モブトエキストラ

左利きのメモ魔が綴る名もなき日常

【報道特集】差別感情はどこから来るのか。ヘイト音楽の行方

彼らがシンパシーを抱く国

先日、RADWIMPSのとある曲が話題になりました。
RADWIMPS衝撃の愛国ソング「HINOMARU」を徹底解剖する(辻田 真佐憲) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)
最初にそれを見た時に、今年の1月20日に放送された報道特集のことがふと頭に浮かび「思ったよりも早く悪影響が出ているのではないか…」と感じ、書き起こすことにしました。
内容はというと、差別感情を抱いている当事者にインタビューをしたうえで、その原因と対策を考えるというものです。とくに人種差別の思想を持っていた方が180度反対の考えに至った理由、特に最後の部分では創ったモノの影響について考えさせられる部分があるので、ぜひ思考する材料になればと思います。

 

トランプ政権1年と白人至上主義 | 報道特集 : TBSテレビ

インディアナ州
その男は約束の時刻を1時間以上遅刻して現れた。

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竹内明記者「1時間の遅刻です。何があったのですか?」
ハインバッグ氏「私には息子2人と妻がいます。息子が病気で病院に行っていました。日本人は時間厳守ですよね。遅れて申し訳ありません。ハハハハ」

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マシュー・ハインバッグ氏(26)
白人至上主義者であり、伝統主義労働者党のリーダーだ。
その影響力と激しい言動から過激なテディベアと呼ばれ、黒人人権団体が最も問題視する人物の一人。

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2017年10月、ハインバッグ氏と白人至上主義者によるデモがテネシー州で行われた際にナチス式の敬礼をしながら彼らが叫んでいた言葉は
『Blood and Soil』(民族の血と祖国)
これはナチスが使っていたフレーズだ。
ナチズムとは - コトバンク

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White Lives Matter(白人の命は大切だ)
これは黒人の人権運動のスローガンを皮肉ったものだ。
「ブラック・ライヴズ・マター」という言葉は何を意味するのか | ハーレム・ジャーナル

果たして彼はどんな国を求めているのか。

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ハインバッグ氏「様々な人種が一緒に住んでいるせいで対立を招いています。私は白人のための母国をつくりたいと思っています」

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竹内記者「あなたの運動が国民に受け入れられると思っていますか?」
ハインバッグ氏「世論は変わってきています」

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アメリカ国民のうちネオナチを受け入れると回答したのは9%

この2,200万人がトランプ政権の支持基盤と言われている。
ハインバッグ氏は大学在学中に白人団体に入った。当時の彼を知る大学教授はこう語る。

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教授「彼は問題のある学生でした。当初はとても礼儀正しく楽天的な青年に見えました。でも、一年もすると全く逆だったと分かりました。彼は大学内の人たちを宗教や人種を理由に攻撃し始めたのです」

大学を卒業したハインバッグ氏は白人が大半を占めるインディアナ州に移り住んだ。活動に反対する両親や兄弟とは絶縁状態。現在は宅配トラックの運転手をしながら二人の子どもを育てている。

ハインバッグ氏「この地域では薬物中毒が大問題になっています。白人の若者や中年たちが希望や誇りを失い、見捨てられたと感じているのが原因です。アメリカでは白人の仕事が中南米系移民に奪われ、賃金が下がっています。この地域でも人口構造が変化しています。私達はそれを防ぎたいのです」

シャーロッツビルの件についてはどう思っているのだろうかーー。

「白人至上主義者はいらない」差別容認派に抗議する人々と、参加がバレて失職した人々。シャーロッツビル事件のその後

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デモに反対する人々の中に白人至上主義者(戦争で使うような銃で武装している)の車が突っ込み、複数の怪我が出たうえ1人の女性が死亡した。

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これについてトランプ氏は双方に責任があるとして、アメリカ国内では支持者の顔色を伺った発言だと批判された。

シャーロッツビル衝突で死亡女性の母「あの子の声はむしろ大きくなった」 - BBCニュース

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ハインバッグ氏「罪の意識も後悔も全くありません。暴力をもたらしたのは彼らですから。私達は自分を守っただけです
竹内記者「自己防衛だと考えますか?」
ハインバッグ氏「全くの自己防衛です」
竹内記者「では、あの悲劇をどう考えていますか?」
ハインバッグ氏「シャーロッツビルの出来事は素晴らしい成功です。国家主義者としては過去25年間で最大のデモでした。街を練り歩き、夜のイベントも行いました。信じられない成功。大勝利です」
竹内記者「あれが大勝利ですか?
ハインバッグ氏「大勝利。最高の勝利です(笑顔で語る)」
竹内記者「あなたは被害者の死に責任は感じないのでしょうか?
ハインバッグ氏「全く感じません(首を横に振りながら)

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FacebookTwitterは彼のアカウントを凍結。イギリスはハインバッグ氏の入国を禁止する処置を行った。

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過激な主張が繰り広げられる中で、ウィスコンシン州に白人至上主義から立ち直った人物がいる。

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アーノ・ミケーレス氏。(47)

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彼は現在、近くの高校で課外授業を行なっている。
黒人の生徒と対話しているがーー。

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彼は過去に『白人以外は殺せ』と叫ぶネオナチバンドのヴォーカルをやっていた。
白人至上主義に染まったのは、学校や社会の不満をためていた16歳の頃だった。

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ミケーレス氏「憎しみはドラッグみたいなもの。憎しみに興奮するんだ。ヘイト音楽は『憎むべきはコイツだ! 暴力的になれ! お前は白人を救う戦士だ!』と教えるんだ

