モブトエキストラ

左利きのメモ魔が綴る名もなき日常

100de名著 小泉八雲 KWIDANの感想

テーマ


  1. 信頼
  2. 約束
  3. 共感
  4. 不条理

最終回となる今回は怪談に焦点を当てて紹介されていた。
テーマだけ見ると新しい冒険に出かける新作RPGの話みたいに見えるが、これが小泉八雲のテーマであり、毎晩妻の節子に怪談をねだって紡ぎ上げた成果だという。
番組の中で紹介されたのは以下の3話。

「水飴を買う女」
→水飴を買いに通う女がいて、一言も喋らないので主人が気になり跡をつける。
すると女はいきなり姿を消した。
そこには墓があり、中から赤ん坊の声が聞こえてきたので墓を掘り返してみると、赤ん坊と水飴があったという。

「子捨ての話」
→子供を育てる余裕のない貧しい夫婦がいて、子供ができるたびに川に流していた(桃太郎じゃないよ)
生活ができるようになって、子供を育て始めた頃、夫が夜空を見上げて「綺麗な月じゃのう」と赤ん坊に語りかけると、「ワシは殺さんでくれよ」と大人の口調で答えたきり、再び赤ん坊に戻った。
夫は僧侶になった。

「青柳物語」
→青年が道に迷い藁葺き屋根の家を訪ねると、中には老夫婦と青柳という名の美少女ヒロインが住んでいた。
青年は雷に打たれたようにハートを鷲掴みにされ「嫁にくれぇ」と懇願。
老夫婦は快く承諾し、青年は京に青柳を連れ帰る。
5年たったある日、青柳が不思議ちゃんだったことが発覚。

青柳「私はもうすぐ死にます」
青年「何言ってんだ?」
青柳「私は気の精です。誰かが私の木を切ろうとしているのです。お別れです」

青柳は消失。

その後、青年は仏門に入り、全国を路線バスの旅で回った。
そして、青柳の実家を見に行くと家は無く、切り株が三本あるだけでした。チャンチャン♪

朗読は佐野史郎で、読み終えた時の演技で最後にメガネを触るとこが良かった。

話の内容としてはどこかで聞いたことのあるものが多く、現代に語られる怖い話のルーツは小泉八雲だということが分かる。
とくに子捨ての話はよく見聞きするパターンで、邪魔になった子供を殺して親は新しいパートナーと新しい人生を始め、その間にできた子供が「次は殺さないでね」なんて言うのがあったりする。
面白いのは話の流れは同じだとしても、その時代を反映させた理由で子供を殺すところ。
私が例として挙げたのは「子供が邪魔になったから」というものであるが、現代の格差社会を踏まえた場合、小泉八雲の原作と近い話になるはずだ。
時代が変わっても人間が抱く普遍的な価値観がある限り、遜色なく存在し続けるのだろう。

幽霊を信じる、信じないは別として、文学的に捉えると必ずストーリーのどこかに悲しみの要素がある。
その悲しみに対して生きている人間がどのように行動するかで、その時代に語られる怪談のエンディングが変わるように思った。