IQと10をかけてますよね?
いつしかCDのベストアルバムしか買わなくなった私にとって、ミステリー小説のベスト版という見出しは「ホイホイ」に違いないのです。そのうえ好きな色が青とオレンジなので、表紙に対する印象も良い。
しかしながら、一つ問題がありました。
私は作家の名前をほとんどしらんがなです。かろうじて認知しているのは「一色さゆり」という名前のみ。本を読むたびに無知の知を思い知らされます。
感想と共に死亡者数も明記してみたいと思います。これは被害者数と面白さは比例するのかという観点です。
分からないところはX人としておきます。
著 海堂尊 「虹の飴」0人
評論家と素人二人(サラリーマンと子ども)を含んだ3人で「虹の飴」の品評をして、そのうち二人が美味しいといったら商品化するという話。
空咳をしながらサラリーマンが途中で席を立って、評論家も首を縦には降らない。子どもだけが美味しいと言ったが、商品化は見送られる。最後に虹の飴に関する問い合わせ電話がかかってきて、空咳が聞こえるというオチ。
なぜサラリーマンは嘘をついたのか?という謎が残りますけど、他の商社マンだったとか…?
著 中山七里「最後の容疑者」1人
これがミステリー小説か!と思うぐらいドストレートの球を読者に投げております。
ウェルニッケ脳症により犯人は犯行を覚えてないということで、責任能力を問われると考えるとバッドエンドなのではと。
著 乾緑郎「抜け忍サドンデス」6人
この本の中で 一番死にました笑
スピード感があって通り魔的にバタバタ死んでいきます。裏切りの連鎖です。
著 降田天「初天神」0人
人情落語100%
著 喜多喜久「父のスピーチ」1人
ノーベル化学賞で見かける学者の静かな情熱がテーマになっていて、舞台は娘の結婚式というドラマティックなシーン。
この作品は面白かったです。
著 深町秋生「なんでもあり」0人
総合格闘技を題材にした小説。
読んでいるうちに『なんでもあり』というルールだと、目的を達成する手段がどんなに汚い行為であってもピュアなのかもしれないと考えてしまいました。
著 城山真一「境界線」0人
会社の金に手をつけた男の話。
男は短期間に収益を上げることに慣れていて、短期間な損益は簡単に取り戻せると考えていた。金銭感覚がズレた人間が日常に戻るのはきっと難しいんでしょうね。
著 森川楓子「今ひとたび」4人
自分の子供が加害者に殺された4人のうちの1人と思わせといて、実は加害者が自分の生き別れた子供という素晴らしいどんでん返し。
これはどんでん返されますわぁ。
著 七尾与史「全裸刑事チャーリー」1人
タイトルからしてギャグ要素の匂いがプンプンする作品。
その期待を裏切ることなく、死体の上で全裸の刑事が覆いかぶさるシーンが…
オチについては予想がついてしまった。
ちょうど、この間の情熱大陸で靴下を忘れたピアニストが、マジックで足首を黒く塗りつぶしていたのを思い出した。
著 加藤鉄児「五十六」1人
熟年夫婦の最期の時間が描かれている。
口の悪い夫婦はお互いにしか分からないやりとりをしていて、こういう夫婦もきっといるんだろうなと思った。
私は俳句や短歌に疎いんですけど、短歌を引用する作品が増えている気がしませんか?
