モブトエキストラ

左利きのメモ魔が綴る名もなき日常

【NNNドキュメント】THE 放射能 人間vs.放射線 科学はどこまで迫れるか?(2016-03-13 OA)


NNNドキュメント|日本テレビ
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福島第一原発事故は、推定90万テラベクレルという膨大な放射能を放出した。セシウムストロンチウムをはじめ、聞いた事もないテルルといった多様な核種が大地を汚染した。人も動物も昆虫も植物もその中で生きていかねばならない。「放射能」は、人や生態にどんな影響を与えるのか。100ミリ以下=低線量被ばくの健康への影響はあるのかないのか?科学者の間でも意見が真っ二つに分かれるのはなぜか?最先端の研究と映像で迫る。

東電原発事故が起きて5年が経過しました。現在もこの国は原子力非常事態宣言が発令されたままです。
3月のこの時期になると震災の特番が放映される回数が多くなりますが、地上波のテレビで放射能の被害について報じるメディアは少ないように思います。
先日、テレビ朝日報道ステーションが小児甲状腺ガンの特集を放送したことが話題になっていますが、今回のNNNドキュメントはそれと同じぐらいに内容の濃いものでした。
事故後に行われた様々な分野の調査結果を報じるものなので、メモしておきたいと思います。(安いモニターで見てたので残念な画質でお送りします。)

事故直後の詳細な放出データは存在しない


【ナレーション nona】
放射線は怖くない』
そう教えられていました。
第二次世界大戦後、アメリカは爆心地の近くで人間はどこまで戦えるのか人体実験をしていたのです。
その数、25万とも言われているアトミックソルジャー。
アメリカ政府は責任を認め兵士達に賠償をするまで40年かかりました。
また、チェルノブイリ原発事故で多発した子どもたちの甲状腺ガンが、放射能が原因だと認められるまで20年の歳月がかかりました。
5年前に起こった東電福島第一原発事故
100ミリシーベルト以下の低線量被ばくを受けた作業員達も病魔に襲われています。
原因は被ばくによるものという訴えが聞き届けられるまでにこの先どれほどの歳月がかかるのでしょうか?


例えば食品の上限である1kgあたり99Bqの食べ物を1kg食べると、私の体を1秒間に99本の放射線が貫きます。
一分間でおよそ6千本、1日で855万本。
体内に取り込まれたセシウムの生物学的な半減期は大人でおよそ70日
その間にガンマ線が細胞やDNAに傷をつけます。
また、α線β線は内部被ばくでより強烈な影響を与えるのです。
福島第一原発事故で放出された放射能は90万テラベクレルという途方もない数でした。

事故時の線量について

京都大学原子炉実験所助教
小出裕章氏の指摘
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チェルノブイリ原発事故の時は8000キロ離れているのに高濃度の放射性物質が飛んできて驚いたんですが、それと比べても遥かに高いものが台東区で検出されました。当時の私は計算を間違えて50倍過大評価をしていたのですが。
〈駒沢周辺でも別のチームが測定を行っていました〉

東京都立産業技術環境センター
バイオ応用技術グループ長
櫻井昇氏の指摘
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3月15日から上がり始めたので1時間感覚で測り始めました。15日の吸入摂取量は午前10時にピークを迎え、その時屋外にいた1100ベクレル吸い込んだことになります。
〈カットバック〉

小出裕章氏の指摘
高いところであれば空中を漂っていた放射性物質の値だけでも管理区域を上回っていたと思います。ごく普通の東京に住んでいる人たちが普段ではあり得ない被ばくをした。
問題はヨウ素はガラス繊維のフィルターを通り抜けてしまう成分なのです。ガラス繊維に付着する5倍のヨウ素はフィルターを通り抜けています。
当時の私はその計算をしていない。つまり、その5倍の放射性物質があったということになります。

【ナレーション】
テルル132の半減期は3日
β線ガンマ線を出してヨウ素132に改変します。(β崩壊ですね)

