先日、寝起きでスズメバチの女王と戦った私の元に新たなチャレンジャーが現れた。
その名は「ヒメイエアリ」
６月のこの時期になると活動が活発になるらしく、去年から家の中に出現するようになった。ヒメアリは野外で生活し、ヒメイエアリは人家の中に住むらしい。ウチの出現ポイントは洗面台の上が多い。私の勝手な憶測だけど、喉が渇いて水滴を飲みに来るんじゃないかと思う。悪名高いGも台所で鉢合わせた事があるのでそう思う。この小さな生物は人間では不可能なサイズの隙間から出入りして、壁の裏側に消えていくのを確認した。業者を呼ぶレベルのやつだ。そしてお金はないので却下だ。
対策について検索してみると「アリメツ」という薬がアリ特攻アビリティが付与される極絶一門な薬らしい事が分かった。早速ホームセンターに行ってみたが売ってない。オンラインショップにはあるのに店には無いというトリックプレイを食らった私は、仕方なく定番の「アリの巣コロリ」を買った。１つのキットの中にアルゼンチンアリやヒアリにも対応した顆粒タイプと、花の蜜を吸うアリに対応したジェルタイプがあって、この世の全てのアリを殺すために開発された設計思想を感じた。果たしてヒメイエアリに効果があるのだろうか、というか顆粒タイプを運べないのではないか？という疑問符を頭に浮かべつつ500円払って帰った。
クロアリと比べても明らかに小さいヒメイエアリが顆粒を運べるように、慈愛に満ち満ちた私は粒を粉に変える作業を開始した。新品状態のキットのフタを開けるとビニールの封がしてあり、このビニールの上からシャーペンでひたすら顆粒を潰した。意外と硬いうえに、粉が増えると風で飛ぶので窓は閉める必要があり、早くやろうと雑にやるとぶちまける恐れがある。その結果、キット２個分で１時間もかかった。アリを殺すため、食べやすい大きさに砕いてあげる作業について考えるには十分な時間だった。マッドサイエンティストそのままではないか。
ヒメイエアリの出現パターンは高温多湿な日の朝方〜日中が多いように思う。これも勝手な憶測だけど偵察隊は５〜６匹のグループ。統率が取れているのか、一気に現れ一気にいなくなる。（夜はあまり見かけないな）
幸いな事にマッドな作業後に出現してくれたので、すかさず２世帯住宅を２世帯設置した。ノロノロ歩いてるヒメイエアリのケツをシャーペンでつつき回し、３匹くらいを強制的にマッドハウスに入れた。
（こんな感じで出入口が多い）
結論から言うとヒメイエアリは顆粒タイプの毒には反応したが、ジェルタイプには全くと言っていいほど反応しなかった。10：０つくぐらい違うので私は驚いた。「アリの巣コロリ」のパッケージには小さいアリは蜜を吸うと書いてあったが、あの説明は何だったんだろう。潰した顆粒の上でヒャッホー！と喜んでくれるのは結構だが、ヒメイエアリ達はむしゃぶりついたままその場でじっとしてるだけで、ブラック企業大賞に輝いた赤井英和の会社のように運び出してはくれないではないか！
「ちょっと待ってくれよ。ジェルタイプを食べると思ったら食べないし、顆粒タイプも巣に運ばない。アース製薬さん、あなたは本当にアリを殺そうと思ってるんですか？」と疑問が湧き、サイトを確認する事にした。
するととんでもない事が分かった。
顆粒薬剤の粒よりも小さなアリにも効果がありますか？ | アリの巣コロリ／スーパーアリの巣コロリに関するよくあるご質問 | アース製薬株式会社 製品情報
社会胃持ってます宣言である。
牛とかヤギみたいにずっと草をすり潰してる反芻動物には幾つも胃があって、チーズみたいに発酵させて食べてるというのは聞いた事があるが、あの小さい身体の中に「社会胃」なんてものがあるというではないか！
獲物を取って食道の中に入れて、家に帰って子供達に分け与えるというのは、ペンギンとかオオカミもやる行動。アリは昆虫でありながらそれをやると言うのだ。そしてペンギンやオオカミと違って子どもを産むのは女王のみで、働きアリが個々で運ぶという事だ。
考えれば考えるほど、アリはとんでもない生物で、それを観察しながら遅効性の毒を食べさせている私は残虐に思えてくる。ハンター×ハンターのネテロ会長じゃないか。
（導入ホイホイのための撒き餌。潰した顆粒よりもなお小さいアナタ）
アリの社会性に衝撃を受けたが、アース製薬が本気のコロリ職人でなければ殲滅は成功しない。果たしてヒメイエアリとの同居生活に終止符は打たれるのだろうか。というか、潰す作業いらないならパッケージに書いておいてよ。泣