「ちはやふる」とか「君の名は。」とか「おーいお茶」とか。(三段落ち)
著 ハセベバクシンオー「転落」0人
起承転結の中に錯覚を用いた上手な文章構成。
これはミステリーの書き方のお手本になる作品だと思いました。
ただ、最期の文章を書いているのは母親の主観なので死んではいないと理解していいのでしょうか。
著 高橋由太「オサキ油揚げ泥棒になる」0人
マンガ日本昔話でありそうな話。
そして話の内容は捏造記事で油揚げのセールスが伸びるという電通オチ。(電通オチって何だそれ)
著 越谷友華「刑法第四五条」0人
出所した窃盗犯が憲法第四五条を利用して減刑を企むという法務家が楽しめる内容です。
法のあり方を考える場合の例題になりうる話に思いました。
著 伽古谷圭市「記念日」1人
とある男のモノローグ。スピード感のある展開は面白いです。
古畑任三郎で桃井かおりが出た回で、頭の上にバケツを乗せた人間がどーのこーのという話があって、そのまま内容が分からないまま話が終わるんですけどね、それに似た感じで『門柱の上に豆腐を置き続けるおじいさん』が出てくるんですよ。
その問題を出していた妻がいなくなる。
なぜモノローグなのかといえば、妻はリンゴの木の下で…みたいな。
あとを引く面白さです。
著 上甲宣之「防犯心理テスト」X人
話が心理テストから始まるのは独特だなぁと感じました。そのまま構成も面白かったんですけど、犯人が小4の女子なのが腑に落ちないというか何というか。
死んだフリして自分を無視する人間を殺していたみたいなんですけど、大人と子供ですか身長差がありますよね。
だから致命傷にはならないんじゃないかなぁと。
著 一色さゆり「花子の生首」0人
監視員として勤務することになった美術館には、主人公に似た顔の彫刻が死に顔を浮かべている。花子という名の彫刻と毎日30分間も顔を突き合わせているうちに、主人公は精神不安定になっていくという話。
ミステリー要素はないです。
ラストの「死からは逃げられないのだ」って一言があるんですけど、花子はレプリカにすり替えられていて無事なんですよ。つまり、逃げてるわけで…。
『えっ、どういうこと?』ってなりました。てへぺろ。
著 矢樹純「ずっと、欲しかった女の子」0人
唐突なクライマックスに思わず固まってしまいました。
教育熱心な母親と思いきや、女の子が欲しかったから生まれてきた男の子のペニスを千切るという山姥ぶり。
なんちゅうことをするんだ笑と思ったのと、子供の戸籍が引っかかりました。
著 法坂一広「新手のセールストーク」0人
マルチ商法の被害者が依頼人の弁護士の話です。消防士のマッチポンプを弁護士版にした感じのオチでした。
著 柊サナカ「靴磨きジャンの四角い永遠」2人
この話は面白かったです。
昔のパリの街中で靴磨きをしている青年ジャンが主人公で、身分社会の世界の中を颯爽とかけて行く貴族の馬車を横目に毎日靴を磨いてるんです。
そんな彼にも一人の常連客がいて、ある日「君の存在は一生語り継がれる」と言い放つ。
そこから舞台は現世の写真教室に移り、昔のパリのタンブル大通りを写したダゲレオタイプのカメラの写真が紹介される。
物体が焼付くまでに時間がかかるので可動物の姿は写真に写っていないけど、そこにはジャンとおっさんの姿が写ってるんですよ。
ろまんてっくな話やでぇ〜
調べてみたら作者の柊サナカさんはカメラが好きな方みたいで、それを題材に小説にするの上手いなぁと思いました。
面白かったです。
著 深津十一「稀有なる食材」0人
絶滅危惧種の生物を食べ漁る人々が描かれていて、〈クニマスの塩焼き〉という言葉を見た瞬間にハコフグの帽子を投げ捨ててパーティー会場の人間を片っ端からぶん殴るさかなくんを想像してしまいました。
宇宙人を食べるというラスト。
この発想は私にはないですね。
ドクタースランプのがっちゃんぐらいしか思いつきません。(あっ、これは食べる側か)
著 拓未司「澄み渡る青空」1人
物語の冒頭では自殺願望に取り憑かれた男が繰り返し悪夢を見ていた。それが後半になると元妻に対する復讐に変わるんですけど、自殺願望が他者への殺意に変わる心の変化がイマイチ分からないです。
妻に逃げられたことで笑い者になって殺意が沸くことは理解できますけど、自殺願望も同居してることが個人的に納得できないんです。相手を殺す強い殺意って自分が生きていてこそできる行為ですからね。ちょっと、私には理解が難しいです。
著 才羽楽「ロケット花火」0人
いじめっ子達に目をつけられた親友が学校に来なくなったので、タバコとロケット花火を利用していじめっ子達を退学に追い込もうとする知能犯。
最後は百日草の花言葉で終わっていて、「決まった感」が清々しかったです。
著 天田式「ほおずき」0人
鬼灯にナスの根を移植するのは本当にできるものなのか?
