モブトエキストラ

左利きのメモ魔が綴る名もなき日常

「旅のラゴス/著 筒井康隆」の感想

二度も奴隷にされる主人公

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どうしようかと悩んでやっぱり買ったパターン。

買うのを思いとどまった理由は、何年も前に「ロストオデッセイ」というゲームの小説を読んだことがあって、同じような話だったらどうしようか…と考えてしまったのが理由。

それでも「旅のラゴス」というタイトルから「ピタゴラス」を想像されるし、知的に感じたのでやっぱり買うことに決めた。

帯の「紅白本合戦」のルールについては一切わからないけど、視聴者と会場が白と言ってもゲスト審査員が紅といえば紅になるんでしょう。そんな世の中。

 

「集団転移」

一体どんな話なのだろうかとページをめくる。

まず最初の「集団転移」には牧畜民族のムルダム一族を転移魔法でシュミロッカ村へと送る話が描かれていた。

転移は別名でトリップとも呼ばれていて、行き先を想像する力がないと失敗してしまい、団体で転移するにはとても集中力を必要とした。

荷物を運ぶスカシウマという種類の馬とも意思の疎通が必要で、その一団がもたもたしているのを見たラゴスが指示役に回った。

ラゴスにはシュミロッカ村が分からなかったが、他人と同化する力が秀でているので誰かが想像した風景に向かって力を使えばいいだけだった。

私はハリーポッターと賢者の石に出てくるダイアゴン横丁みたいな感じを脳内再生していた。

 

「解放された男」

物語は「解放された男」に続く。

シュミロッカ村へ無事にたどり着いたラゴスを村人は好意的に迎えてくれて、村娘のデーデに至っては「惚れてまうやろ!」を発症してしまった。

人間は血縁関係のない人物を結婚相手に選ぶ習性があるので、転校生は魔法使い的な展開には納得である。

ただ、そんな村にも悩みのタネがあった。

それは石牢に入れられているヨーマという20代前半の背の高い細い男について。ヨーマは事あるごとに暴力を振るうので皆、手を焼いていた。

ラゴスはどうして彼は暴力を振るうのだろうか?とデーデに尋ねると、ヨーマにも他人の心が見える能力があって、本当は優しくても自分を悪く思う人間が気になってしまうと答えた。(ラゴスはデーデにも他人の心が見えることを悟る)

ほとんどの村人がヨーマを悪く思っているが、私の家で暴れたことが一度もないと会話を続けた。

その後、ヨーマとヨーマの父親が喧嘩を始めて角材を持って殴り合う騒動へと発展。棍棒で殴られそうになっているヨーマを見て「殺されてしまうわ」と呟くデーデ。周囲の人々も協力してどうにかヨーマを簀巻きにした。

この時点で読者はまさかデーデがデデデ大王(ええ、冗談ですよ)になるなんて知る由もなかったーー

 

「顔」

ムルダム一団からスカシウマと、デーデから頭巾をもらったラゴスは砂漠の街道を歩いていた。

そこで旅の絵描きであるザムラと出会う。ザムラは近くの宿屋を知っているというのでラゴスとっとこハム太郎

町の人々はザムラのことを知っていて、彼は腕利きの絵描きだった。ラゴスも似顔絵を描いてもらい、キャンバスには自分が理想としている顔が描かれていた。

彼には客と自分とが平等な立場でなければ絵は描かないという哲学があり、政治家に大金を積まれたからといって描こうとはしなかった。

また、絵描きとしての技術よりも被写体となる人物が頭に描く理想の自分を感じ取っているという。さらには自分の顔を思い描いた顔に変化させることも可能だといって、実際にデーデの顔に変化させてみせた。

あご髭マッチョの風貌をしたデーデに驚きつつも、自分の大切なものを探られたことにラゴスは腹を立てて、ザムラは謝った。ザムラにしてみれば自分の才能が芸術ではないと証明したかったのだった。

