モブトエキストラ

左利きのメモ魔が綴る名もなき日常

【100de名著】第二回「永遠平和のために」

名著57 永遠平和のために:100分 de 名著

世界統一国家への統合は、異なる文化、価値観、言語という個別の事情を超えて、特定の強者の文化や価値観が一方的に物事を決定するという大きな抑圧を生みかねない危険性が必然的に生じるのだ。第二回は、カントが提示した「平和のための連合」の理念を読み解くことで、人間にとって「国家とは何か?」「民族とは何か?」といった根源的な問題を解明する糸口を見つけるとともに、恒久平和を実現するシステムとはどんなものかを考察する。

 

平和連合=国際連合

「平和をつくるには?」

国家としてまとまっている民族は複数の人々のうちの一人の個人のようなものと考えることができる。
民族は自然状態においては、すなわち外的な法にしたがっていない状態では互いに隣り合って存在するだけでもほかの民族に危害を加えるのである。
だからどの民族も自らの安全のために個人が国家において市民的な体制を構築したのと同じような体制を構築し、そこで自らの権利が守られるようにすることをほかの民族に要求することができるし、要求すべきなのである。

 

三段論法

  1. 国家も一人の人間に例えられる
  2. 人間は邪悪だ
  3. だから国家にもルールが必要

 

→「ならば世界国家にしたら戦争はなくなるのではないか?」

 

これは国際的な連合であるべきであり、国家的に統一された世界国家であってはならない。

↑世界政府を作る場合、マイノリティは消えていくので民族ごとの国家体制を保持したうえで平和を実現しなければならないということ。

 

一つの世界共和国という積極的な理念の代用として消極的な理念が必要となるのである。この消極的な理念がたえず拡大し続ける持続的な連合という理念なのであり、この連合が戦争を防ぎ、法を嫌う好戦的な傾向の流れを抑制するのである。

積極的な理念→世界国家

積極的な理念は正しい目的を達成するためには何をしても許されるはずと考える傾向があり、脱退したいと考える国に対して武力を使って阻止した場合、逆に戦争を起こしかねない。

 

消極的な理念→平和連合
みんなが折り合えるようなやり方で達成できる目的を定める。どんな小さな国であっても主権国家と認められれば1議席を持つことができ、強者の論理に飲み込まれずに済む。紛争の種をできるだけ減らすために別の方法を探そうと考えるのが消極的理念。


第一次世界大戦後に国際連盟が、第二次世界大戦後には国際連合ができた。
カントの哲学はこのベースになっていると考えられる。しかし、国連が存在する今も平和は達成されていない…。

 

1920年国際連盟が設立された。
加盟国は最大60カ国。提案者であるアメリカが加盟しておらず、ドイツ、イタリア、日本が脱退。そして脱退した国によって戦争が始まった。

その反省を踏まえて1945年国際連合が設立された。加盟国は193カ国。
何かを決める際に加盟国全ての賛成を必要としたために、なかなか物事が決まらずにいたが常任理事国を設置することでスピーディーに決めることができるようになった。しかし、常任理事国の意向に他国が従わなければならない事態が発生する。

もう一つの改善点として国連の設置が挙げられる。これは、国家間の問題を武力で解決することのないように抑制する為に国連が軍隊を派遣するもの。
しかし、カントの理想はあらゆるトラブルを武力を使わずに法的に解決する仕組みを作ることである。


萱野)国際連合国際連盟も提唱したのは戦勝国であり、前者であれば敗戦国のドイツ、後者であればドイツ、イタリア、日本を懲罰する意味合いがありました。カントは懲罰的な戦争は平和をもたらさないと主張しています。

勝者と敗者の図式を持ち込むことで国家間に上下関係をもたらすものは本当の平和ではない。その点で現在の平和連盟はカントの理想とは違います。
改善点を挙げるなら、当事国としての関与を強めること。

例えば国際司法裁判所も当事国のうち片方が嫌だと言えば意味を持ちません。カントの考えでいえば、当事国が裁判所の運営に関与できるようにすべきです。
各国が関与を強めることがその国の利益であると思える枠組みをつくる必要があり、当事者であれば無責任なことを言えなくなります。

 

以上。 

 

第一回は伊集院さんの「永遠平和とは永遠戦争を止めること」という一言に尽きますが、今回からは国のあり方について考えさせる内容になります。

確かに、国連があっても戦勝国の論理で世界は動いてますからマイノリティーの意見が反映されにくいです。それでも地球上には平和国憲法を掲げる国は存在します。

 

「コスタリカは武装国家だ」という“妄想”に反論 | ハーバービジネスオンライン

これは去年のハーバービジネスオンラインの記事で、コスタリカの平和国憲法が紹介されてます。

コスタリカといえば「水曜どうでしょう」で、わざわざ幻の鳥を求めて海外ロケをやったのに宿泊先の庭でオッサンが手乗り文鳥みたいにしてたでお馴染み。

サッカーではワンチョペでお馴染みの国ですね。興味のある方は読んでみると勉強になると思いますよ。