モブトエキストラ

左利きのメモ魔が綴る名もなき日常

【らじおと】青木理さんの最終回

今週で『伊集院光とらじおと』が最終回を迎える。でも、曜日毎にスタッフさんは違うだろうからと早めに最終回向けのメールを送った。

幸い、新型コロナが重症化する事なく伊集院さんが復帰した。症状としては鼻詰まりと、喉のいがらっぽさがまだ残ってる感じ。以前から新型コロナに感染したらどうするかについては奥様と話していたので、家庭内でセパレートできたそう。伊集院さんの声がマイクから流れると、スタッフさん達も拍手していたみたい。

今日は青木理さんの出演が最終回だったので書き起こす事にした。

 

【書き起こし】

伊集院さん)コロナで家にいる間にテレビ点ければ戦争なんてすよ。気が滅入るようなニュースがずっと流れていて、いろんな疑問がある中で視聴者として思ったのは、この戦争についての冷静な解説とか、冷静なコメントをしてはいけない空気。
誤解のないように言っておくと、ロシアが悪いのは絶対です。ロシアが悪いのは絶対なんだけど、今自分達は冷静にどうすればいいのか、どう処理すべきなのか、収め方としてウクライナはどこまで譲れるのかを話そうとすると「それはプーチンの思い通りにさせる事だろ!」という反論が来そうで皆んな言わなくなっていく感じを僕は感じる。

青木理さん)大前提が難しいのは、今回のロシアの侵攻は明らかに国際法違反だし、近代の人類が積み上げてきた約束事を公然と破ったという意味で言うと「侵攻した側が得をしましたね」という終わり方を作ってはいけないのは事実。ただ一方で、何とかこれを止めなくちゃいけないという事で、トルコやイスラエルの仲介で停戦協議をやっているんですけど、究極的に考えるとロシアとウクライナでは何も決められない事はないけれど、最終的には決まらないわけですよね。ロシアが全く肯定できないにせよ、ウクライナに全面侵攻した口実の一つはウクライナ東部に居るロシア系住民を救う為の自衛だという事、それからNATOウクライナに入る事になると目の前まで西側の軍事同盟が来る。これをやめさせるんだという自衛。それが脅威だとすると、ウクライナはもちろんNATOに加盟するかどうか意思決定できるけど、最終的にはNATOが出ていかないといけないし、NATOって何かというとヨーロッパとアメリカの軍事同盟ですから、アメリカが出ていかないと決まらない。時間軸を伸ばして考えると、ロシアがやった事は絶対に許せないんだけど、本来は冷戦体制のソ連に対抗する軍事同盟が役割を終えたはずなのにボスニア・ヘルツェゴビナの内戦とか紛争とか、或いは中東の戦争があったから必要だよねと存置した。これは良いとしても、けっきょくどんどん東側に伸びていって、最後は旧ソ連圏の国までがNATOに入り、しかもウクライナジョージアNATOに入れようじゃないかと言ったのはブッシュ政権の時のアメリカなんですよね。大きく見ていくと、冷戦が終わった後、世界のコントロールアメリカが誤っているところもあるわけですよね。それが結果的にロシアの侵攻を起こさせてしまったところもある。歴史的にも空間的にも、アメリカが出て行ってロシアとキチンと話をしないと、中々今回の状況が終わる事にはならないんじゃないかという気がします。

伊集院さん)ウクライナとロシアで話し合って何とか普通のケンカで言うところの、プーチンのプライドを保ちながら拳を下げさせる事に努力するのが、ここで多少学んできた外交ってどうやらそういう事らしいっていう100%みたいな事や正義みたいな事とちょっと違う、プーチンが国内でメンツを潰されない形でどうにか戦争をやめさせるって形になる。その中で少しでも、暴力によって譲ったって事ができる事を仰った通り、ウクライナだけで飲む事ってできない状態ですよね。アメリカは兵力は送らないけれども、これは全世界の自由との戦いなんだからみたいな事を言っているけど、それはウクライナの為になるんですか?ってよく分からんのと、更にはプーチン戦争犯罪人だと。それは分かりますよ。ここでアメリカがそう言う事は拳を降ろさせる事と同じ方向を向くのかなって