植物大好きっ子の接ぎ木テクが光る、人種差別や偏見を表現した落語っぽい話。
著 篠原昌裕「最低の男」0人
自分の欲求を満たすために女を利用する男の話。
主人公は捨てられた女の子供で、母親をぞんざいに扱った自らの父親に復讐するというドロドロ系小説。
著 伊園旬「眺望コンサルタント」0人
ミステリー小説を読まないので分からないんですけど、オチが囮捜査の作品って多いんですかね。
囮捜査って犯人にばれてはいけないから、文字にしても不自然な点がないようにしないといけないんですよね。頭がよくないと書けない話に思います。
著 八木圭一「"けあらし"に潜む殺意」1人+X人
モンハンのクエストにありそうなタイトルだなぁと思いつつ、読んでみると船越英一郎が出ていそうなサスペンス。
著 山下貴光「オー・マイ・ゴッド」2人
神というか新人類と捉えるほうが自然に思います。未来的な作品です。
著 塔山郁「獲物」1人+X人
DVパパが更生して、娘を使って獲物をおびき寄せて殺す殺人鬼に変貌する話。
私の中では主役を津田寛治で脳内再生してました。殺人鬼は古田新太でお願いします。(誰にだよ!)
著 枝松蛍「器物破損」猫X匹
猫好きを完全に敵に回すストーリーでございます。
著 水田美意子「七月七日に逢いましょう」0人
頭のキレるバーテンダーが暗号文を解読する話。
その女性が男性に暗号文で伝言してる時点で伝える気が無いのでは?とバッドエンドを想像してしまいました。
著 新藤卓広「走馬灯」2人?
自殺の最中に男が走馬灯を見て、その中で自分が死のうと思ったキッカケに勘違いがあることが分かるという話。
例えば「世にも奇妙な物語」で実写化してもいいのでは?と思いました。
著 大津光央「満腹亭の謎解きお弁当は今日もホカホカなのよね」0人
全裸刑事チャーリーと同じぐらいぶっ飛んでいる話です。
正直なところよく分かりませんでした笑
著 高山聖史 「お届けモノ」0人
ある日、大きな発泡スチロールの箱が家に送られてくるところから物語が始まる。
実はこの箱の送り主は夫の不倫相手の父親で、起伏の激しい我が娘が他人を殺害or殺害された場合に箱に入れて送ってくれという意味のものだったという突飛な話。
〈着払いでいいから〉が一言ネタっぽくて面白かったです。
著 神さまと姫さま 「太朗想史郎」1人+X人(生け贄)
原始的なシステムの国を現代に放り込むような話でした。
「そんなバカな」と一瞬思いましたが、たぶん、こういう国はまだ地球上にあるのでフィクションじゃないんじゃないかと…
著 影山匙「脱走者の行方」0人
死刑執行人の心的負担を題材にした作品。
刑務所から脱走した男の正体が分かるまでの話や会話が自然なので読みやすかったです。こういうの好きですわ。
著 水原秀策「部屋と手錠と私」0人
素行の悪いアシスタントを作者自らがイジメる話。
著 中村啓「微笑む女」X人
3Dプリンターを使った話。
女性を監禁してるのか、それとも3Dプリンターで作った人形と彼女ごっこしてるのか、或いはもう女性は殺されているのかが分かりにくかったです。
著 山本巧次「その朝のアリバイは」1人
職場の同僚に手伝ってもらい朝の駅で殺人を行う男の話。時間の殺人で電車が止まるという墓穴ルート。
著 柳原慧「電話ボックス」1人+X人(津波の死者数)
津波で亡くなった恋人と通話できる不思議な電話ボックスの話です。
この話に関してはドキッとしてしまいました。というのも、311前に夢で電話の墓場を見てるんです。その風景と似た世界観が広がっていたので印象に残りました。
著 堀内公太郎「ゆうしゃのゆううつ」0人
駐車禁止の「ち」が隠れていて、「ゆうしゃきんし」というオチなのですけど、駐車禁止をひらがなで書きますかね?
