モブトエキストラ

左利きのメモ魔が綴る名もなき日常

「ハリネズミの願い/著 トーン・テレヘン 訳 長山さき」の感想

あなたはだぁれ

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以前に本屋に行った時からこの本のことは気になっていました。表紙を見てお分り頂けると思いますが、ハリネズミがこっちを見てくるんですよ。
私はこの絵がなんだか気に入ってしまったんです。でも、ページをめくると絵本みたいな感じだし、サイズも大きいから本棚の収まりが悪い。だからその時は買うのをやめたんです。

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つい先日、また本屋に行くとハリネズミが蛍光ピンクの帯をまとって本屋大賞を取ったよ!』とこっちを見てるわけです。
「このハリネズミはできるハリネズミなんだなぁ」と思ってしまい、レジに並び私はこう言ったのです。

「カバーはお付けしますか?」
「カバーはいりません(ハリネズミが見えなくなるからね)」とーー。

 

SOSHIKI DAISUKE WEBSITE
表紙に記載はありませんがイラストを描かれたのは祖敷 大輔さんという方だそうです。ナイス!ハリネズミ

 

さて、本題に入りますが、この本は人付き合いの苦手なハリネズミが書いた日記&回想記です。
59編もあるので感想の書き方が難しい。とりあえず本文を私なりの解釈でまとめつつ、カッコの中に感想を書いていく構成にしようと思います。会話の間の取り方や絵本の良さがごっそり抜け落ちますが、大事だと思ったところは引用します。
では、はじまり、はじまりーー

 ハリネズミの願い

1.交流のないハリネズミは他人を自分の家に招待することを考えて手紙を書きました。
『でも、誰も来なくてもだいじょうぶです。』と予防線を張った一文を書いた時に、相手に気を使わせる気がして手紙を戸棚にしまいました。

 

2.ハリネズミの頭の中を「いま」「まだ」が頭の中をグルグル回り、ハリネズミは心境の変化を言語化することにしました。「いまはまだ一度も」で納得しました。

 

3.今まで自分は窓の外の動物たちを無視してきたのだから、手紙を送ったところでどうせ誰も来ないと考えました。

Kyojin no Hoshi - lonely Christmas party - YouTube

(この空想は星飛雄馬クリスマスパーティーさながらです)

 

4.今度は全く逆の想像で、誰もが自分を待っている風景を思い浮かべました。

 

5.ハリネズミはみんな針に恐がっているのだと考えました。

そこで手紙にこう付け加えました。『ぼくのハリなんて、どうってことないものです』と。その一方で内心「ぼくのハリはぼく以上にすごい」と考えていました。
(これは長所と短所が同居していることを表してますね)

 

6.もし決まりができて、みんなも自分と同じように互いの家を訪問しなくなったらどうなるだろうと考えました。

そうすれば誰かを部屋に呼ばなくてよくなるからです。でも、誰かのため息と悲しみを感じて、どうしたらいいのか分からなくなりました。
(自分にとっては幸福なことも、他人にとっては不幸かもしれないというお話ですね)

 

7.ハリネズミは頭の中でカミキリムシに手紙を書く想像をしました。

カミキリムシは返信にハリネズミの家には来ないことと、今の自分のまま、自分を訪ねてくる誰かを想像してみてはどうかと提案を書きました。ハリネズミはカミキリムシに何も望まず、一緒にお茶を飲み、何も言わずに頷き合って、カミキリムシが帰っていくことを望んでいたのでした。
無言でコミュニケーションをするという矛盾に悩んでいますね)

 

8.カミキリムシの提案に従って、ハリネズミは動物たちのことを考えていきます。カタツムリとカメを招待したらどうなるのか。
面倒くさがり屋のカタツムリは「都合が悪い」と断ろうとしましたが、カメは「行こう」と言いました。カタツムリは無理強いするなよと怒りました。
(自分のせいで彼等の間でケンカが起きてしまったらどうしよう…というハリネズミの被害妄想。ぼのぼのっぽく感じました)

 

9.ヒキガエルが来た時のことを考えました。
ヒキガエルは「俺は怒りたいから怒らせてくれ!」とハリネズミに望みます。「できないよ」と拒みましたが、仕方なく「キミは忌まわしいよ」と囁くと満足気に爆発して消えました。
ハリネズミは相手からやりたくもないことを強要されることを考えた)

 

10.ハリネズミはお客さんを招くために家の改築を考えました。

でもそれは、欲求を満たすために家を自慢するという行為に思えて、やっぱり改築はやめました。ありのままを受け入れようと。
ドラえもんスネ夫だったら「ボクのパパの社長にオモチャ会社の社長がいてね〜」と言っているでしょう。しかし、ハリネズミは主語が『自分に会いにくること』ではなく『家を見にくること』に変わるのは間違っていると気づきました。)

 

