最初から神回
毎朝イタリアの新型コロナウィルス についての新聞記事を読むのが辛い。
— ヤマザキマリ( Mari Yamazaki ) 公式 情報用アカウント (@THERMARI1) 2020年3月19日
どうしようもないからとうとうアマビエを描く
"Show a picture of me to those who fall ill and they will be cured."#アマビエ pic.twitter.com/jApdtdKapT
今夜こちらの番組に出演して、高橋源一郎さんとカミュの「ペスト」についてを語ります(や)https://t.co/GLXxY2S501
— ヤマザキマリ( Mari Yamazaki ) 公式 情報用アカウント (@THERMARI1) 2020年3月20日
『すっぴん!』が終了して寂しい気持ちもありつつ、高橋源一郎さんの新番組『飛ぶ教室』を楽しみにしていました。その第1回目(実際には0回ね)のゲストがヤマザキマリさんと知って楽しみでした。
高橋源一郎さん)1933年ナチス政権から自由主義的だと本を焼かれたケストナーは児童文学として #飛ぶ教室 を書きました。僕はこの本が好きで私塾の名前にもしてるんですが、ラジオ番組としてやってみたいと思っていました。大切なのは「自由」であり「楽しい」こと。(続
— 海老原いすみ (@ebiharaism) 2020年3月20日
高橋さん)この番組は前半で僕が本を紹介して、後半はゲストに解説してもらう2コマになっています。
— 海老原いすみ (@ebiharaism) 2020年3月20日
まず最初に「こんばんわ、作家の高橋源一郎です」という声で記憶が呼び覚まされました。この声だ!と。高橋さんも「8年間朝の番組をやっていたので、ついおはようございますと言いそうになる」と言ってました。担当されるアナウンサーは小野文恵さんです。
0コマ目の作品はアルベール・カミュ『ペスト』
— 海老原いすみ (@ebiharaism) 2020年3月20日
アルジェリアの港町オランを舞台に、一匹のネズミの死体が発見されたところから物語は始まる。第二次世界大戦をペストに例えて書かれたロングセラー作品。高橋さんによると今年1月下旬から売れ始めて某ネット書店では3位だとか。
以前に『100分de名著』で『ペスト』を扱っていて、その予備知識があったのでわりとサラサラと頭の中に入ってきました。たしか日曜日の朝にやってる報道番組で、ジャーナリストの青木理さんもこの作品を紹介されてました。
高橋さん)「我々は自分の内に皆ペストを持っている」というのが重要で、例えば安い服を買っても何処かの国で低賃金で働いている人の事や、今食べてる野菜が農地を汚染してできてるかもしれないなんて事をみんな考えない。でもタルーという人は考える人だった。ペストが収束する時に彼は死んでしまう
— 海老原いすみ (@ebiharaism) 2020年3月20日
高橋さん)リウーは何を得たのか? それは知識と記憶。この作品の2年前に終わった戦争も同じで、覚えていればいい。ペストは感染症ではあるけど、キチンと立ち向かえよというのがカミュからのメッセージだと思います。
— 海老原いすみ (@ebiharaism) 2020年3月20日
この作品は戦争を例えて書かれたはずなのに、病に侵される過程はまるで今起きた事を書いたかのように生々しく、心理描写はテレビから聞こえてる新コロの連呼を浴びせかけられる私たちの心を代弁しているかのようにみずみずしく古さを感じません。書き記す者と読む者の間にタイムマシンがあるような不思議な感覚です。(関係ないけど、COVID-19が流行語大賞になったら誰が受賞するんですかね)
今日の先生「ヤマザキマリさん」
— 海老原いすみ (@ebiharaism) 2020年3月20日
高橋さん)ヤマザキさんにお声を掛けた時、まさかこんな事になると思ってませんでした
ヤマザキさん)ほんとですよね。2月末の時点では私のほうが家族から「お前は戻ってくるな」と言われてたくらいです。続
ヤマザキさん)一回、帰ってまた戻ったんですけど、その後にうちの町で死者が出て、4月にこちらに来る事になっていた夫も来られず、ハワイにいる子供ともバラバラです。続
— 海老原いすみ (@ebiharaism) 2020年3月20日
ヤマザキさん)日本だと「風邪とかインフルエンザと同じだよ」なんて言われるけど、イタリアだと「大して歳もとっていない人が死んでいるんだ!君はメディアを疑うべきだ!」と言われます
— 海老原いすみ (@ebiharaism) 2020年3月20日
小野文恵アナ)温度差がありますね
— 海老原いすみ (@ebiharaism) 2020年3月20日
ヤマザキさん)離婚するかと思いました。親族にも感染者が出ているので、今日は花見でもしましょうと言おうものなら何を呑気な事言ってるんだと言われる。どんな時も家族が一緒の国で、起こった事のない事態なのでみんな泣いてると思う
ヤマザキさんのご家族がイタリアで隔離生活を余儀なくされている事はTwitterを通じて知っていましたが、ヤマザキさんが今自分自身が置かれている状況を話せる機会があってよかったと冒頭で言っていたのが印象的でした。
アマビエどうにかしてくれ!
高橋さん)イタリアの人はメディアを信用してないんですか?