それが引っかかってしまって、ほのぼのとしたラストシーンで苦々しい顔をしてしまいました。
著 梶永正史「最期の客」2人
定年ドライバーによるシックスセンスオチ。唐突なんだもの。
著 桂修司「死を呼ぶ勲章」2人
最初は不自然な死を遂げたロシア人の
の話だったのが、物語が進むとチェルノブイリの地下で燃料デブリを見つけた男の話になっていった。
日ごろから東電の会見をチェックしてる私としては、この変化球に引き込まれました。
ただ、高線量のデブリが封筒に入っていたら手が火傷するはずなので、その描写があったらカッコよく決まったと思いました。でも、面白いです。
著 佐藤青南「世界からあなたの笑顔が消えた日」1人
「相貌失認」をテーマにした作品。
構成も上手くて終わり方も綺麗です。
ただ、一つ指摘するとしたら、医者が患者の顔を忘れてしまうのは致命的なのではと。
著 神家正成「誰何と星」0人
ミリタリー小説。浅田次郎作品が好きな方は楽しめるかも。
私には何のことやらさっぱり分からぬ。
著 岡崎琢磨「葉桜のタイムカプセル」1人
タイムカプセルという言葉だけでセンチメンタルな世界へ引きずり込んでくれます。この期待は裏切らず「幼少期の親友が病に侵されて死別する」という設定が加わります。(せ、せつねぇ…)
あの子はきっと運命を受け入れてたのだと理解していた主人公が、本当は「もしかしたら治るかも!」という無垢な思いを持っていたことに気づいて、親友がタイムカプセルにいれたハンカチで涙を拭う。
ショートフィルムにできそうですけど、そんなことしたら涙腺が緩い中高年の方はむせび泣くでしょうね。
ゔぐっ、へぐっ、ぐふっ…みたいな。
著 友井羊「柿」2人
とある老夫婦の最期の時間。
昔の略奪愛を選んでいたら今頃、どんな人生を歩んでいただろうかと妻が想っていたら…と考えてしまう夫。
多分、柿と鳥は略奪愛の隠喩で、落ちた柿がそのまま残っていることは夫への愛を表していると思いました。文学的な作品です。
著 辻堂ゆめ「茶色ではない色」0人
この本の中で一番感動したかもしれません。今流行りの「VR」を題材に使っている作品で、初代機は視力に悪影響を及ぼしたから最新機は脳波を感知するシステムを採用して目をつむってできるようにしたという設定。
主人公は最新機の開発者で、ユーザーとの体験会の一幕が描かれています。
オチは体験会に参加していた少女は実は目が見えなかったというもので、感動してしまって3回ぐらい読み返しました。
製作者としてはユーザーの目に負担をかけないようにしないといけないという前提があって、結果的に目が見えない少女が仮想現実の中で初めて見る色や風景に涙するところが良いんです。(ジョン・カビラかよ)
おすすめです。
著 増田俊也「恋のブランド」0人
鯉と恋をかけた。それ以上でも以下でもない金ヅル老人の話。
著 安生正「特約条項 第三条」1人+X(爆発だから分からない)
スナイパーが麻薬組織のボスを狙う話。
突き出た腹、顔の下半分を覆うヒゲ、生え際が後退した額、間違いない、将軍だ。
この文章で笑いました。
しかもこのあと、ワガママバディに信号弾がめり込むように撃たれます。
ひどい話です笑
著 柚月裕子「サクラ・サクラ」X人(物語の中では0人 大戦の死者数は不明)
夏休みの休暇でペリリュー島を訪れた青年が現地の爺ちゃんから話を聞いて、遠くない過去に想いを馳せる話。
私は以前にNHKスペシャル | 狂気の戦場 ペリリュー~"忘れられた島"の記録~を見ているので、なかなか美談として捉えることはできませんでした。
精神をおかしくした兵士は奇声を発するから殺されますし、人間を壊さないと生き残れない地獄のような世界ですからね。
おわりに 〜35人死亡〜
久しぶりにショートショートを読んだ気がします。読み始める前はテンポよく読み進めると思ったのですが、作品ごとに物語の設定が違うからチャンネルを合わせることにだんだん疲れてきました。
さらに「ミステリー」ということもあり、自分なりにオチを考えながら読むからよけいに疲れてしまいました。
結果的に50編の話の中で最低でも35人が死にました。ご愁傷様です。
ミステリー小説の面白さは死者数と比例するかと言うと、必ずしもそうではなくて死者数=伏線の数と考えたほうが分かりやすいと感じました。
ショートショートの中で起承転結をつけるのは難しいので、死ななくても面白い話はできるんだなぁというのは勉強になりました。
10分間ミステリー THE BEST (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
- 作者: 『このミステリーがすごい!』大賞編集部
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