モブトエキストラ

左利きのメモ魔が綴る名もなき日常

「舞台」の感想

主人公がゲスキャラすぎて…

 
本の装丁が鮮やかで目を引いた。
「地下の鳩」に続いて今回も西加奈子作品をチョイス。
面白いドタバタコメディを予想していたが、少しかすりつつ明後日のほうへ吹っ飛んでいった。
端的に言うと主人公の葉太が小説家の父の死をきっかにニューヨークを彷徨い歩く話だ。
ただ、この主人公に全く感情移入ができなくて、私はとても面白くなかった。
 
有名な作家が父親である為にコンプレックスを抱いているという設定は理解ができるし、田舎出身のくせに気取っている父親を見てバカにしたい気持ちも分かる。
しかしながら、葉太の性格はかなり歪んでいて「調子に乗るとバチが当たる」という『信仰心(染み付いた思想という意味であえて信仰心と表現しておこう)』を持っていて、バチが当たった奴=悪者=ザマァみろ!という等式が成り立っているんです。
この性質がネトウヨに近いと感じてしまって、私は感情移入ができませんでした。
冒頭のほうでこの信仰心を表す一文が書かれているので引用します。
京都人が人を家に呼び、もてなした後、「ぶぶ漬けいかがどす」と言ったら、「もう帰ってくれ」の意思表示であるらしい。そんなことを知らず、「ぶぶ漬けって何ですか、ああ、お茶漬け。嬉しいなぁ、いただきます。」などと言えば、京都の人間から、あいつは図々しい馬鹿だと、レッテルを貼られるのだ。その話を聞いたとき、なんて恐ろしいシステムなのだと、葉太は震え上がったものだった。

もともと、葉太の性格が歪んでいたわけではなくて親に対する後天的なコンプレックスと、この初見殺しの社会システムが原因でネトウヨマインドになってしまった事が伺えますね。

葉太の事は嫌いですが、「空気を読む」という無言の多数決に従うと、性格が歪んでしまうという反面教師として捉えたいです。
 
問題は「なぜ自分がやられて嫌なことを人にするのか」という当たり前の話です。笑
父親に軽蔑の眼差しで見られたとして、なぜ同じように他人を簡単に軽蔑するのか一切触れられていません。
また、気に入らないとすぐに舌打ちをする所も嫌いですね。舌打ちは相手に対する威嚇行為だと私は思っているので、葉太は主人公ではなくです←
 
こんな葉太が初日に置き引きに遭い、貴重品を失うというストーリー。
この恥を隠す為のやせ我慢のRPGが続く感じです。
 
あとは、父親というコンプレックスを可視化できるように「亡霊が見える」という設定になっているのはどうなのでしょう。
自分は亡霊が見えると言っているのに、街角の占い師の事は馬鹿にしていたり。
うーん。感情移入の隙間がないんですよねぇ。
 
あと、西さんがやたら「射精」という言葉を使いたがるのはなぜなのでしょうか。
何かこだわりがあるように思うのですが分からない←読解力不足