11.サイのことを考えました。

サイは心優しい性格なのですが力加減ができません。しかし、ハリネズミはハリのある自分ならば彼と踊ることができると考えました。
(これは他人の短所を自分の長所なら補うことができるという空想ですね)

 

12.クマのことを考えました。

クマは陰湿な食いしん坊で、ハリネズミの部屋の中を舐めるように見回して、食べ物がないと分かると出て行きました。
(読んでいるうちに「ちびまる子ちゃん」の「小杉」が頭に浮かびました。お腹が減って怒りやすいなら分かりますけど、食い物で怒る人って怒る要素が食欲なのか所有欲なのか分かりにくいですね)

 

13.ハリネズミはたくさんのどうぶつを招待した時、誰のためにどんなケーキを焼くのが正解なのか頭を悩ませました。さんざん考えた結果、自分が美味しいと思うケーキを焼こうと考えました。
集団個人の対比ですね。正解が不明確な場合は自分の考えとセンスで意思決定をしたほうがいいというのは同意します)

 

14.ハリネズミは孤独は自分に何を求めているのか考えました。

「これはなに?」お客はたずねるだろう。
「〈孤独〉だよ」ハリネズミはこたえるはずだ。
「ここに住んでるの?」
「いや、住んでいるっていうか、ここにいるんだよ。やって来たり出ていったりするんだ」
「そうか」

孤独は誰かといる時には気づかず、いなくなった他人のスペースを埋めるために出る自分の中の寂しいという感情という解釈です。ここの話はぜひ読んで欲しいです)

 

15.ハリネズミは鏡の中の自分に何がしたいのか問いかけ、手のハリを一本抜きました。
(目的がない自分からハリという長所を抜いて自分を見定めようとしていますね。これは単なる自傷行為ではありません)

 

16.もしもこの家にゾウが来ても、おもてなしできないと考えました。
(現実的に考えて無理なことはやめようという考えですね。ラッセルの幸福論と通じる考えであり、棋士羽生善治さんやプロゲーマーの梅原大吾さんの本を読んだ時にも同じように勝つ確率の低い選択肢は捨てていました。これは普遍的価値のある考え方に思います)

 

17.ハリネズミはベッドの下に入っていて、そこへキリンが訪ねてくる想像をしました。

キリンはベッドの下に顔を突っ込んで、自分の角の話やクジラの家で過ごした楽しい話をしましたが、ハリネズミにとっては苦痛でした。
(自分にとって楽しい話でも相手にしてみたら楽しくないかもしれない。これはまさに、中学の時の友達が自分の知らない高校の時の友達の話をしても面白くない論ですね)

 

18.ハリネズミはダチョウが訪ねてくる想像をしました。

ダチョウは気分でどこかに頭を突っ込みたくなる性格ですが、ハリネズミの家には頭を突っ込みたくなる場所がありません。家を出てから木の根に頭を突っ込んでいました。
(クマが食欲だとしたら、こちらは性欲の比喩でしょうね。スケべなハゲの話)

 

19.ハリネズミはカタツムリとカメについて考えました②
(ここは会話劇なので部分的な引用をすると壊れてしまいます。なので解釈だけ書きますが、自分勝手なカタツムリはカメに対して自分の事を考えて欲しいと思っているのですが、カメは自分たちを招いてくれたハリネズミに対して、足が遅いなりに少しでも家に近付こうとするので、二匹の間に距離ができます。「仕事とアタシどっちが大事なのよ!」という恋愛のテンプレートを使いつつ、気持ちと物理的な距離を描いています。)

 

20.ハリネズミはどこに住んでいるかも分からない、自分の知らないどうぶつが訪問してきて、強盗のように振舞って何処かへ消えていく想像をしました。
(これは将来に対する不確定要素について考えてる場面でありつつ、心配しなくてもいい事と解釈できます。でも、私はもう一つあると思っていて、これは自分を破壊したい衝動の比喩にも思えます)

 

21.キリンが角を考えたように、ハリネズミは自分のハリについて考えました。ベッドの下で寝ていたいと思っても、ハリにとっては窮屈だから反対するだろうと思いました。その一方で、このハリが歌うことをハリネズミは知っていて、キリンが知ったらさぞかし驚くだろうと思いながら眠りに落ちました。
(この話は感情移入の必要性と物事を多面的に見つめるということですね)

 

22.ハリネズミは「訪問の利点と難点」という本を読む夢を見ました。

その夢は「言及する価値がない」「義務となって感情がなくなる」「みんなに胴上げされ地面に落ちてハリがヒゲみたいに短くなる夢」の三本立てでした。
(訪問は来訪者の目的によって意味が違いますが、他者をもてなすことで自分の器を大きくする受動的な行為だと私は思います。千利休みたいな。一方で感情移入&心配りをしすぎると疲れますし、集団生活に自分を合わせて摩耗するのも不幸だというお話ですね)

 