そんな話をしているうちに夜になり、眠たいよパトラッシュモードになったラゴスは物騒な通りをザムラに送ってもらった。

翌朝、警備隊がラゴスのもとを訪ねた。

ザムラが殺されたという。現場へと急ぐとザムラはズダロフの顔をして死んでいた。

ズダロフは金持ちの息子だったが、素行が悪くて転落人生を歩んでいた人物。

どうしてザムラが殺されたのかを警備隊は「きっとズダロフに、誰かの顔をして見せたのでしょう。ズダロフにはそれがひどい衝撃だった。反射的にザムラを斬った。斬ってすぐ逃げたんでしょうね。ザムラは死を悟って自らの顔をズダロフに似せ、われわれに犯人を教えようとしたんです」と推理していた。

ザムラがズダロフに見せたのは誰の顔だったのか、なぜザムラが自分と旅をしたかったのか、モヤモヤを抱えたままラゴスは町を出発した。

 

これは私なりの推理だけども、ザムラはラゴスが美化していたデーデを見たので会いたくなって一緒に行こうとしていたが、ズダロフに父親の顔を見せて反感を買って殺されたと思う。

証拠はございやせん。

 

壁抜け芸人

この話はこの本で唯一ギャグ要素がある。

ラゴスはウンバロという全裸で壁を透過する芸人に出会う。

司会は人間の原子の間を壁の原子が通り抜けているのだと説明した。ルックスはそこそこだったので、村娘たちはキャーキャーいいながら全裸で壁に張り付いている彼の尻を凝視した。

ただし、壁を通り抜けている最中に集中が途切れると壁の中に閉じ込められてしまうので命がけであったし、それ故にキャーキャー言ってる女の声もウンバロにしてみれば耳障りだった。

ラゴスは金を払って上半身が壁にめり込んでいくのを見学した。どうやら言っていることは本当らしい。

一部始終を見終わると、ちょうど次の町まで行くというので同行することに。

集中力を高めるのは欲望だとウンバロは話した。壁の向こうに女がいると想像するんだと言っていた。

 町へ到着すると地元の名家であるドリド氏が泊めてくれることになりウンバロとは別れる。

 ドリド氏にウンバロの話をすると、あいつは以前娘の部屋に忍び込もうとしたことがあると言い、娘は不安がっていた。

ラゴスは泊めてくれるお礼に、娘の代わりに自分が娘の部屋に寝れば問題ないだろうと提案し夜を迎える。

朝になると娘の部屋の壁には全裸の男が吸収されていた。どうやら寝てる間にラゴスは服を脱いでいたらしく、壁を通り抜けてきたウンバロは黒光りの何がしをガン見してしまい壁に吸収されたらしい。変態の標本である。

ドリド氏だけが嘆き続けた。「なんてことだ。あのような猥褻なものが壁から突き出ておる部屋に、娘を住まわせるわけにはいかぬ。あの部屋は開かずの間にしなければなるまい。開かずの間がある宿屋など、客は厭がるだろうなぁ。それに、開かずの間がひとつ出来れば、もともと部屋数の少ない宿屋だ、大いに収入が減少する」

全くである笑

 

「たまご道」

この話の町は面白い。

石畳の4枚に1枚は取り外されていて、そこにはムラサキコウという大型の走禽類(チョコボ的な鳥と思われる)の卵が置いてある。その卵はとても固いのでちょっとやそっとじゃ割れない。夜になると大型の蛇がその卵を狙って徘徊するのだという。

話の内容としてはその村に住むタリアという女性の息子が盗賊で、夜に蛇に食べられてしまうという少し可哀想な話だった。内容よりもこの村の世界観が面白かった。

足ツボマッサージの歩道みたいな光景で。

 

銀鉱

鉱山の労働力を確保するために定期的に奴隷狩りをする盗賊たち。

ラゴスが滞在している町はその一団に囲まれてしまう。奴隷として鉱山で働きながら、ラゴスは知恵を活かして地位を確立していく。信頼を得て身体が自由になったのを見計らって次の旅に出る。

