを踏まえると、「増殖」「癒着」「無知からの看過」が日本社会の至る所にあって、これは一朝一夕でどうこうできるレベルではないというのが率直な感想です。

それでも、資金源を枯渇させることができれば何とかなるかもと私は思います。

彼らの考え方を理解した上で一人一人が消費行動を変えるということ。

少し話は変わりますが、今年はパナマ文書タックスヘイブンに対する監視の目が世界中で強くなりました。本来、人生をより豊かに変えるはずの宗教がタックスヘイブンの入り口となり格差社会を助長している側面を宗教者は理解しているのでしょうか。根源的な部分で何かが間違っていて、やなせたかし先生のアンパンマンに勝てないと私は思うのです。

 

宗教色の強いドギツイ本かもしれませんが、自分が生きている時代や現在の座標軸を確認するにはいい本だと思うので、政治に興味がない方が読むと耐性がつくと思います。

内閣の組閣で稲田朋美氏に注目が集まっています。同氏に対するインタビューもありますし、「あとがき」のパートでは、ズバリ「日本会議の正体」が書かれているので気になる方は是非読んでみて下さい。

 

それにしても青木さんはダンジョンからとんでもないモノを持ち帰ったものだ…笑

 

 

日本会議の正体 (平凡社新書)

日本会議の正体 (平凡社新書)

 

 

 

 

 

 

 

中学生の頃、家で留守番をしていたらドアのチャイムが鳴って、でてみたら宅配便ではなく、高校生ぐらいの女の子とオッサンだった。未知との遭遇である。

聖書を買いませんか?と言う女子に結構です失礼しますと言ってドアを閉める私。後になって、『もしかしたら、私が聖書を買わなかったことであの女子はオッサンに殴られているのでは⁈』というバイオレンスな想像が浮かんで怖くなったことを今でも覚えている。

今回、この本を読んだことで謎が解けた。あれは親子だと。

 

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洗脳されていることを自覚しながらも、善悪そっちのけでプログラムの遂行を優先させる思考回路にゾッとします。

今夏の参院選で無所属立候補した三宅洋平氏が「選挙のときに友達に投票を依頼するのはその友達を失うリスクがあるのに創価学会員は一人で300件も電話をかける」と話していました。

300件も電話をかけるなんて普通やらないですよね。でも、創価学会員は実際に行い公明党を与党にしている。

この構図を見ると、政治家の保身のために脳みそのデータフォルダを洗脳されているとも考えられる。しかも、信者は気づいていても止められない。

親が宗教家の場合に子供には思想の自由がないのではないか? 人権侵害ではないか?なんて疑問が浮かぶ。

でも、相対する立場のSEALDsの奥田愛基氏もまた父親が宗教家である。彼の場合は家庭を顧みず、家にホームレスを連れてきてしまう父親とは仲が悪く家出している。親が宗教家だからといって、全ての子供が信者であるとは言えない。(当たり前だけどね)

 

信者の発生については、意見することが苦手な個人が思考回路に宗教というアプリケーションをインストールしている場合と、そうした個人を金ヅルとして利用するために宗教をスパイウウェアとして使う権力者がいる場合の二点が考えられる。

ここには集団心理も影響するので、自由にアンインストールできる環境であるのにできなくなる。これが洗脳にあたる。