モブトエキストラ

左利きのメモ魔が綴る名もなき日常

【報道特集】誰も助けにこなかった。

 

熊本大地震から半年が経過したということで、前半は生活の再建に苦労されている被害者の方々の言葉や、それをサポートする方の話が紹介された。

男性が孤立していくというのは東北の被災地と同じで、人間というのは弱った姿を他人に見せたくないから、現実が深刻に感じられる人ほど社会性が弱っていくのだと感じた。

また、この間の火山の噴火で付近の農家さんは作物に灰や噴石を被ってしまい、それなりの損益が出ているという。

当時のことを語った男性は雹が10分間も降っているからおかしいと思って確認したら、それは石だったと言っていた。

まさか噴火するだなんて誰も思っていなかったのだと感じさせる一言だった。

 

問題は後半の特集。

グロテスクな描写があるので苦手な人は読まないで下さい。

 

それは南スーダンの現状と駆けつけ警護の問題についての取材報告だった。

気を抜いて見ていた私は思わず画面に釘付けになった。それは蜂の巣になった現地ホテルの映像で、床には書類などが散乱しており、白いタイルには血痕がくっきりと残っていた。

 ある程度の情報が画面に流れてから、これは重要だと思いまとめることにした。

 

本当の意味で誰も助けにこなかったーー

午後4時頃のこと、国連関係者とNGOスタッフが宿泊するホテルに兵士が現れた。ホテルには3つのゲートがあったが、援助関係者のバンチ氏が聞いたその音と怒鳴り声は兵士が敷地内に押し寄せている音だと気付いた。

バンチ氏がいた部屋には女性スタッフもいたため、存在がばれないようにシャワールームに入ってもらうことにした。

兵士はドアとベランダから部屋へ侵入しようとしており、バンチ氏と男性スタッフは兵士たちとの交渉を試みたーー

 

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シャワールームに隠れたNGOスタッフの女性は声を放送しないことを条件に取材に応じてくれました。彼女はこの凄惨な体験を家族には話していません。それでも、現地の状況を伝える必要性を考えてインタビューに応じてくれたのです。

 

 話を元に戻します。

 

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被害女性「トイレの外には同僚の男性がいて、兵士たちから『殺すぞ!ドアを開けろ』と脅されていました。」

 

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兵士はドアに発砲して部屋に入ってきて、その一発の銃弾がバンチ氏の足を貫きました。(画像は直後のものと2ヶ月が経過した傷跡)

 

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 当時のことについてはアメリカのシンクタンクが報告書を出している。

この報告書によると現地国連幹部の話として、中国とエチオピアの部隊に「駆けつけ警護」の出動要請を行ったという。

 

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しかし、中国・エチオピア部隊は「人員が足りない」などで出動要請には応じなかったという。(この理由については後で触れられる)

 

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バンチ氏「兵士たちはみんなに銃を向け、女性たちに「ここで死にたいか」と怒鳴っていました。そして女性を一人ずつ連れ出しました。」

 

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被害女性「6、7人の兵士が部屋に入ってきて、カラシニコフ銃を私たちの頭に向けました。ある兵士が頭を撫でて「悲しまなくていいよ、大丈夫だから笑って」と言いました」

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バンチ氏「『この外国人女性たちはあなた達の国を助ける為に来たんだーー彼女達を傷つけないでくれ』と兵士に言ったらライフルで肩と首を殴られました」

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被害女性「その兵士(先ほどの大丈夫と言った人間)が1つの部屋に入るよう指示しました。言われた通りに部屋に入ると数人の兵士がいました。私は『お願いです!やめて下さい!お願いです』と懇願しました」

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被害女性「すると思い切り殴られ、床に押し倒されました。そして首を拳で殴られ、私は息ができなくなりました。そしてその部屋で3人の兵士にレイプされました」

 

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別の部屋にいたNGO職員のリボット氏はベッドの下に隠れていましたが、発見されて建物の外に連れ出され、兵士達に責められていました。