こうやって簡単に書いてしまうとあっけないが、物語の中では蟹工船のような日々を七年も暮らしていた。

こんな主人公はあまりいないはず。

 

着地点

奴隷から解放されたラゴスは宇宙船があるという村へと向かう。

その途中、船で言葉を話さない赤ん坊を抱えたボニータと行商人のサルコに出会った。

行商人はその女性に好意を抱いているようだが、女性にしてみれば言葉を話さない赤ん坊の父親になんて…と考えていた。

村に着くと案内役の爺さんが宇宙船について話してくれた。いざ、船内へ入ってみると見るも無残なまでに部品が取り去られていた。

「ひどいもんじゃろ。ここ数年のうちに、使い途もわからずして盗んで行きおったのじゃ。ただもう珍しい金属で作られているというただそれだけのことで、なにがしかの金になるからというただそれだけのことで、競い合って奪って行きおったのじゃ。これではもはや、どのような原理で宇宙を飛んだのかなど、どのような偉い学者にだってわかるわけがない。六層の釜とはどのようなものであったかもわからんのじゃ。立派なご先祖を持ちながら、その子孫は堕落してぬすっとになった」ゴゴロ爺さんの慨歎はさらにながく続いたが、おれの聞くべき話はもう、なかった。

ラゴスは明日にでも旅立つと告げる。

赤ん坊のタッシオがじーっと見つめていたので、何か言いたいことがあるなら言ってごらんと話しかけると、タッシオはゴゴロ爺さんそっくりの声で爺さんが話していた言葉を暗唱しだした。

これも才能の一つでラゴスは「記録者として生まれついたのか」と驚きを隠せなかった。

この話はこれで終わるがタッシオは後で登場する。

 

「王国への道」

先祖が残した書物を読むためにラゴスはポロの盆地を訪れた。

このパートのストーリーはとても男性優位のキャッハウフフであると同時に、この世界が現代から二千年後の世界であることが判明し、全体のストーリーの深みを増す重要な場面があったりする。

端的に言うと、案内役のカカラニ(空飛べる)と世話役のニキタ(読心術使える)という2人の17歳の少女が37歳のラゴスに恋をして三角関係になるも、村長が「王様になって2人を妻に迎えればいいじゃないか」とラゴスに提案して、その通りにするというぶっ飛んだ話。

しかも、村長の爆弾発言はニキタの父親が同席してる場で飛び出している笑

村長は祖先の書物を解読しているラゴスから知識を引き出して、コーヒー豆の生産方法を軸に村を発展させるシムシティが楽しくて仕方がないので、発展と引き換えに他人の娘の1人や2人は安い買い物と思っているのだろう。あとは、ラゴスのまんざらではない感じがスケベですよねぇ。あと途中で最初の村でもらったスカシウマ死にます。←切ねぇ

ここで何年も過ごしているうちに記録者として覚醒したタッシオがラゴスの元を訪れる。タッシオはラゴスの右腕として、多くの書物を解読するのに役立った。

その知識のうち、産業革命が起きて技術が悪用されないように電気と核に関するものに関しての読解はあえて行わなかった。

子作りもしたし、ほとんど書物を読んでしまったスケベなラゴスはニキタとカカラニが争わないように家訓を残して王国を去ることにした。

 

「赤い蝶」 

 シュミロッカ村へと帰る話。

自分は子作りしていたのに、今でもデーデは独身でいてくれないかなぁなんて期待してしまうのが相変わらずスケベなラゴス

村に着くと赤い蝶が飛んでいた。

その蝶の鱗粉には幻覚作用があるらしく、長く見ていると毒だと注意される。

ラゴスは私のことを覚えているか⁈とオレオレ詐欺みたいな会話をはじめ、顔馴染みの村人たちが宴会を開いてくれた。しかし、そこにデーデの姿はなくデーデについて話そうとする者もない。