23.ハリネズミにとって部屋は世界の全てであり、扉の外は宇宙でした

春の晴天を思い浮かべて部屋に貼り付けても、誰も邪魔をしないし、訪ねてくるどうぶつもいませんでした。
(春の晴天と書きましたが、これは文章を読んだ私の解釈でそう書きました。つまり、扉の外の宇宙は無限だから理想が届かないけれど、有限な空間である個人の領域なら理想は幸せなまま存在できるということに思います。自分にとっての理想も他人からすれば価値観の押し付けになる可能性がありますからね)

 

24.ハリネズミは森の空き地まで散歩することにしました。

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そこでアリに出会いました。ハリネズミはあいさつ以外にコミュニケーションの取り方が分かりません。二匹は単純と複雑について話し合いました。

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系統樹 - Wikipedia

(これは進化論における系統樹に通じますね。先日banksyがツイートしてた絵とともにリンク貼っときます)

 

25.ハリネズミはカバについて考えました。

カバは訪問するなり、プレゼントに持ってきた風呂がハリネズミの家の中に入らないので扉を破壊しました。カバは「君のお風呂だよ」と言って満足して帰りますが、ハリネズミは頑丈なドアが欲しくなりました。
(こんなに分かりやすく「ありがた迷惑」を表現できるんですね。四コマ漫画にできそうなお話です)

 

26.ハリネズミキクイムシについて考えました。

キクイムシが来たら何もかも掘ってしまうから家に来てほしくはないと思いました。
(今までに登場したどうぶつとは少し違って、何もかも分解してしまうキクイムシは『性格』ではなく『特性』なんですよ。だから変えようのないものについては離れるしかないんです。それもまた理解の範疇です)

 

27.ハリネズミはキリギリスについて考えました。

キリギリスは明け方にやってきて、家をお店にしようと言いだしました。室内にあるものが売り物になり、キリギリスはハリネズミのハリでさえ、訪問という概念さえ売ろうとしました。
自由主義&新自由主義経済の比喩ですね。企業の商業活動の自由が、個人の権利の上に位置することの問題を表現したお話です)

 

28.ハリネズミはカタツムリとカメについて考えました③

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自分の主張を優先するカタツムリに対して、カメは自分の中に『静かなる服従を感じました。
キクイムシとカタツムリは似てますが、押しても、引いても動かない性格には妥協するしかないというお話)

 

29.ハリネズミはラクダについて考えました。

ラクダはハリを指差して「そんなに必要のないものを見たのははじめてだ」と言います。「キミの背中の二つのコブはどうなの?」とハリネズミが返すと、「これも必要ないんだよ!」と言ってハリネズミにコブを背中から外してハリネズミのハリに突き刺し、気持ちよさそうにして砂漠に走って行きました。
(ハリを誇らしく思っているハリネズミに対して、ラクダはコブがあるのを恥ずかしく思っています。これは容姿に対する価値観の違いを意味していますね。ラクダのコブというのは脂肪を貯蓄するものなので美容で考えると邪魔でしょう。しかし、砂漠で生きるために日光を遮断し、脂肪を分解して補給する機能美が備わっています。このコブの無くなったラクダが砂漠で生きていけるでしょうか…)

 

30.ハリネズミはもし世界が水浸しになったらコイとカワマスは来てくれるだろうと想像しました。

彼らは普段は口にできない美味しいものが食べられる。水かさがどんどん増えたら彼らはどこまでいけるだろうかと想像を巡らせました。
(水棲どうぶつの居住スペースが増えるということは陸棲どうぶつの居住スペースが減るということです。「環境の変化」という言葉の中で「自由」と「侵食」がコインの裏と表みたいにグルグル回っている感じがしました)

 

31.ハリネズミはカラスについて考えました。

カラスは猜疑心の塊でハリネズミが「自分をハリで串刺しにして売り飛ばすんだろう」と喚いて飛んでいきました。
(被害妄想が敵対心を生む過程を描いていますね。わりとこういうテーマの作品は多くて、私はミスチルのMonsterという曲が頭に浮かびました)

 

32.ハリネズミはロブスターについて考えました。

ロブスターは暴力的に振る舞いますが理由はありません。ハリネズミのハリを抜いて、身体を掴んで放り投げたり、ドアを壊して持って帰りました。
(確証はありませんが、命令に従い破壊して、首を持って帰るとするとロブスターは兵士の比喩だと思います。「理由はない」というのはあくまで自分の理由で、与えられた理由が破壊なんです)

 

33.ハリネズミスズメバチについて考えました。

スズメバチにとって「刺すこと」はやらざるを得ないことなので、ハリネズミと距離をとって接しました。ハリネズミスズメバチに対して迷わざるを得ないと答えました。
スズメバチは防御反応として近くにいるどうぶつを刺してしまうので、距離感を詰めることができません。これというのは他人よりもパーソナルスペースが必要だということです。先ほどは無意識に命令に従う「兵士」だと解釈しましたが、スズメバチの場合は理性的なんです。これって「障害」だと思うんです。この作品の上手いところは障害がスズメバチにあるのではなく、触れる側にあるということです。裏を返せば障害に接する手段を共有できればスズメバチは誰とでも接することができるのです)

