モブトエキストラ

左利きのメモ魔が綴る名もなき日常

子供達が世界を変える物語

昨夜の『チ。ー地球の運動についてー』は展開が凄すぎて見終わった後にうまく言葉にできなかったんだけど、山口一郎さんの「丘の上で星を見ると感じるこの寂しさも、朝焼けで手が染まる頃にはもう忘れてるんだ。」という歌詞の秀逸さにやられてしまった。
とくに「死ぬ」じゃなくて「忘れる」という光り輝くワードセンス堪らん。

物理的に地動説はこの世の全て。
とある父親にとって男手ひとつで育てた娘もまたこの世の全て。
その二つが成り立った時、娘は自分の存在をかけて地動説を生かそうとし、父は自分の存在をかけて地動説を殺そうとした。
ヨレンタの意思を紡ごうとするドゥラカを
ノヴァクは否定し、結果的に二人は刺し違えた。
神を信じるはずのノヴァクの前に現れたのは神でも、ヨレンタでもなく、人生が狂うきっかけとなったラファウの幻だった。

かつてバデーニがラファウの遺したメモを見た時に不完全で幼さがあると印象を語っていた。ノヴァクもまた勇気と覚悟で突き進むドゥラカを子供の発想であると切り捨てた。
しかし、相反する主義主張が対立したとしても、同じ時代に生まれて歴史を紡いだ仲間であると思っているというラファウの言葉に心を打たれる。
最終回を目前に子供たちが世界を変える物語なのだと改めて気付かされた。

ノヴァクはヨレンタが子供の頃に発注ミスで大人用の手袋を買ってしまった過去がある。結果的にその手袋は娘の形見となり、肌身離さず持ち歩いていた。ラファウとの対話の後、最後に自分がやるべき事として、爆発で吹き飛んだ女性リーダーの手を娘の手袋にはめてみると、サイズはぴったりで、悪いのは自分であって娘は何も悪い事はしていない。どうか娘を天国に迎えて欲しいと神に祈った。

他方、ドゥラカが最後にやるべき事はヨレンタに頼まれた手紙を伝書鳩に託す事だった。
降り注ぐ朝の光を毛嫌いしていたドゥラカは、いつかその光を心地良いと思えた記憶の中で生涯を閉じた。心臓が止まる最後まで切なかった。


ドゥラカの物語が終わり、次週はパン屋で働くアルベルトの物語が幕を開ける。