— 海老原いすみ (@ebiharaism) 2020年3月20日
ヤマザキさん)私が17歳の時に行った時から「テレビで言ってた」と言うと「何をバカな事を言ってるんだ」と言われます。どの政党の新聞を読んだかで違うわけで、その中から自分の頭で考えて意見を持つ事を教えられるのです。続
ヤマザキさん)あの国は観光がダメになったら経済的にとんでもない被害になるでしょう。でもそれを言うと「君は人の命とお金どっちが大切なんだい?」と。
— 海老原いすみ (@ebiharaism) 2020年3月20日
小野アナ)命あっての経済だという事ですね
ヤマザキさん)何十年も国際結婚していても違いを見せられます。夫は哲学者みたいになってきました
高橋さん)いざという時に役にたつ人と役に立たない人がいる。この作品の登場人物のほとんどがものを書く人達なんですよね。言葉の本領発揮
— 海老原いすみ (@ebiharaism) 2020年3月20日
ヤマザキさん)最後の方で「収束した!」ってお祭り騒ぎをするじゃないですか? 今の中国はだんだん人が出るようになってるけど、これから十分に起こり得るシナリオだと思いましたね
— 海老原いすみ (@ebiharaism) 2020年3月20日
り得るシナリオだと思いましたね
高橋さん)何かやってきたものが去っていくと、みんな無かったように忘れてしまう
ヤマザキさん)そう!戻って来るんですよね。今日なんてお天気も良くて、渋谷なんて人々が手を繋いで歩いてる。これとイタリアの差異は何なんでしょうね。私は半分イタリアにいるので、このバランスを取るのが難しい
— 海老原いすみ (@ebiharaism) 2020年3月20日
ヤマザキさんのこの話を聞いて、9.11があった時に坂本龍一さんが「カフェでは恋人達がお茶を飲んでる。とても戦争をしている国とは思えない」と言っていたのを思い出しましたし、東日本大震災があった時に被災者の方が東北と東京を対比して「同じ国とは思えない」と言っていたのを思い出しました。非日常と日常の乖離をどうやって埋めるのか、そのうえ目に見えないモノに対してどうやって対応したらいいのかという点で意見が分かれますよね。
高橋さん)「戦争なんて台風みたいなもので去っていくし、誰の責任でもないよ」って言う人いるけど、何か災害が起きた時の人間の行動は基本的に同じで、日常に戻ろうと耐えて、対策が遅れても責めても仕方ないと考える。でもヨーロッパは違う?
— 海老原いすみ (@ebiharaism) 2020年3月20日
ヤマザキさん)ヨーロッパの人達は訝しむし、いくつも疫病を経験してるから、作家が作品に残してるんです。『デカメロン』もそうです。嫌な人の事を「ペストみたいだな!」と言ったりして
— 海老原いすみ (@ebiharaism) 2020年3月20日
高橋さん)『デカメロン』読んだんですか?
— 海老原いすみ (@ebiharaism) 2020年3月20日
ヤマザキさん)映画も見ました。とても放送では言えませんけど。笑
高橋さん)何か起こった時に考える人と考えない人がいて、考える人もその直後は考えていてもやめてしまう。それでも考え続けないといけない。だから読み返す事は重要ですよね
ヤマザキさん)私はある種の観察記録だと思っていて、この作品を読む事でヒントを得られると思います
— 海老原いすみ (@ebiharaism) 2020年3月20日
高橋さん)原発事故とも似てるなぁと思って。報道とか対処の仕方とか。人間って変わらないんだね
小野アナ)次回1コマ目の本は?
— 海老原いすみ (@ebiharaism) 2020年3月20日
高橋さん)まだ決まってません
小野アナ)予習できませんね。じゃあ2コマ目のゲストは私から紹介しましょう。菊地成孔さんです#denpa954
飛ぶ教室のBGM菊地成孔さんじゃないかなぁと思ったらそうだった。しかも次回のゲストだって。テンション上がったわ。絶対聴くやーつ。
— 海老原いすみ (@ebiharaism) 2020年3月20日
BGMのサックスの揺れる感じが菊地成孔さんっぽかったのでワンチャンあるんじゃないか?と思っていたら的中。嬉しくて最後何言ってるか聞き取れませんでした。笑
おわりに
第0回の時点で神回でした。人類史に残るパンデミックの中、日本の国営放送(国営放送って言うとNHKの人は起こるって久米宏さんが言ってた)のラジオで2人の作家が『ペスト』を題材に作品と現在を照らし合わせて貴重な話をしていた素晴らしいメモを私は取ってしまったのです。(未来人に自慢したい)
あと、次回のゲストが菊地成孔さんというのが熱い。私がツイートに付けた「#denpa954」というハッシュタグは以前に菊地さんがTBSラジオでやっていた番組のタグです。この番組の最終回で菊地さんはもうラジオ番組はやらないと仰っていたのでまた声が聞けるのは嬉しいです。さらにその最終回でこの国は五輪によって鈍い経済的なダメージを受けるだろうという事も言っていて、今回のコロナショックです。音楽家の方々は相次ぐイベント自粛で大変でしょうから、そういう近況報告も聞けると嬉しいです。
それにしてもこの番組が始まるタイミングと出演者が神がかってますわ。