モブトエキストラ

左利きのメモ魔が綴る名もなき日常

『マッドマックス』を見た感想(夜は短し走れよニュークス)

荒野の狂人暴

最近、フジテレビでマッドマックス祭りが行われていた。ゾーニング作品という事でテレビ用に再編集したものが放送されたそうだが、私は見た事なかったのでサビ抜きの寿司でも美味しく召し上がりやがりました。

ありがてぇ、ありがてぇ。

 

『マッドマックス1』
スピード狂の警官と暴走族の話。
愛する者を奪われた主人公は修羅と化す。
当時の人は速さを視覚で楽しむのが面白かったのかもしれないけど、バトロワゲームとドライブレコーダーが当たり前の時代からすると面白くない。

『マッドマックス2』
冒頭30分間は石油のプラントを眺める観察映画。ガソリンを求めて暴走族が攻めてくるのを返り討ちにしてどこかへ行く話。おっさんが自動車に張り付けにされて「和平交渉だ!」と言ってるシーン以外は面白くなかったけれど、この映画によって『北斗の拳』と『ウォーターワールド』が生まれたらしい。

『マッドマックス3』
バータータウンという炭鉱を寝ぐらにしたコミュニティの地下闘技場でガチムチとビョンビョンし、勝ったのに愛車戻らないし死の追放くらって砂漠の民と一緒にボンジュールすると見せかけて砂漠ENDする話。
私としては3作の中で一番面白くなかった。

 

ここまでの感想としては「荒野」と言いながら道がある時点で違和感があった。
仮にその道が世界大戦で滅ぶ前に作られたものであるならば、同様に残されたテクノロジーは必ずあるはず。優れた文明であるほど知識や物は残るだろうし、世界が荒廃した時は製造拠点と技師、リペアが重要になる。1では車両整備のオッサンが重宝されていたけど、2や3は技師の印象が薄い。

というかそのコミュニティがどのように生活してるのかがイマイチ分からなかった。世界大戦の影響で草木が生えなくなってしまったという世界観ならなおの事、何を食べて生きているのか? 豚は家畜というありふれた存在ではなく高級品なんじゃないか? 馬鹿みたいにぶっ放してるけど弾丸はどこから持ってくるのか?と設定の部分に対する疑問は多い。
あとは、あえて登場人物を馬鹿に見せる演出は好きじゃなかった。百歩譲って、敵役だから反知性的なゲス野郎の群れと描くのは良しとしても、3の砂漠の民は「学校もねーし、部族ってこんなもんだろ?」みたいな西洋社会が持つ偏見を感じた。聖書の救世主になぞらえ、下級人種のもとに白人様がやってきて神様のように振る舞うという映画は多く『アバター』や『ラストサムライ』もそうだった。反対に『ドラゴンボール』は地球育ちのサイヤ人として悟空が迎撃しまくるから面白いのだと思う。あと私はラノベを読んだ事ないけど、『転生モノ』というジャンルも実は怪しいかもしれない。
レヴィ=ストロースの『野生の思考』はすごいね)

 

『マッドマックス4』
シリーズの悪いところを見直しつつ、現代の価値観を取り入れて冒険活劇に昇華した良作。(やった!道がないぞ!)
今作では主人公が二人いるというのが特徴的。主人公フュリオサはジョーという男性社会のガン細胞でてきたような男を裏切って、性奴隷にされていた女性達と共に緑の大地を目指す。(ウーマンリブ&奴隷解放
一方、主人公マックスは1の後半にあった狂人キャラを秘めながら戦闘員の輸血袋として投獄、猿轡をされ、冒頭30分間は車に張り付けられたまま荒野でドンパチ&カーチェイス。この時点ではフュリオサを追いかけるジョー陣営、つまりは男性社会側の目線から見ている。
その後、すったもんだありつつ自分の鎖と繋がっているニュークス(ジョーにより洗脳されていて、殉死したら一体化できると思ってるメカニック)を引きずりながらフュリオサのタンクローリーに近づく。傷付いている女性達を銃で脅しながらタンクローリーをジャックし逃亡劇へ。
後半は闘う女性の物語と、鎖と猿轡から断ち切られたマックスが自分を取り戻す物語。緑の大地という幻想に向かうか、来た道を引き返して現実を取り戻すのかの二者択一は良かった。(マックスからすると、家族を守れなかったトラウマに一人苛まれ続けるのか、他者を助ける未来を選択するかという岐路)
ラストも物語としてのハッピーエンドと、マックスが荒野に残るという2つが成立していてよかった。
2のような退屈な時間はなく、3の謎ビョンビョン要素も取り入れていた。具体的に書くと、車から伸びた棒の先端に立って、棒高跳びのジャンプで使う棒ぐらいしならせてマックス達が乗るタンクローリーに接近し、女性を拉致するというシーン。3の謎ビョンビョンと違って、実用性を持たせつつ映画の見せ場にもなってる事に気がつく。それと使用される武器はシリーズを踏襲しているものの、殺傷能力が上がってるように見えた。
それもあってか、女性が転落死したり、フュリオサを知るばっちゃんが死んだり、ニュークスが死んだりと、シリーズの中で一番主要人物が死んでる点を私は評価する。(女性の中でも考え方が違って裏切りがあったのも人間味があっていい)
いわゆる『主人公補正』というものがあると「果たしてどうなるッ⁈」という場面になっても「どうせ主人公なんだから生き残るっしょ(鼻くそほじりながら)」と予想がたって、作品の緊張感が無くなってしまう。だから名作には主要キャラや主人公を容赦なく殺してくれる作品が多いと私は思う。(溶鉱炉に沈むシュワちゃんは有名すぎる)

さっきも書いたけど『怒りのデスロード』ではこれまでの悪い点がアップデートされて、アッパー調整しかないんだけど、あえて挙げるとすればフュリオサの「義手」と砂の相性は最悪だと思う。スチームパンクの要素としてはカッコいいデザインだし、フュリオサといういぶし銀なキャラクターを引き立てている。でも、機械全般に言える事として駆動部分に砂が入り込むと壊れてしまうのはもちろんの事、義手や義足の場合は皮膚の摩擦をいかに軽減するかが問題になってくるので、実用性で見ると砂との相性は良くないと思う。(関係ないけど、イスラム系のテロ組織は環境が悪くても走れるトヨタ車を愛用している事が多い)
相性が良い義手を作るとすれば防腐処理をされた木製の義手を水圧で駆動させるデザインとか、何かもっと工夫したデザインが作れたのではと。
あと、化石燃料が貴重とされているのに火炎放射器を使い続けた理由がよく分からない。それにガソリンを略奪するなら、なおさら火炎放射器は使ってはいけないはず。爆発オチにしたかったとしか思えない。だから終盤でニュークスがガチムチダルマ(名前しらん)から仲間を守るシーンは『マイケル・ベイ 怒りのデスロード』と化していた。

爆発オチだんて何という悲恋!
夜は短し走れよニュークス!

(おわり)
https://m.youtube.com/watch?v=4DTFywl9qpY