小児甲状腺ガンの増加について


北海道がんセンター 西尾正道氏の指摘
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3万人の患者のうち8割は小線限治療(ガンに線源を埋め込み放射線でガン細胞を殺す治療のこと。内部被ばくの原理)でした。同じ原理で体内にへばりついたら影響が大きいのです。
〈事故当初、マニュアルで定められていた測定ができなかった為に、正確な排出量や住民の被ばく線量の計算はまともにできなかった。全ては推定に頼らざるを得なくなった〉

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〈小児甲状腺ガンの検査で、一巡目と二巡目を合わせると116人が確定。
疑いがあるのは50人〉

岡山大学 津田敏秀氏の指摘
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子どもにおいて甲状腺ガンはほとんど起こりません。放射線被ばくを除いては。
そうすると、小児甲状腺ガンの症例分布自体が被ばく線量を表していると言えるわけです。例えば50人の患者が出たら49人は被ばくの影響と考えるべきです。
〈DNAを見ることで事故の影響であると証明できないのか?〉

東京大学先端科学技術研究センター
児玉龍彦氏の指摘

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チェルノブイリの場合は、すごくたくさんの放射線を浴びたことで子どもたちに二本鎖切断が起きました
しかし、福島の場合はそれよりも低い値と言われているので一塩基の変異が問題になる可能性が高いでしょう。ところが細胞は普通に分裂する時にも60億対ある一塩基のどこかに一ヶ所のミスが起こるので、どれが放射線被害で起きたものなのか判別するのは非常に難しいです。
〈カットバック〉

西尾正道氏の指摘
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子どもよりも細胞分裂が盛んなのは胎児です。それよりももっと盛んなのが受精卵です。
だから、そこに放射線が当たったら受精卵の場合は流産につながります。胎児の場合は奇形といった先天性の原因になってしまいます。

中川恵一氏の指摘
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福島の妊婦さんには全く問題ないですよ。奇形児の発生が上がる、どれだけ被ばくしたら中絶するかという数字は国際的に100ミリという事になってます。全く問題ありません。
〈カットバック〉

記者)→昔は妊娠初期のレントゲンはタブーとされる時代がありましたよね?
児玉氏)→今でもそうです(お茶飲みながら)

〈カットバック〉

記者)→もしお嬢さんが妊娠されてレントゲンを撮ると言ったときはOKって感じですか?
中川氏)→必要があれば。私の長女は生まれてすぐに肺炎を起こしましてね、レントゲンを撮るって言われた時に仕方がないと。
ただ、CTについては待ってくれと主治医の先生に言ったことがあります。
レントゲンとCTではぜんぜん被ばく量が違うから。


動植物の異変について

琉球大学 理学部准教授
大滝丈二氏の指摘
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思いの外、飼育実験で幼虫が死んでいったりサナギが出てこないとか。最初は信じられませんでした。
記者)→数ベクレルで個体に異常が出ることに私は驚いたのですが…
私もショックで、今でも「ホントかな?」って思うんですが、グラフ的に相関係数もありますし統計的にも優位なんですけど。
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チョウの場合、飛べないと餌にもありつけませんし交配もできないので、羽の異常は打撃が大きい。
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爆発直後の影響で遺伝子が傷ついて、それが数世代後にどんどん大きくなっていくということです。
記者)→その世代の7割に異常があるというのは私は驚いたのですが…
最初の実験でも7ヶ所でやってますし、どれも似たような傾向を示すわけで、そうするとこれは本当なのかなと考えざるを得ないです。

北海道大学 昆虫体系学研究室教授
秋山信一氏の指摘
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2012年に福島に行った時は全体的に昆虫の数が少ないことと、鳥の数も少ないという印象でした。
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卵が放射性物質の影響を受けていると考えています。そこから出てきた幼虫は体の一部にコブ状のものができていたり、関節にもう一本の足が出てきたりといった形態異常が2012年に見つかりました。
異常の原因については寄生者や化学物質など様々考えられますが、住民の方は避難されていて農業は行われておらず、化学物質が全く使われてないところで形態異常が見られた。消去法でしかないですが、放射性物質の影響は大きかったと判断しています。

〈現在、ワタムシの奇形は他の場所と差がなくなっている〉



渡辺嘉人氏の指摘
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大熊町原発に近いあたりにある9割のモミの木ですね。
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空間線量の高い場所で形態変化の発生頻度も高くなると。対応関係はありました。
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現時点ではどれだけの放射性物質に当たったのかということも調べられていないので、再現して調べる必要があります。