青木さん)僕も同感です。言葉でそう言う事は一見すると勇ましいし、ある種気持ちが良いと言ったら語弊があるかもしれないけれど、バイデン大統領がどういうつもりでそういう事を言っているのか。国際的なメッセージを考えていると同時に、どうも国内向けの気配がする。例えば専門家がよく言ってるのはバイデン大統領が11日だったかな、一般教書演説を行なった時もそうだったし、ロシアが軍事侵攻するんじゃないかと盛んにアメリカが情報を出しながらちゃんとした外交はしないうえに、アメリカがかなり早い段階で軍事介入しないって言っちゃったんですよ。あれは恐らく国内世論向けの対策ですよね。アフガン戦争がずっと続いて、ようやく兵を引くとか、イラク戦争失敗だったって事でアメリカ国民世論がかなり戦争疲れしてる中で軍を出すって事が言い難い。言ったら損だという打算がああいう発言になった。あんな事を言う必要があったのだろうか。アメリカがむしろロシアの考えが誤る原因になったのではないかという事を含め、或いは伊集院さんが仰ったように「戦争犯罪人だ!」と言う事が今良いんだろうかって事がどうもアメリカって国から見えてこない。そんな勇ましい言葉を言ったりとか、国内向けのアピールするよりも、未だに世界最大の軍事強国であり、覇権国であるアメリカが今回の件を止める為に外交的に必死にやってるのかって状況が見えてこないのが苛立たしいところではありますよね
伊集院さん)今になってかよって思われるかもしれませんけど、クリミア半島ってとんでもない事だったなって気がするんです。
青木さん)伊集院さんだけでなく僕もそうなんですけど、日本という国が2014年のあの暴挙の時に北方領土交渉という事である意味、国際的な制裁にあまり加わらずにむしろ経済支援をロシアにしたわけですよね。その結果として、もし日本が独自の外交として、僕は好きな言葉ではないけど「国益だ!」って北方領土を返してもらう為だったら分かるんだけど、結果的には返してもらえず大失敗で終わっちゃった。ある意味でロシアがクリミア半島を併合した後の日本の対露外交がプーチン大統領を増長させたとまでは言えないにせよ間違っていた。あそこの重大性について捉えきれていなかった日本の我々の問題点はちゃんと考えなくちゃいけないと思うんですよね
伊集院さん)あとゾッとするのは、これだけの近代になって昔と違ってSNSもあってって事に我々は希望を持つじゃないですか? 持つけれども、この間の10万人集会みたいな所で高らかに自分達の「戦争」という言葉を使わず「軍事作戦」に関してはとにかく良い事をしている。正義なんだと堂々と立って喋るあの姿を見ていると、暗殺されるとは思っていないわけですよね。暗殺が良いって言ってるわけじゃないですよ。プーチンが怒号に包まれるなんて事は1ミリも思わないわけですよね。あれだけの大集会をやって。テレビ演説でもなく。どんどん言論封鎖されている状態を見ていて、僕はみんなが発信できる世の中は昔よりも進化して、独裁とか情報を止める事に対してかなり有効になっているんじゃないかと、この戦争の初期に思ったんですけどそんな風には見えない。

