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「陸海空 部族アース完結編(どこのテレビ局より嘘なく伝える)」の感想④

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10月14日 息を止める都市生活。 - モブトエキストラ

テレビを見ながらツイートしようとしたけど、打ち込める文字数が多くなったところで足りないし、命がけでアマゾンに行った取材チームの情報量を落としたくないのでブログに書くことにしました。 

未公開の部分はリスザルを食するシーンとナスDの考察シーン、あとは「お別れ」と「これから」という構成。

アリクイの神秘

いくつかのシーンは前回までに見た部分が多々あったのだけど、一つ触れておきたいのがアリクイ。

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日本では「残念な生き物」としてアリクイはうまく歩けないとか威嚇が怖くないと言わていますが、ジピポ部族の中ではジャガーよりも素早く危険であると認知されていました。(前回までの放送で言ってたね)

だからベテランであっても銃を構える際はまず自分の息を殺してから、引き金に指をかけ、弾が命中してもアリクイが生き絶えるのを待つことを選択する。

オオアリクイ」と「コアリクイ」とで挙動が異なるのかもしれませんが、命がけでサバイバルする人々にとって嘘は存在しない。間違った接触をすれば絶命するのだから。なのでオオアリクイについてはシピボ部族の情報のほうがリアルだと私は思います。

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また面白いのが、アリに噛まれた際はアリクイの尻尾を燻した煙を使うことで鎮静効果を得られるということ。これについては検証VTRが無いので詳細は分かりません。

(今年、日本ではヒアリが問題になったのに流行語大賞の候補の中に「ひふみん」はあっても「ヒアリ」が入ってないのはなぜなんだい?)

「アリを食べるからアリクイ」という当たり前の話をしなければならないのは、私の頭の中で「アリに対する血清があるのではないか?」という疑問が湧いたからです。

D社の黄色いクマ(お察し下さい)はハチミツ中毒で有名だけど、クマの場合は「痛いけど食べたい」という説を聞いたことがあります。クマは雑食だから仮にハチミツが食べられなくとも問題ないですが、アリクイの場合は骨格がアリを食べるための姿になっています。(上顎と下顎をスライドさせて下を出す)

だから体内でもアリ専用の順応をしてるのではないかと考えてしまうのです。(シャア専用ザクみたいなザク専用シャア的な話で)

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呪術医のレオナルドの話では目当ての脂は「肩と股の間にだけある」と言っていました。

股の間と尻尾は位置関係として近いし、哺乳類は肛門に分泌腺を持っているものが多い。この脂からは筋肉痛に対する鎮痛効果が得られるそうですが、アリに噛まれてもアリクイが平気な理由と関係があるように思えてなりません。

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人間にとって有益な部分を、食材と薬の材料と装飾に分けて持ち帰り、その他の部分は三日後に野生動物が餌にするという過程をナスDはリアルなドラクエと表現した。

リスザルを食レポ

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リスザルを食べるシーンについては、「日本では絶対にできないことだから」とナスDは余すことなく伝えようとしました。(番組側も何分後に衝撃シーンがあるとテロップを出す配慮をしてました)

  1. 歯ごたえは完全に鶏
  2. 味は脂がのっていない牛肉
  3. 脳みそは白子

食レポをしている死角からリスザルの手を盗んだ実写版デッドペッカーとの生存競争は実にリアルでした。

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アフロに笑ってしまいました。

これも七面鳥の仲間なんですかね?

だとしてもサルを食べますか?

いわゆるハゲタカは屍肉を漁る時に感染しないよう進化の過程で毛が無くなったと言われていますが、この鳥はアフロが残ってるんですよね笑

ニワトリのトサカみたいなものなのかなぁ…分かりません。

友寄Dの考察 

これについては書き起こしておきたいと思います。 

〈村の一角にて〉

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ナスD) 今いるテレビマンの中で一番そのレンズの先を意識してた。ただ、上手くはなかった。重みは知ってる。

自分なりには一生懸命やりましたね。
毎日、毎日が刺激的に過ぎていったんで、楽しかったですね。幸せだなぁと思いました。
張り詰めてたな、ちょっと。

〈ベースキャプにて〉

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スタッフ)アワフン部族・シピボ部族・ボラ族 好きなランキングと言ったら変ですけど…

ナスD)余裕で言える。第3位ボラ族、余裕で決定です! どん底ですあの人達は!
いい人も居るんだと思います。スゴイ、だけど国民性みたいなこと。
アワフン部族は好きだけど、結構、綺麗事の好きかなと。実際はやばかった。
シピボ部族は明らかに自分がイメージしていたシピボ部族と大分違った。優しさあるけど、やっぱ強さがある。ちゃんと。リアルにどう今の時代と接して、どう自分達の文化を残して、人間としてどう生きていくかって、何か戦ってる人達だなぁって感覚があります。
だから好きです。だからシピボ部族。
寝そうやな二人…(スタッフを見つめて)
アホかほんまに。最終日やぞ。
スタッフ)ハハハハハ…
ナスD)立っとけずっと!
スタッフ)友寄ディレクターにとって部族とは?
ナスD)日本に居て部族って、いま言うと「原始の人」「野蛮な人」って考え方するけど、来てみると少なくとも自分よりも優れている所は山ほどあるし、尊敬できる所もいっぱいあるし、幅広さで言うと日本のほうが上なんですよ。