恐る恐る聞いてみると、デーデはヨーマと結婚するというバッドエンドを迎えていた。

衝撃すぎてノドから出てくる悲鳴を止められないラゴス

ヨーマの暴力の矛先がとうとうデーデに向かい、村人たちも耐えきれなくなりヨーマを殺そうとしたが、デーデが殺さないでくれと懇願したのでヨーマを牢屋に閉じ込めたが、朝になるとヨーマとデーデの姿はなかったという。

その後、ヨーマは盗賊になったという噂を耳にする者もいたが足取りを知る者はいなかった。

悲しみに暮れるラゴスは明け方に村を旅立つことにした。

朝焼けの中にデーデが居るのが見えた。

そちらへ向かおうとするスケベなラゴスの腕を掴むゾムさんグッジョブ。

赤い蝶は人間を殺して死体に卵を産み付けるという。赤い蝶が魅せる幻惑だとしてもラゴスはデーデに会いたかったのだった。

 

「顎(あぎと)」

旅の商人チタンと行動を共にしていたラゴスはうっかり「顎の原」と呼ばれる砂と小石しかない荒野へと足を踏み入れてしまった。

「半分はあんたのせいだ」と吐き続け、役に立たないチタン。

後方で盗賊の乗るスカシウマの蹄の音が聞こえ、てへぺろじゃ済まない状態に。

荷物を捨てようとしないチタンはスカシウマの腹を蹴り続け、苦しさでウマは転倒した。

チタンは自分のスカシウマを乗り捨ててラゴスのウマへと飛び乗った。

少しして、後方の盗賊が放った銃弾がチタンに当たり彼は絶命。

九死に一生を得たラゴス

しかし、奇跡はさらに続く。

ラゴスの乗るスカシウマは以前カカラニが乗っていた馬で、自分は空を飛べると思っていた。崖へと突進する馬の思い描くイメージに同化すると空を飛ぶことができ、危機的状況からの離脱に成功した。

馬に乗りながら前方のターゲットを狙撃する盗賊の腕前がヤバイのと、織物と命も失ったチタンが可哀想すぎる話だった。

 

奴隷商人

難を逃れて北へと向かう旅を続けるラゴス

夜に宿屋で眠っているとスカシウマの悲鳴が聞こえた。駆けつけると空飛ぶ馬のノドは切り裂かれていた。そこで待ち伏せていた奴隷商人のムトとウラムジの二人組に拉致された。

そう、これが二度目の奴隷転落である。

奇跡的に難を逃れてきたのを考えると、これでプラマイゼロなんじゃないかと思える。

そのうえ、金目のものを持ってないのかと荷物をさぐられて15年にも渡る書物の解読の成果を書き留めた200枚のレポートが見つかってしまう。

わたしはウラムジを刺激せぬよう、おだやかに頼んだ。「わたしにとっては大切なものなんだ。頼むよ。返してくれ」

けんめいさがどうしようもなく顔や眼の色にあらわれたらしい。ウラムジは少し驚いたような表情をした。「しかし、奴隷にこんなものは必要ないだろう」そう言ってから、突然彼は眼に底意地の悪さを見せた。「こいつを持っている限り、お前は逃げようとするさ」

あっという間もなかった。ウラムジは彼のすぐ背後にあった岩頭に登って立ち、羊皮紙を全部投げ捨てた。わたしは悲鳴をあげて立ちあがり、岩頭に向かって走った。

ムトがうろたえた声で叫んだ。「動くと撃つぞ」

しかしわたしはウラムジの傍に登り、さらに、山の下へと風に巻かれて拡がり散っていく羊皮紙を追って岩頭からとびおりようとした。

「おっとっとっとっとっと」ウラムジがうしろから抱きとめた。「しぬつもりか。おい」

まるで二百枚のそれぞれがひとつの人格を持っているか、または二百人の人間の亡霊でもあるかのように、恨みをこめ、名残惜しげに白く白く舞い、はるか下方の山麓へと拡散して行く羊皮紙を、わたしはながい間茫然として見おろしていた。もう拾い集めることはできなかった。あるものは風に乗ってさらに高く舞いあがり、はるか町のあたりまで飛んで行きそうな勢いであったからだ。

このレポートの価値も分からない無知な二人組に15年の成果を捨て去られたラゴス

例えばあなたの大切なデータを消されたらどうしますか?