 

34.ハリネズミは何故、自分は訪ねて来て欲しいどうぶつのことを想像できないのかを考えました。

そのうちに眠くなって、後頭部にハリがあるのを確認すると〈ハリ〉〈訪問〉〈ぼくの何がおかしいのか〉の三つについてどうでもよくなりました。
(自分を必要としてくれる人が居ない理由が自分のハリだとしても、自分に安心を与えてくれるハリはかけがえのないものだと受け入れました)

 

35.ハリネズミモグラとミミズについて考えました。

忍び笑いが聞こえてきて、ハリネズミはくずおれた。ぼくのことをあざ笑っているんだ、と思った。モグラもミミズもきっと不満なのだろう。
「期待してくれたのはうれしいけどね、ハリネズミ」どちらかが言った。
「でも、もてなしはちょっと貧相だったね」もう片方が言った。
「ケチとまでは言わないけど」
「地下のぼくたちのところだと、埋もれて死ぬほど泥があるのに」
「ごめんね」ハリネズミはつぶやいた。
何時間もたって、ようやく静かになった。帰ったんだな、とハリネズミは思った。
毛布を窓からはずしてカーテンを開けた。
太陽が昇っていた。
床の真ん中にはモグラとミミズが帰っていった穴があいていた。黒いルームシューズはどこにもなかったので、おそらくもっていったのだろう。
ハリネズミは立ち上がり、外を見た。雨が降っていた。

(この話は表現が上手いので最後の部分を引用しました。地下に暮らすミミズとモグラのためにハリネズミは部屋を真っ暗にしてもてなします。地上なので満足する量の泥はありませんでしたが、二匹は楽しい時間を過ごして帰りました。要点は心は容姿に関係なく通わせ合うことができるということで、ハリネズミの心情の変化を天気で表現しているのがテクいです)

 

36.雨は激しくなって、ハリネズミは一度も考えたことのないアナグマについて考えました。

ハリネズミは何を話せばいいのか分かりませんが、アナグマは予め話すことをリストにまとめていました。でも、リストを持ってくるのを忘れてしまって「リストがあればリストに『忘れる』と書けたのに」と言って、アナグマはがっかりして家に帰りました。
(落語の頭山みたいなオチですが、苦労が報われないことや失敗について書かれたお話です。当たり前ですが一人では訪問は成り立たないですよね。『もしハリネズミに話すことが思いついたなら成功できた』と言う点を書かないことで表現しているように思います)

 

37.ハリネズミはビーバーについて考えました。

ビーバーはハリネズミとの間に壁を作りました。それを見てハリネズミは、自分が見えなくなったら自分は架空のどうぶつになるのだろうか?と考えてからイラクサのハチミツを食べ尽くしました。
(このお話は「シュレディンガーの猫」ですね。実測によってのみ存在を証明するというのはまさにそれで、生物は今現在にしか存在できないということ。ハリネズミは自分で自分を証明するためにハチミツを舐めているんです)

 

38.ハリネズミは部屋にいると手紙を送るかどうか考えてしまうので外に出ることにしました。

そして、ハリのことを考えます。ハリが無くなって、立派な角が二本あって、ゾウの鼻と羽がある自分がいたらどうだろう。それならヤマアラシとでも踊れるのではないかと。でも、「君はだれ?」と言われた時にハリのないハリネズミを信じるだろうか…と考えるのでした。
傷付けたくないのに傷付けてしまう心情を表す言葉でエヴァンゲリオンの中にヤマアラシのジレンマ」という言葉が出てきます。ジョニーデップのシザーハンズと言ったほうが分かりやすいでしょうか。

このお話の面白いところは二つの要素から成り立っているところです。一つは自分がヒーローだったらヤマアラシとでも踊れるのではないかと考える点と、二つ目はヤマアラシに自己投影している点です。つまり、自分で自分を救済できる力が欲しいと考えてるわけですが、そうすると受け入れようとしている今の自分では無くなってしまうという矛盾が生じるのです。私は孤独から這い上がるこの感じが嫌いではありません。カフカっぽくもありますね)

 

39.ハリネズミナイチンゲールのことを考えました。

その鳴き声を聞くと自然と涙が流れてきました。泣き顔を見られたくありませんでしたが、なぜ涙が溢れてくるのかは分かりません。それでもこれが幸せの涙であることは分かりました。

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もう一杯ずつ紅茶を飲んで別れを告げ、ナイチンゲールは夜の闇に消えていった。
ハリネズミは暗闇のなかでしばらくすわったままでいた。なんてきれいな歌だったんだろう、と思いながら。
ナイチンゲールがいなくなったいま、もう一度、涙を流したかったが、そうはならなかった。
立ち上がり、紙にこう書いて鏡の横に貼った。