青木さん)これは人類が普遍的に学ぶべき事だと思うんです。伊集院さん仰るようにプーチンが出てきてZの旗を振って、数十万人集まったと報じられてますけど、戦争という究極の状況に置かれた時にメディアもそうですし、一般国民もそうですけど、それに対して反対するよりも熱狂する人が多いというのは実は80年前にこの国でも同じ事が起きてるわけですよ。つまり政治体制の左右関係なく、ある意味で人間の本質的なところがある。だからこそプーチン大統領が必死になってメディアを押さえつける。或いは反戦デモをしている国民を拘束する。逆に言うなら、独裁的であるほど市民の自由な意思表示や事実を伝えるメディアを怖がる。だから弾圧するわけですよね。それに熱狂する人もいると。さらに言うと健全なメディア、伊集院さんこの番組終えられますけど、こういう健全なメディア、或いはおかしなものにおかしいと言う。一色に染まらずにAという論点だけでなくBという論点もあるんじゃないかと、様々な意見が出る言論状況がおかしな戦争だったり、おかしな政治の防波堤になる事を改めて今回学ばされるところがある気がします。

伊集院さん)何より冷静である事。可哀想だとか、何か力になれないかと思う心は大切ですし僕も思います。だけども、それと同時に悪者のプーチンをみんなでやっつけようという事と別建てで、どうやって戦争を止めるのかをちゃんと考えて、ちゃんと喋れないとダメな気がするんです。

青木さん)そうですね。だから我々、メディアに関わっている人間は一番その責任を負うわけですが、おかしな事にはおかしいと言わなければならないし、今回ロシアでも女性のディレクターさんが国営放送で戦争反対 NO WARと出したりと、ああいう事をするメディア人だったりとか、もっと言えば市民が存在する事の大切さ。我々の責任はかなり重大だと言う事と、プーチンはもちろん悪者ですよ。確かに戦争犯罪人なんですが、これを止める為に何をするのか。こういう状況を受けて、力には力だ!敵基地攻撃能力だ!核共有だ!という事ではなく、むしろ外交で何とか止められないのかを考える。繰り返しますが、その為には基本的にはアメリカが出ていかないと今回の事態は収まらない。その気配が薄い事をすごく残念に思います

伊集院さん)この番組の中にニュースのコーナーがあるって事になって、これに関わる時に正直言って進んでやりたかった訳ではないです。だけどこのコーナーがある以上は知らなきゃいけない事とか、単なる人気の為に黙っている事は許されない事が幾つかあるんだろうという事や、無知を承知でどうなんですか?って訊かなきゃいけない。TBSで朝の番組をやるという事はニュースのコーナーもセットです。これが無い事は許されないと言われて引き受けた以上、その代わり少なくとも、ニュースのコーナーがあるっていう事は、ここだけに関しては日和れない事。笑えなくても喋るべき事があるんだと思ってやってきたつもりです。もちろん足らない事はいっぱいあったけど。それを僕はすごく青木さんに助けてもらって、色んな解説してくれる方に助けてもらって。青木さんも身を切って仰るので、ならば自分もとすごく思っていっぱい無知な事を言いましたけど

青木さん)いえいえ。まぁでも、オリンピックなんかも大勢が中々ものを言い難い中では伊集院さんと楽しくというか、色んな意見を発信できたと思うので。お疲れ様でしたというか、ありがとうございました。
伊集院さん)今週も時間いっぱいでした。青木理さんありがとうございました。

【ここまで】

 

他局の話になってしまうけど、J-WAVEのJamTheWorldが終了してしまって青木さんの話を定期的に聴けるのは月曜日の「らじおと」だけだったし、伊集院さんと青木さんはパンデミックの中で開催された東京オリンピックについても、中止なのか開催なのかという議論がいつの間にか観客ありか無しかに変わっていく様子をキチンと言葉にしていたし、高橋和夫さんだったり、前嶋和弘さんといった専門家の方々がニュース解説をしてくれる貴重な番組だった。

今日の放送を聴いていて、そういえば海外ロケの企画とかあったなぁとか歴史オタクの桐畑さんの企画あったなぁとか思い出した。ホームランなみちさんのお母様はたしか、タクシーの運転手をされていて、毎朝ゆうゆうワイドを聴いていて、そこから我が子の声が聞こえる事になって喜んでいたなんてエピソードもあったよね。

最終回くるの嫌だわ。