原発からの放出データがない〉

岡田啓司氏の指摘
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飼われている場所の放射線が高いエリアの牛ほど、血中のセシウムレベルが高い値でした。
あの当時ですと、牛自体が1万ベクレルという非常に高い値の汚染を受けているものがゴロゴロいました。
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チェルノブイリではツバメの白斑が問題になったことが問題となってます。
線量がうんと高いエリアの牛には確認されていませんが、3〜4マイクロ程度のところの牛で多発していて、病理学的に言うとメラニン色素がなくなっていることまではわかっています。なぜ無くなったのかについてはまだ分かっていません。
高等動物ほど遺伝子の修復能力は高くなるんです。被ばくの影響で遺伝子が傷ついても修復してしまいます。それが出始めたとしても1年半というのはタイミングとして早すぎるんですよね…どう見ても。
それが比較的、線量が低いところで多発している。被ばくの直接の影響ではないと診断している白斑ですが、今までの学問レベルで言うと現在の被ばくでは何も起こるはずがないんです。「何も起こらない」と言いきれないのではないかという雰囲気が漂ってる感じがします。

日本獣医生命科学大学教授
羽山伸一氏の指摘
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チェルノブイリの際に人間の子どもに見られたのは血球数の減少で、それが10年以上の時間をかけて回復してきています。恐らくそれが猿にも起こるのではないかと考えて血液検査を実施しました。
個体のセシウム蓄積レベルが高くなればなるほど白血球数が減少していく関係が見られました。
セシウムの蓄積濃度は直前に食べた餌の汚染レベルに関係するので、必ずしも被ばく量を表すものではありません。ですから、因果関係はむしろ出にくいのかなと思っています。
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白血球数というのは、一般的に子どものほうが大人よりも高い値を示すことが多いんです。ところが、福島の猿は子ども達のほうが大人よりも低い値になっていて、とりわけ2歳以下の小猿たちで大幅に下がっています。

東北大学准教授
中嶋正道氏の指摘
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全体的にヘモグロビン量が減っているのではないかと。検出されるセシウムの量が多いほどヘモグロビンの濃度が薄くなるという傾向です。人間にたとえれば貧血気味になるんですかね。


人間が被ばくするとどうなるのか?

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Aさんの証言
腎臓、心臓… 「臓」と付くものについては全て。
東電の社員の方が来て測ったら空間線量は400ミリあって退避命令が出ました。最初から線量計は鳴ってたし、あの作業は結局、意味のある被ばくだったんですかね?
そこが正されないのはおかしいので、世間に公表することにしました。

Bさんの証言
7〜10月に作業しました。その後に東電から健康診断を受けてくれと。
甲状腺胃カメラと大腸検査をやって、胃がん、大腸がんと白内障。胃は全摘出になっちゃってね…
あんな悲惨なところに命がけで行ったのに、どこの行政も「知らない」みたいなのが一番腹たちますね。

Cさんの証言
検査したら急性骨髄性白血病と診断が出たんですよ。骨髄の中の70%がガン細胞で溢れている。このまま放置したら確実に死にますと言われたんです。
歩いても動悸、咳は出るのに痰がでない。今までにない感覚でした。
5年生存率が3割しかないと診断を受けたので、「あぁ、ダメや俺…」っちゅう、死んでいく感覚がありました。

〈今までに8人が労災申請をしたが、認定されたのはCさんのみ〉


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ICRPは被ばくにしきい値のないモデルを採用しているが、日本の規定は曖昧だ〉

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厚生労働省文部科学省放射線医学研究所の見解。

専門家の意見も割れている〉

100ミリシーベルト以下の被ばくはどうなのか?