ぼくはなにも知らない。ほんとうになにも。

趣味のいい隣人|海老原いすみ|note

星野 源 - 知らない 【MUSIC VIDEO & 特典DVD予告編】 - YouTube
(このお話と似た話を考えたことがあるのでとてもよく分かります。ハリネズミ&テレヘンさんは( ´∀`)人(´∀` )ナカーマって感じです。BGMを付けるなら星野源さんの「知らない」でお願いします)

 

40.ハリネズミは考えたことのないクラゲについて考えていました。
クラゲには尾もヒレも翼もありませんから森には来ることができません。クラゲは自分を幸せだとは思っていなくて、翼があっても着地もできません。訪問しても紅茶の飲み方も分かりませんし、ハリネズミを困らせないように知らせようとしても口が無いのでできないのでした。

このお話に関しては少し危うさを感じます。というのも、このお話だけを読むと自分よりも下等生物をイメージして優越感に浸っている嫌なハリネズミと解釈できてしまうからです。論点は表現方法を失ったときに自分を証明できるかどうかです。そのためには他者の手が必要となるので、ハリネズミは怖がって考えるのをやめるのです。理解の向こう側の答えに気付けるかどうかが解に思います)

 

41.ハリネズミはカタツムリとカメについて考えました④
カタツムリはハリネズミの家で「何をするのか」とカメに尋ねて、カメは「分からないけど踊ればいいのかもしれない」と答えました。カタツムリは踊ってみましたが上手くいきません。それでも、これはタチドマリという踊りだと説明すればいいと考えて、ハリネズミに会った時のことを考えて練習しました。
(今まで自分勝手だったカタツムリが、このお話では動きだしました。踊りは踊りませんが自分なりの踊りを踊ろうと決意するのです。ハリネズミが自分を受け入れようと考えたパートがありましたが、このパートに来るまでの時間のズレがカタツムリの個性なのです。それが、人それぞれの時間で生きることということです)

 

42.ハリネズミはどうしたら自分が怖くなくなるかについて考え、コフキコガネを想像しました。
コフキコガネがやってきて居心地のよさを喜びます。そして、ハリネズミの肩をポンと叩くとハリが刺さって手から血を流しました。それでもコフキコガネ「居心地のよい痛みだ」と言いました。コフキコガネハリネズミと踊ろうとしましたが、ハリネズミはテーブルの下にもぐってしまいます。家をあとにしたコフキコガネが外で誰かと会話して、「居心地のよい秋だね。これで居心地よく雨が降ればいっそういいのに」と話す声が聞こえてきました。
(この話は罪悪感と被害妄想について書かれていて、先ほど出てきたカラスに近い思考です。お世辞か本心かは相手にしか分かりませんが、それを「ありがとう」と受け取るか「どうせ誰にでも言っているんだろう」と考えるかは自分次第です。ハリネズミコフキコガネを傷つけないように考えたのに、コフキコガネの言葉で自分は傷つきました。『まぁいっか!』と他人を許すことができたら、どんなに楽なことでしょうか)

 

44.ハリネズミは何千ものどうぶつがハリを持っていて、自分だけ持っていなかったらどうなるだろう?と考えました。
ハリのない自分を驚きに満ちた目で見るどうぶつ達は誰も近寄ってきません。
「ヘンなハリだらけの自分たちのことを小さく弱い存在に感じる」それが理由でした。
(他人がもし自分と同じ立場なら、きっとそう思うだろう。それでもぼくは怖くないというハリネズミの本心です。これは「みんなに理解してほしい」という願いでもあります)

 

45.ハリネズミはカタツムリとカメについて考えました⑤
もし、手紙を送っていたなら二匹はまだこちらに向かっているだろうと。
カタツムリはなぜ自分たちを招待したのかとカメに問いかけ、分からないと答えると怒りだしました。それを空想しているハリネズミは「いつか君たちのところへ遊びに行きます」と手紙に書いてみましたが、カタツムリの嫌味が聞こえてきたのでやめました。
(このお話ではカタツムリの嫌な部分が爆発してます。とても小さく、足の遅い存在でありながら人一倍、要求するカタツムリと、その気持ちを唯一理解できるカメは寡黙に歩きます。共依存の関係性が際立ちます)

 

46.ハリネズミはバイソンについて考えました。
もし、手紙を受け取ったら嬉しくなって一目散に自分の家を目指すだろう。そして、気持ちは抑えられずに玄関のドアを突き破りハリネズミの名前を呼ぶのです。そこには何とかランプに捕まって回避したハリネズミの姿があるのでした。
ウメハラのバイソンが凄すぎて会場沸きまくり - YouTube

(「興奮しやすいバイソンだったら自分が手紙を送っても喜んでくれるだろう」という安牌と、「だとしたら家に突っ込んで来るからやめたほうがいいよなぁ」という未来予想ですね。読んでるうちにウメハラさんのバイソンが浮かびました)

 