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だけど、もし地球がある日突然、原始の生活をしなくならなければいけなくなった時に、日本人結構しんどいと思います。アメリカ人も。ここは何が起こっても変わらない。
逆に「その時、この人達は僕達に動物分けてくれるのかな?」と思います。答えは多分「くれない」ですけど、こっちがあげてないから。
スタッフ)うん
ナスD)だからリスク低い所ですごい大切なことを未だにやってる人達。人間の根本の「生きる」ってことをしっかり考えさせられた。

〈帰国後の車中にて〉

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✳︎気圧のせいか黄色い鼻水と鼻血を噴き出したトモヨリノハナ

ナスD)どの顔を下げて日本に帰ってきてるんだって話ですよ。地球一周するとか言って行っといて全然してないもん。
結構ちゃんと撮ろうとすると、何か小出しに撮ってる感じがスゴイしますね。ちょっと…提案した方がいいかもしれないですよね。
カンドシ部族とアチュアル部族には、もう知り合いできたんで。もう連絡先も聞いたんで。

〈解散宣言後のワンシーン〉

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スタッフ)もしアマゾンにまた来る機会があるとしてやってみたい事ありますか?
ナスD)カンドシ! それ本当の人だから。カンドシ部族って。
強い、拒絶している、で、僕らも拒絶されるかもしれない。僕は絶対あそこはスゴイと思う。別格な気がする。
多分、カンドシって文化とか無くなってるんですよ。大分。なぜかと言ったら記録していないから。
ボラみたいに商業化することによって守られていないから、昔の文化は何も残っていないし、今2017年のカンドシ部族の形があると。
三日間でいいからカンドシ部族 行って見てみたい。
拒絶した人。全部拒絶して、最終的に今、まだ孤立してある状態のカンドシに会いたい!

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カンドシがどんな生活をしていて、どういう部族か想像できるようになっちゃってるから。ただ、もっと内面のどんな人達なのかとか、どういう文化なのかとかは…
見て、日本に、しっかり、丁寧に、正確に伝えたい。嘘なく!
カンドシの所に行ったら、今を正確にどこのテレビ局よりも一切やらせ抜きに伝える。
そこ行かないと次が無い。
行きたい。行く!

 レンズの向こうを意識し続けたナスDは、地球一周と言いながらそれができていないことと、撮ってレポートしてを繰り返す取材過程が小出しにしているようになっているのではないか?と気にしていました。

後者については、もちろん監督と主演を務める心境も当然あると思うんですが、私の解釈では「そこで暮らす人々の日常は連続しているのに、テレビ番組として細切れにしてしまっているのではないか?」という、尊敬する人々に対する無礼が脳裏をよぎったのではないかと感じます。
商業部族としてボラ族(ナスDの20万円は犠牲になったのだ)は生き残ったけれど、ジピポ部族は政府からの支援を必要としていることをアピールする代わりに取材を受けてくれたわけで、文化との接触を必要としながらも「変わりたくない」というアイデンティティを持っていた。

つまり、同じような境遇にあっても、部族ごとに性格は異なり、歩む選択肢が違うということ。だからナスDはボラ族と真逆に位置するカンドシ部族も取材すべきだと考えたわけです。

説得力があるのは「記録に残らない部族を取材すべきだ」って発想が文化人類学の領域だからでしょうね。だから廃墟に行って幽霊がどうのこうのと騒ぐのとわけが違う。

「内面を知りたい」という言葉の裏には『もし助けを必要としていたらどうするの?』『よそ者の僕らだからこそ行けるんじゃないの?』という、部族の現状を知ったからこそ考えることのできる切迫感を感じました。

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取材チームは解散になりましたが、熱い抱擁もなく別れたのは「また会える」と皆んなが思ったからでしょうし、「友だちが寄ってくる」という名前負けしないスタイルに視聴者を魅了したのと同じ原理だと思います。

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ただ、四年間も禁煙していたホルへさんがタバコを吸い始めるという…

かなりのストレスがあったんだろうなぁ。

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あとはナスDの健康診断の結果が晒されて、驚愕のオールAというハッピーエンドを迎えました。

おわりに

部族アースは本当に面白かったです。

「いかに着色料をなくすか」という意思を感じましたし、だからこそ結果的にリスザルを丸焼きにするシーンも、日本人がマグロの目をえぐるのと同じようにリスザルの目を食べるということをきちんと映した。

グロテスクとは何かといえば「連鎖しない命」だろうと私は思います。動物園の動物がグロテスクではないのは、動物が好きな人との触れ合いがあって、野生動物を保護して再び野生に返すという取り組みが行われているからだと思うんです。

その一方で、悪質なブリーダーによって近親交配を繰り返されてボロボロになった犬たちが山中に捨てられたり、死体を冷凍庫で固めてから棒で叩いて生ゴミとして捨てるとかグロテスクすぎるでしょう?

経済合理性の中で人間性を失って機械的な思考回路を持った瞬間からグロテスクは始まっていると思います。

部族アースは自分に足りないものを教えてくれる番組だし、芸人にとってはどんなに面白いことをしてもナスDに食べてしまうという絶望の番組だと思います。(ある意味、全てがナスDがU字工事を捕食するシーンっていう笑)