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津田敏秀氏の見解
低線量でも累積モデル、つまり積算で測るということですね。
それから、その線量レベルは100ミリシーベルトどころか、今のところ1ミリシーベルトごとに分かっている。
「100ミリシーベルト以下はガンが出ない、或いは出たとしても分からない」という日本の中で流布しているのは完全に風説なんですね。根拠に基づかない。

京都大学原子炉実験所助教
今中哲二氏の見解

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「100ミリ以下では影響は観察されていません」と言う先生方はたくさんいますよ。
ところが、それが政治家やお役人になると「100ミリ以下は影響ありません」に化けちゃうんです。観察されていないことと、影響がないのというのは全然違う話ですよね。

大阪大学医学系研究科 医学専攻 教授
祖父江友孝氏の見解

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分かっていることはそんなに大きな影響ではないということですね。これは明らかですよね。
タバコとかお酒とかウィルスといった発ガン要因に比べたら、100ミリシーベルト以下の放射線は非常に小さな影響であると。これはみんな共通の認識があると思いますよ。専門家の間で。

長崎大学名誉教授
長瀧重信氏の見解
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低線量は100ミリシーベルト以下と呼ばれていますけど、100ミリシーベルトというのは日本の原爆被害者の方に協力して頂いて、これしかないような調査結果がある。
100ミリシーベルト以上は明らかにガンが増える。それ以外は他の生活環境の要因に紛れてしまって分からない。

中川恵一氏の見解
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確かに放射線はある程度になるとガンを増やすけども、100ミリ以下になると…
まぁ、ガンを増やすかもしれませんが、しかし、日常生活の様々な生活習慣にかき消されて増えたかどうか分からない。
逆に言うと、皆さんが心配されているほど影響はないということなんですね。怖いから避難するという事によって、別の発ガンリスクを背負いこむことになるんですね。

島薗進氏の見解
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日本は唯一の被爆国ということもあって、チェルノブイリの事故が起きた時に世界の原発推進側は日本のその領域(推進派)の科学者をですね、被害の過小評価のほうの科学的情報の発信に組み入れるという大きなうごきがあった事が見えてくるんです。

【ナレーション】
低線量長期被ばくの影響について、専門家の意見が割れていることで福島だけでなく、日本の社会に大きな混乱が生じています。
放射線の過小評価は「第二の安全神話」につながりかねません。
こうした中、政府は居住制限区域への帰還を進める閣議決定を行いました。

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〈カットバック〉

長瀧氏の指摘
本当に被災者の為になっているのか。そういう考え方を、もう5年目ですから積極的に持っていかなければいけない。被災者全体として被害を少なくするという感覚ですね。放射線のではなく、放射線を含めた全体の被害を考えるべきだと。
子どもが怖いからなんとなく避難させる。或いは、ずっと検査をすることが本当に子どもの為になっているのかと。病気が起こる可能性と、それだけ検査を続けることの精神的な被害を比較した場合にね。
そういう、社会的な心理学的な分も含めて被災者の被害を最小にするための対策はなんだろうという視線からの議論が必要だと思います。

〈カットバック〉

島薗氏の指摘
「心配することがよくない。不安を持つことがよくない。その影響のほうが低線量被ばくの影響よりも懸念すべきだ」という考え方がある。
「低線量ではたいした健康影響はない」というニュアンスで科学情報を広めることに相当なエネルギーを注いできたと。

【ナレーション】
〈低線量でも労災と認められた人がいました。原発作業員には被ばくの記録が残っています。
一方、事故直後の放射能測定は十分に行われませんでした。
私たちは誰一人、自分の被ばく線量を知りません。
将来、もしガンになる人が増えてもあの時の放射能が原因だと証明することはできないのです。ただの一人も〉


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日本はあまりにも見識がなさすぎる。酷すぎるこれは。静かなる殺人ですよ。
西尾氏の指摘が最後に流れて番組は終わりました。書き起こしは以上で終わりです。
「残念な画質じゃ分からないじゃないか!」という方はHuluにアーカイブがあるので、自分の目で確かめてみて下さい。


日テレは原発を持ち込んだ正力松太郎のテレビ局なので、どうせ安全PRに着地するのだろうと私は思っていましたが、基本的な説明から賛否両論の構成まで含めてとても素晴らしい内容だったと思います。
NHKでやっていた「被ばくの森」の作り方が下手だったので、何倍もましに思います。
欲を言えば深夜ではなく、それこそ夜9時とかに放送してほしかったです。

まぁ、そういう意味を含めてより多くの人が知るべき問題なので、書き起こしたんですけども。
事故前には戻れませんし、全ての国民は知る権利があると私は思います。