47.ハリネズミは書記官鳥について考えました。
サバンナにいるから手紙を出しても来ないだろうと。それでも返信の手紙には自分のことを考えて書かれた言葉があって、その手紙はハリネズミを踊らせました。ハリネズミも同じように手紙を書こうと思いましたが、何を書いたらいいのかわからず不確実性に飲み込まれてしまいました。

スキマスイッチ / ボクノート - YouTube

(これもまたナイチンゲールの部分と繋がっていて、知らないことは手紙に書けないのです。どうやったら喜んで貰えるのかハリネズミには分かりませんから悩むのです。ハリネズミスキマスイッチの「ボクノート」を聞かせてあげたいです)

 

48.ハリネズミは呼んだらすぐに来てくれるどうぶつとしてミーアキャットのことを考えました。
訪問について、何をすればいいのか分からないミーアキャットにいちいち説明していると、ハリネズミも自分の目的が分からなくなり、ミーアキャットを「楽しくない」と思わせてしまいます。そしてハリネズミはミーアキャットを失いました。
(このお話のハリネズミは、相手に要求するばかりで自分が相手を楽しませるということをしませんでした。厳格なテーブルマナーによって食事がつまらなくなってしまうのと同じで、分からない人に対してはそれなりの知識と受け入れる態度が必要なのでしょう。ハリネズミには教えるという行動が早すぎました)

 

49.ハリネズミオナガキジ〈オランダでは王のキジ〉のことを考えました。
オナガキジからすれば自分なんてみすぼらしく見えるし、ほこりの一粒あることも許さない。その目からすれば自分なんて存在ないに等しい。それでもオナガキジに対して「失礼」であることを指摘しようと思いました。そして何より自分に満足感を与えてくれるハリが誇らしげに思いました。
(このお話のオナガキジは「権威」の象徴で、他人を見下すような目に対してハリネズミが失礼、無礼を指摘するという構図です。ハリハリネズミに勇気を与えてくれるのは、カウンターインテリジェンスと近いと思いました)

 

50.ハリネズミはクジラについて考えました。

クジラは空を飛んでやってきて、ハリネズミは紅茶とケーキと塩辛いクリームを外に持ってもてなしました。クジラはお返しに小型の噴水をプレゼントしました。水が噴き出すのを見ながらハリネズミはどうやって止めるのか尋ねます。クジラは自動的に止まると言いましたが、森が浸水してきました。水浸しになったのを確認するとクジラは泳いで家に入りました。森のどうぶつ達が悲鳴をあげる中、「キミも一度、ぼくのところにヘンな訪問をしてごらんよ。一緒に楽しもうよ!」と言い残してクジラは帰りました。
(このお話は私には少し難しいです。そのまま読むとサプライズプレゼントとかフラッシュモブみたいな「ありがた迷惑」の文化に感じられます。でも、海と森は気軽に行ける距離感にありません。だから、クジラは距離感or距離間を埋めるためにわざとイタズラしたんじゃないかとも思えるんですよね。「忘れないでね」って感じで)

 

51.ハリネズミは怒っている自分を想像しました。

もし、失礼なことを言われたら怒りたくないのに怒るかもしれないと。それよりも誰も訪ねてこないのと同じくらい、みんなをガッカリさせたことに後悔するはずだと思いました。

霧はしだいに深くなっていった。
窓をほんの少し開けてみた。
外からはなんの音も聞こえてこなかった。
森は秋で、冬の訪れが近かった。

(このお話は、相手が失礼な態度をとるという事は自分が先に失礼な態度を取った可能性があるのではないか?と考える内容です。冒頭のほうに出てきたカエルは怒りたいから怒っていましたがハリネズミは逆です。怒りたくないのに自分が原因で相手を怒らせているから精神が疲弊しています。液体と気体の狭間にある「霧」という存在が上手いと感じます)

 

52.ハリネズミはネズミについて考えました。

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ネズミは黒いコートに赤い蝶ネクタイを付けて演説をはじめました。演説のあとは質疑応答の時間がありましたが、「声の出しすぎに注意しなくてはならないので」と言って質問を嫌いました。そして、ハリネズミが蓄えていた食糧を全て食べて帰りました。

(言いたいことを言うだけで有権者の質問には答えず、貯蓄を貪る政治家のお話ですね。ハリネズミは優しいから食糧を全て食べられてしまいましたが、もしこれがカタツムリだったらネズミを論破できるのではないでしょうか。そのディベートは見てみたいかも…)

 

53.ネズミのことを忘れたあと、ハリネズミはフクロウは手紙の返信だけで訪問はしないだろうと考えました。

ところでキミは〈存在〉についてどう思っていますか?
大きいか小さい、どちらだと思う?
ぼくはいまそのことについて考えています。
キミの意見を聞かせてくれますか? ただし手紙で。
招待にお礼を述べます。 フクロウ