リボット氏「兵士たちは国連に対する敵意をむき出しにしていました。ある兵士は『俺たちは国連が嫌いだ。反政府軍に肩入れしている』と近くの国連施設を指差しながら言っていました。」

(机には国連に対する罵詈雑言が書き殴られていました)

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地元NGO職員のジョン・ガトルアクさん。

彼は額に特徴的な筋を持つヌエル族の出身だった。

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リボット氏「彼は建物から連れ出されてきてその場で射殺されました。敵対する部族の出身だという理由で彼は射殺されたのです」

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被害女性「全てが終わると兵士に下の階に下りろと言われました。外に出ると誰もいませんでした」

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「そこには殺されたジョンの遺体がありました。『自分も殺されるんだ』と思いました」

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「そこに別の兵士がやってきました。そして私を部屋の中に押し込んだ」

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「その部屋には友達の外国人女性がいて、彼女もレイプされていたのです」

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「床に押し倒された時、友達と目が合いました。言葉は交わさなくても『殺されないためには抵抗したら駄目』とーーお互い理解し合いました」

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「最後の兵士は部屋を出て行く時、殺虫剤を私の顔に吹きかけました。口笛を吹きながら」

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「私は息ができなくなり、その場で嘔吐しました」

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午後6時半ごろ南スーダン国家保安庁が救出を開始ーー

バンチ氏「救出に来た将校たち自身が略奪する兵士の仲間だったのです」

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「将校たちは『助けに来た』と言いましたが、彼らも物を盗んでいたのです。一人は私の同僚のパソコンを小脇に抱えていました。別の将校は『救出に来る前に略奪に参加していた』と言ったのです」

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国家保安庁の将校らが現場にいる時も複数の女性が性的暴行を受けていた

 

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被害女性「レイプされている時、間違いなく国家保安庁の人はそこにいたのです」

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「誰も助けに来なかった。3人の女性が一晩そこに放置され、地元のセキュリティー会社と連絡が取れたのは朝の8時半でした」

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なぜ駆けつけ警護要請があったのに国連部隊は来なかったのか。

シンクタンクの報告書によると、ホテルまでの約1キロの間に数百人の政府軍兵士と戦車が2台あったので、もし現地に向かえば国連部隊は政府軍から攻撃を受け死者が出ただろう。と記載されている。

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集団的自衛権の行使容認によって、自衛隊は駆けつけ警護の任務を行うことになっている。

政府の見解によると、「PKO5原則が守られている限り相手が政府軍になることはありえない」とされており、その根拠は自衛隊の受け入れに同意しているからとしている。

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来月の交代で現地に向かう隊員たちは駆けつけ警護の訓練を受けており、それに伴い稲田防衛大臣は視察を行った。

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7時間の短い滞在であったが、周辺で激しい銃撃戦があった国連施設で説明を受けた。

「反政府側の兵士もPoC(国連の避難民施設)に逃げ込みーーそれに対しSPLA(政府軍)が反撃したという戦闘が起きた」

 

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記者が「11月に派遣する部隊に駆けつけ警護の任務を付与するかどうか、いつ頃までに決めるのか?」と質問すると、稲田防衛大臣は「今回、見たり聞いたりしたことも踏まえ政府全体で決めていくことになる」と回答して映像は終わった。

 

個人的な感想ですが、南スーダン政府軍には規律がなく武装組織でしかないと感じました。

しかしながら、欧米人は何世紀も前から分断政策を行って自国の経済的植民地を増やして来た過去がありますから、南スーダン政府軍の「国連は反乱軍に肩入れしている」という意見を否定することは難しい。現地の自衛隊員も反乱軍の兵士が国連施設へ逃げ込んだと証言していますから。

長年にわたる民族紛争を第三国が介入することで、目的が地下資源と労働力をめぐる多数決のパワーゲームになっていると感じます。

だからこそNGOの存在が必要なのだと思いますが、政府軍がそれに対して敵対心を抱いている。

自衛隊員はこの恨みの標的になる。

日本政府は現地の情報を冷静に考え、南スーダン政府軍との武力行使の可能性も踏まえて自衛隊員の命をリスクから遠ざける判断をすべきだと思いました。