経済と平和
経済学者の水野和夫さんが紹介する名著はブローデル著「地中海」
フェルナン・ブローデル(Fernand Braudel、1902年8月24日 - 1985年11月27日)はフランスの歴史学者。経済状態や地理的条件が世界史において果たす役割に注目し、20世紀の歴史学に大変革を起こした。
当時は第一次世界大戦の真っ只中で、フローデルは捕虜生活の中で執筆活動を始めたそうです。驚きですね。
「地中海」は大きく分けると以下の3部構成で構成されているそうです。
重要視する順番は「地理>社会>個人」の順で、ブローデルの考察は風が吹く方角とその影響から始まって、人々がどのような営みをし、また、その中で個人がどう行動をするのかという、事細かに理論を構築していると解説がありました。
なぜ、ブローデルが地中海を取り上げたのかといえば当時の世界の中心が地中海だったからだそうです。
一体、地中海でどんな闇のゲームが行われたというのでしょうか?
当時の地中海は、インドからタダ同然でゴマを仕入れて、持って帰ってきたゴマを高い値段で貴族に売るという、オーソドックスな商業資本主義で栄えていたそうです。(たしか、コショウもそうですよね)
金や銀を持ち歩くと移送中に盗賊に奪われるリスクが高いので、資本家たちは手形を発行するようになりました。これにより金融取引に革命が起こります。
この影響を受けたのは西洋文明だけではなく、日本にも影響を与えたと江戸学者である田中優子さんが解説していました。
私は世界史に詳しくないので、当時のスペインと日本の関係の補足としてこちらをご覧ください
ブローデルは歴史入門の中でこのような言葉を残しています。
資本主義、それは大ざっぱに言えば普通ほとんど利他的なものではない目的の為に行われる、資本投入という絶えざる賭けのありようそのものに他ならない。
資本家は植民地とした南米から船で銀を運び、対等な関係であったはずの生産者と消費者の間に格差を作り出します。
それが不公平な交換であることは明らかである。この莫大な利益から資本蓄積が生じる。
そして、一国の王に戦争資金を貸すことで、新たな植民地を手に入れる。
この経済資本主義の繁栄により、貧困と戦争が世界に広がって現在へと続いているのです。
いかなる疑いの余地もなく、すべては二極化する傾向がある。
豊かで、たくましい貴族階級と、ますます数が多くなる貧乏人、極貧者
〈深い割れ目〉が古くからある社会を二つに分け、そこに深い溝を掘る。この溝を埋めるものは何もない。
やがて、貧乏人の問題は国家やヨーロッパの次元へと達するのだ。
資源に対して人口が増えすぎ、人口の増大に見合う経済発展がもはやないヨーロッパ全土において、またトルコにおいても、日々のパンの必要性に苦しめられているかなり大量の人間の貧困化が進んでいる。
「現在の日本とよく似てますね」と伊集院さんも言っていました。
搾取する側が変わらず存在し続けることに対して、田中さんは植民地主義的な考え方を乗り越えることが必要だと主張しました。
そして、水野さんの平和論はこちら
資本主義の理念とは間逆の寛容な社会が必要だと述べてました。
つまり、その世界は戦争の起こりにくい社会であるともいえますね。
資本主義の害悪に立ち向かう人たちに対して、政治家や経済学者は、こう答える。
それはまだましなもの、自由企業と市場経済のためにはやむを得ない裏面にすぎない、と。
私は決してそうは思わない。 フェルナン・ブローデル
捕虜という弱い立場に置かれたことで、説得力が増したのではないでしょうか。