私だったら殺意しか湧きませんよ。

でも、ラゴスは15年にも渡る読書生活で学んだことは人間が生み出した知の遺産は一人の人間が学び切れるものではないのだから二百枚のレポートが無くても同じだと考えるんですよ。

そう、ただのスケベじゃなかった!

その後ひたすら歩かされるけど、その行き先がラゴスの故郷という「そんなバカな」という展開に。

ウラムジとムトは北へ行くほど奴隷が少ないので高く売れると考えたのだが、それはオノロの町の市長であるラゴスの従兄デノモスが奴隷制を禁止する政策を摂っている影響だった。

ラゴスは笑いをこらえながら二人をいい気にさせ、まんまとデノモスの家までやってきた。

デノモスは奴隷を売りつける二人組を軽蔑したし、しかもそれがラゴスだというから激怒した。

「こいつらを銃殺にしろ」激怒で、デノモスの形相はすっかり変わってしまっていた。「いや、絞首刑だ。吊るすのだ」

「おれは運が悪い」ウラムジがこちらに顔を向けて絶叫した。「くそ。いったい、なんて一生だ。おれの一生は、いったいなんて一生だったんだ」

壁ぎわに小さくなり、抱き合ったままで泣き続けるムトとウラムジは、まるで風のため、その部分に吹き寄せられて盛りあがっている砂埃のように見えた。

ウラムジお前はバイキング小峠か!笑

いや、小峠がウラムジなのか。

どっちでもいいけどもラゴスの強運スキルがハンパでないのでどんなエンディングを迎えるのか気になって、一気に読んでしまう。

オノロという名前はオスロをもじったものだろうか?

しらんけども。

 

「氷の女王」

 商業都市オノロからさらに北へ6キロ行くと、ラゴスが生まれ育ったラリストラル家のあるキテロ市があった。

ラゴスの父は80歳の学長。母親は心臓を悪くしていたがラゴスの帰郷を泣いて喜んだ。兄ゴルノスと兄嫁のゼーラも迎えてくれた。

父はラゴスが膨大な知識を身につけていたのを知って、子供の頃に出入りを禁止していた自らの書斎を譲った。

それから毎日のように旧友たちも押しかけて、旅の日々や学問に関する知識を聞かせてくれと質問責めにあった。父親とも話をしたし、身の回りのことはゼーラがしてくれた。

それをゴルノスは良く思わなかった。

というのも、感覚的なタイプの学者であった父とは違って、理論を検証することに興味を持った学者だったので後継者としての実績がなかった。そこへラゴスが来たので立場を危ぶむ存在でしかなかったのだ。

そのうえ夫婦関係は冷え切っており、ゼーラはラゴスに対して「惚れてまうやろ!」を発症するという熟年エロ展開へと発展する。

ラゴスはオノロの大学で教鞭をとったりして惜しみなく知識を分け与えた。

中には半信半疑の者もいたが、農業に関する知識は成果として目に見える形になっていったので、比例してラゴスの信頼は増していった。

ラゴスは農業と同じく医学を教えたいと思っていたが、初老になっていたので記憶力が衰えていた。

そこへタッシオが再び現れた。

ラゴスのいない王国がつまらないから連れ戻しに来たという。

かつてラゴスの右腕として書物を記録していたタッシオの記憶力は健在で、若き日のラゴスの声が再生された。

ラゴスはそれを聞きながら本を作った。

そしてこの功績を兄へ譲ろうと考えていた。

また、水力発電を発明した生徒が現れたのも好都合で、電気に関心を寄せていたタッシオに教鞭をとらせることにした。

悪用されることのないようにと念を押した。

ラゴスは父の書斎にあった、ある画家の伝記の中にある一枚の絵に心を奪われる。なんとその絵に描かれていたのはデーデそっくりの女性だった。

氷の女王という伝説上の人物であってMay.Jではないというボケをかましてみる。

画家は数年前に死亡していると書かれているが、これがズダロフなのかは分からない。

ラゴスは再び旅立つことにした。

 