フクロウの問いに対してハリネズミは、人生も幸福も誰も気にしないから小さいと思いました。そしてアリと話したことを思い出します。それを踏まえて、どんなにフクロウの視力が優れていても死は見ることができないだろうと思うのでした。アリは死について考える必要は無いと言っていたから、それに習ってハリネズミも死について考えることはやめました。
(このお話は深いですね。『考えても仕方ない』とは別の答えを考えてみます。姿が確認できなくても感情が繋がることはモグラとミミズが証明していますが、姿を見せることが嫌いなフクロウはそれよりも孤独です。もしかしたらハリネズミよりも孤独かもしれません。それでも、存在を証明するため、お礼を伝えるために手紙を返しています。
これと別の回想で出てくるアリは「会話ができるどうぶつの最小単位」でありながら、そんな彼にも死が備わっているのです。これは命が平等である事であり死が平等であるということです。

つまり、ハリネズミの頭の中には連立方程式があって自己否定をして自分は存在しないと考えると二つの死〈寿命という死と自殺という死〉が存在することになるという解が出る。だから無駄に思える自殺に関しては考えるのをやめたのだと思います。そう、これは自殺の話だと私は思うのです)

 

54.ハリネズミはカタツムリとカメについて考えました⑥
カメはカタツムリに対して自分の甲羅の上に乗るように言いました。しかし、カタツムリはスピードが出過ぎて曲がりそこねて自分の殻がバラバラになってしまうと妄想するのです。これじゃいつまでたっても着かないとカメは言いました。
BUMP OF CHICKENの曲に「銀河鉄道」という作品があって、その中に身体は止まったまま電車が動くのを不思議に思うという歌詞があります。それと同じで、カタツムリの言っていることは感覚的には正論なんです)

 

55.ハリネズミはカメだけが訪ねてくるのではないかと考えました。

「ぼくはカタツムリには速すぎるんだ。あまりにも速すぎる。あいつは緩慢の驚異なんだよ、ハリネズミ。それなのに、いまもまだどんどん遅くなっているんだ!」
またしばらく黙っていてから咳ばらいをして、カメは最近、自分がカタツムリに稲妻と比較された話をした。
「キミもそう思う?」とカメはたずねた。「さっきぼくが入ってきたときとか……きっとカタツムリの言うとおりなんだろうね」カメはまた咳ばらいをした。「ぼくは悪天候なんだよ、カタツムリの言葉を借りると。嵐なんだ。そう呼ばれることもあるんだ。甲羅のついた嵐って」カメはハリネズミを見つめ、ぐっとこらえて言った。「いっしょに来られたらよかったのになあ、カタツムリもとても楽しんだはずだ……ぼくたちがいっしょにいたら、嵐も吹きとばして世界でいちばんいい天気になるんだ」カメは深く息を吸った。「そうしたら、ぼくたちは永遠だ」
カメの目に涙が浮かんできたのを見たハリネズミは、これがほんとうの友だちなんだ、と思った。

カタツムリが欲しいのは何もかもが静止することでした。それが不可能なことはカメもハリネズミも分かっています。
カメはハリネズミという友人を得ると同時に、急いでカタツムリの元へと歩いて行きました。ハリネズミはそれを見ながら孤独に感じるのでした。

(この大切な文章をぶつ切りにはできず、長々と引用させてもらいました。「カメとカタツムリ」の正体が「老夫婦」であって、「余命の短い妻とその悩みを相談できない夫」という関係性に気づいた瞬間、不覚にも涙が出そうになりました。見返すとカメとカタツムリのイラスの巧さが分かります。
別の作品を挙げるなら「博士の愛した数式」や「私の頭の中の消しゴム」のように『記憶』をテーマに扱った作品と同じで、終わりが近づく瞬間のなんとも言えない感じが切ないのです。
だからカタツムリは静止することを望むのだし、カメもハリネズミにカタツムリを紹介して永遠になりたかったんです。
ハリネズミはこういう友達が欲しいと思うと同時に、カメの幸せの涙を見て、もう会えないんじゃないかという孤独を感じるのです)

 

56.ハリネズミは不特定多数のどうぶつ対して、自分はつまらないし、紅茶もおいしくないから来ないほうがいいと手紙を書いてみることにしました。

そうすれば誰かがきっと来てくれるんじゃないかと思ったのです。すこしの希望を感じて窓から頭を出すと雨がハリをつたいました。
(このお話は「かまってちゃん」にもとれますが、世界に対するハリネズミの問いかけです。霧が雨へと変わる描写は叫びにも似ていて、その一方で雨に唄えばでもあると感じます)

 

57.寒い夜のこと、ハリネズミの家にバケモノが入ってきました。

誰も招待していないことを伝えましたが、ハリネズミはバケモノに乱暴に掴まれて『バン!』という音がしたあと何も聞こえなくなりました。
(このお話については想像なのか実体験なのか定かではありませんが、ハリネズミの心境の変化を具現化した『悪夢』だと私は解釈しました。そして破壊の塊であるバケモノはコミュニケーションが取れないので常に孤独であるし、助けようとする人も壊れます。或いはバケモノは天災の比喩かもしれません)