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彼のネオナチバンドはカリスマ的な人気を誇り、反対派する人々との衝突に明け暮れた

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宮本晴代記者「白人至上主義に染まっていた当時、心の中ではどう感じていましたか?」
ミケーレス氏「白人の自由と未来という大きな目的のために戦っていると思っていた。でも、心の奥底では…『間違っている。肌の色を理由に人を傷付けてはいけない』と分かっていた。いけない事だとは分かっていながら、自分の内面と向き合う勇気が無かったんだ

衝突を繰り返す中で友人が命を落とし、娘が生まれた事をきっかけに、白人至上主義とは決別した。
なぜ若者が白人至上主義に吸い寄せられるのかについてミケーレス氏はこう語る。

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ミケーレス氏「政治的な振り子が左右に触れている。欧米の教育現場は長い間リベラルに傾き過ぎていて、授業で白人がこんな悪い事をした、あんな悪い事をしたと言われ続ける。それが続くと、多くの白人の若者達が『じゃあもういいよ。極右の仲間になるさ』と考えてしまうんだ

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今は地元の学校で自分の経験を伝えているミケーレス氏。アートを通じて異文化を理解するプロジェクトを続けている。
白人至上主義という社会の傷を癒すにはトランプ大統領の存在を逆に利用すべきだと言う。

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ミケーレス氏「傷口を消毒するには痛みが伴う。口にしたくない事でも話し合わなければならない。トランプ氏はこうした会話の機会を提供している。
全ての人類は違いよりも共通点の方が多いと理解すること。人種なんてつまらない壁で相手を見る目を変えるべきじゃないんだ

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去年9月、テネシー州の教会で銃乱射事件が起こった。1人が死亡、7人が負傷。殺害されたのは白人だった。

米テネシー州の教会で発砲 「勇敢な」案内係が取り押さえ - BBCニュース

襲撃したのはスーダン出身の移民。この事件の後、白人至上主義者が近隣の街に集結し
「移民から白人を守れ!」と声を上げ大規模なデモを行なった。

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ヴァンガードアメリカ』
2015年に設立された団体で若者を中心に支持を拡大している。
番組は彼らに取材交渉をしたところ、「まずは話をしたい。撮影はそれからだ」との回答があった。

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約束場所へ行くと地方幹部の『ヴィクター(征服者)』を名乗る男がやってきた。
マスクは外したものの、目元以外は隠して欲しいとの条件で撮影に応じた。
3年前は30人だったメンバーは現在、二十歳前後の若者を中心に1500人規模になっているという。

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ヴィクター氏「白人の若者は大金をつぎ込んで大学へ行っても仕事が無いんだ。外国人に奪われているからね。
『平等や多様性は素晴らしい』なんて言うが、白人の働く場所は少ないんだ。みんなそこで気付く。『白人なんて不利じゃないか』ってね。」

若者が抱える不満を支持に変え、トランプ大統領就任以降はメンバーが倍増したという。

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ヴィクター氏「トランプ大統領イデオロギーの扉を開いたんだ。僕もこの国もこういう考えを隠さなくていいと分かった。大声で話せる。もう『タブー』じゃないんだ。」

ヴィクター氏は民主主義に期待しておらず、最後は『白人と非白人との間の対決』だと極論を展開した。

ヴィクター氏「我々はこの国は『内戦』に向かうと考えている。この国の問題はもはや政治では解決できない。実はもう、戦争は始まっている。水面下の静かな戦いだ

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宮本記者「VTRの最後に登場したヴィクターを名乗る人物なんですが、一見どこにでも居る普通のアメリカ人という印象でした。彼は35歳で3人の子どもがいると話しました。そんな彼が最後に突然、『もう戦争は始まっている』と言い出したので私は聞いていて驚きました。アメリカ社会はこれまで多様性を重視し、黒人の権利を守ろう、女性や同性愛者を大切にしようという方向性に進んできました。
しかし、そんな流れの中で白人男性が心のどこかに溜め込んできた不満、窮屈だなぁといった思い。そうしたものがトランプ大統領という存在によって触発されて、まさにタブーではなくなったという事で噴き出しているのではないかと思います。

ウィスコンシン州シク寺院銃乱射事件 - Wikipedia

元ネオナチバンドのミケーレスさんなんですけども、彼の創ったヘイト音楽は白人至上主義者の間ではいまだに強い影響力があるのだそうです。2012年に彼のファンだった男がシーク教徒の教会で銃を乱射し、6人を殺害するという事件を起こしました。そうした過去があるからこそ、子ども達に多様性の大切さを教えたいとミケーレスさんは話していました」

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金平キャスター「取材していた竹内記者に聞いたんですけども、ハインバッグ氏はこのような事を言っていたそうです。
国家主義者として今の日本人気質にはシンパシーを感じる。見習うべき点がある』と。聞いていて複雑な気持ちになりますが、一方でトランプ大統領と親密な首相を誇る国に暮らしているわけですから、アメリカのこの現象は日本人にとっても他人事ではないですよね?」

米ツイッター社:規制強化、差別的投稿、攻撃的投稿は違反 - 毎日新聞

宮本記者「トランプ大統領に限らずなんですけども、誰かが差別主義的な発言をすればそれに対して必ず強い抗議活動が起こるのもまたアメリカだと思います。例えばTwitter社は先月(2017年12月)からヘイトスピーチ対策を強化し、白人至上主義関連のアカウントを次々と凍結しています。差別や暴力は許さない。野放しにはしないという強い意思がアメリカ社会には存在していると感じます。日本もそこは学べる点だと思います」

〈書き起こし ここまで〉