最果ての都市エポチスは林業で栄えていた。

さらにその先には山小屋があって、そこに住むドネルという人物は問題を起こした変人らしい。

その山小屋へ向かうとドネルは久しぶりの来客をもてなしてくれた。

ラゴスもドネルもお互いにどこかで会った気がしてならなくて、昔話をすることで接点を見出そうとした。同じ場所へ行っている可能性は高かったが、年をとっているのでいつ頃の話なのか分からなかった。

そのうちドネルは何十年ぶりかの涙を流し、居もしない氷の女王のために命を落とすべきではないしラゴスさんさえよければここで一緒に暮らしませんか?と提案した。

それでもラゴスの決心は固かった。

ドネルは激怒した。

「勝手に死にに行くがいい。へぼ絵描きの妄想がでっちあげた氷の女王なんてものにだまされて、生きていける筈のない雪と氷の中で野垂れ死にすりゃいいんだ。いくら淋しいからといって、いもしねえ女に夢中になって死にに行くのは馬鹿だ。もう、とめねえよ。勝手にしろ」

〈中略〉

森に入ろうとする時、背後でドネルの声がした。彼は小屋の外へ出てわたしを見送り、泣きながら叫んでいた。

「お行きなせえ。ラゴスさん。あんたは立派な人だ。わしにはわかっているよ。とてもわしなんかと一緒に暮らせる人じゃねぇ」

わたしは片手を大きくかざしてから、ふたたび歩き出した。わたしが暗い森の中に入ってしまうまで、ドネルの叫び声は吹雪の中に響き続けていた。

「あんたはきっと氷の女王に逢えるだろうよ。氷の女王は美しいひとに違えねえ。そしてそこは、きっと素晴らしいところだよ。ああ。そうとも。そうに違えねえよ。そしてわしは、それを祈っているよ。ラゴスさん」

これで物語は終わる。

氷の女王を描いたのがズダロフなのか、ドネルがヨーマなのかは分からない。

ただラゴスは命を失ってもデーデに会いたかったのだし、私には赤い蝶に呑まれて死にたかったのではないかと感じた。

知識を伝えるという役目を果たした老人にしてみれば、死に場所を探すのは自然な流れ。

 

おわりに

筒井康隆氏の小説を初めて読んだ。

ラゴスの旅ではなく、旅のラゴスというタイトルからは「旅に魅入られた」という意味を感じた。

読んでる間にこれアニメ化したら面白いんじゃないか?と何回か考えたけど、冒険活劇にしては子供向けではないよなぁと自信がない。

でも、壁のなかで仮死状態になる変態の話はアニメに向いてるし、卵がずらっと並んだ街並みも視覚で捉えられたら面白いと思う。それに不思議な力を持った人々が織りなす未来の話だから、現代がどのように斜陽を迎えてラゴスのいる世界へと繋がるのか知的好奇心をくすぐられる。

スタジオボンズが大人向けのアニメとして制作したらどうだろうなんて考えていたらーー

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なんと!「パプリカ 」が筒井康隆氏の作品だったことが判明。

私はてっきり押井守監督が原作も考えていたのだとばかり思っていた。いやぁ、ここで繋がっていたとは。

 

つまりは私なんかが面白いと思うことなんて誰かの二番煎じなんだろう。

うーん。敗北感しかない。

 

旅のラゴス (新潮文庫)

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