 

58.自分は誰にも訪ねてきて欲しくないのだと思ったハリネズミは手紙を破いてしまいました。テーブルに突っ伏していると誰も招待していないのにドアをノックする小さな音が聞こえました。

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ハリネズミが喜ぶと思ったリスがブナの実とハチミツを携えて何となくやってきたのでした。
ハリネズミは特別な時のためにとっておいたアザミのハチミツを出しました。

午後が過ぎていくにつれ、リスもハリネズミも時間が止まればいいのに、と思った。
あるいはカミキリムシがその日偶然、一秒を一時間に、一日を一年に変えればいいのに……そして紅茶とハチミツがいつまでもなくならなければいいのに、と。日が暮れ、窓の外に雪が降りはじめたのを見ると、ずっと雪が降りつづくことを願った。ドアが開かなくなって、リスが冬じゅう泊まらなければならなくなるように。

ハリネズミはただ食事をするだけでも心が通じ合うことを学びました。これがカミキリムシのお話と対応しています。

そして、リスもまたハリネズミが美味しいハチミツを出してくれたことで満足します。言葉がなくとも感情が循環することで承認欲求が満たされると解釈できます。

それと、平井堅の「even if…」という曲の歌詞が驚異のシンクロ率なので気になった方は調べてみて下さい)

 

59.外はこの世からハリネズミを吹き飛ばそうとしているほどの吹雪で、家が揺れてハリネズミは真夜中に目を覚ましました。

色々などうぶつのことを考えました。それは「ずっと友達だから訪問の必要はない」とみんなが手紙を書くなかで、リスだけが違うことを書く光景でした。

「とっても楽しかったね、ハリネズミ」そしてその下には「また会おうね!」と。
ハリネズミはぎゅっと目をつぶって深いためいきをついた。また会おうね……それはハリネズミの知るもっともすてきな言葉だった。
それからハリネズミは眠りに落ち、冬じゅう眠りつづけた。

(自分の世界である部屋が無くなったとしても、自分のことを覚えていてくれるリスがいるからハリネズミは冬眠することができました。これはつまり「冬眠によって忘れられてしまうのではないか?」という恐怖心から解放されたことを意味しています。そしてこの物語は幕を閉じるのです)

おわりに

さて、ここからは()から解放された私がさらに好き勝手に書いていきます。
まず私が一番最初に抱いた違和感は「どうして部屋に閉じこもっているハリネズミが様々などうぶつの名前や存在を知っているのか?」という疑問でした。
読み進めるに外出するシーンはありましたし、カメとカタツムリに対しては自分が遊びに行くことを考えるシーンもありました。しかし、自分の家までは来れないようなどうぶつを知っていますから、ハリネズミの行動範囲が広い可能性を示唆しています。
何が言いたいのかと言うと、私には季節性のうつ病に見えるのです。

冬眠を前にしたハリネズミが季節性うつになり、一人にならざるを得ない孤独に苛まれるという話です。

きっとこの本におけるハリネズミも他の季節にはもっと表情が豊かで、笑ったり踊ったりするんだと思うんです。春や夏には書記官鳥やバイソンの住むサバンナや、クジラやクラゲの棲む海に行くのではないでしょうか。
アリは複雑について語っていましたが、「現在」は「複雑」の上に成り立っていて、孤独を紐解くヒントがどこかにあるというメンターの役割をしている。アリといえば「個体数」ですから、その中で「個性の大切さ」が同居している点も物語として練られているなぁと感じました。
語感は「ムーミン」っぽくもあり、考えるシーンは「ぼのぼの」っぽくもある感じが気に入りましたし、世界観を拡げる本のデザインもいいなぁと思いました。(新潮社装幀室の望月玲子さんが担当したそう)

翻訳を担当した長山さんの「あとがき」にはトーン・テレヘン氏の生い立ちや、三十年以上にわたり医業のかたわらで子ども向けに執筆活動をしてきたことが書かれています。
深く思考してシンプルに形にすることはとても難しいことです。「医者」と「詩人」という二足のわらじがこの作品を作ったというのは納得させられました。

三十年はすごいですね。

 

読み進めるうちにハリネズミと自分を重ね合わせ、読み終える頃にはとうとう『私はハリネズミなんじゃないか?』と思いだし、診断サイトで確認してみました。(J( 'ー`)し オクスリダシテオキマスネー)

あなたの性格はどんな動物?

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その結果、私はハリネズミではなくフクロウであることが分かりました。(この診断結果にハリネズミがあるのかは不明です)
なるほど。こうやって感想記事を書くことでしか存在を証明できないから、彼らの気持ちが分かったのかもしれません。

これからハリネズミだと思い込んでいる哀れなフクロウだと自覚しようと思います。

ホーホーホー、ホーホーホー。

何はともあれ、この本、買ってよかったなぁ。と思うのでした。

 

ハリネズミの願い

ハリネズミの願い