モブトエキストラ

左利きのメモ魔が綴る名もなき日常

「告白」の感想

一人称の面白さ


2015年の最終日、どうにか告白を読み終えた。ミステリー小説自体ほとんど読まないのだが、最近に読んだ本の中では一番面白いと思った。

それゆえページをめくる手も早くなり、結果的に去年に読み終えることができたのだった。

この小説は

【第一章】聖職者→一年B組 教師 森口悠子の告白

【第二章】殉教者→一年B組 委員長 美月の告白

【第三章】慈愛者→少年B(直樹)の姉が母の告白を読む

【第四章】求道者→少年Bの告白

【第五章】信奉者→少年A(修哉)の告白

【第六章】伝道者→自分の子どもを殺された森口悠子の少年Aに対する復讐の集大成

上記の6パートから成り立つ。
女性教師の子どもが死亡した事件の真相を、それぞれの登場人物の主観が補完していく。
構成として近いのは芥川龍之介の「藪の中」が挙げられる。

告白の面白いところは、登場人物の人格がことごとく歪んでいる点だ。
本の装幀からしてスクールカーストが関連しているのだろうと予想したが、ほとんどそれは関係なかった。

「他人を利用していかに自分の欲求を満たすか?」ということだけを考えるのがサイコパスの特徴の一つである。
一面的にみれば仕事熱心だとか、あるいは真面目という印象を受けるだろうから、外見だけでは分かりはしない。
一方、森口悠子は愛する娘を失った復讐心によって、後天的に人格が歪んでしまい、天才的な戦術で復讐を成し遂げる。
先天性サイコvs後天性サイコの策略対決はとても読み応えがあった。
サイコの特徴が悪い方向に向かうと、悲劇しか待ち受けていないというのが作者の伝えたいことではないか?←そーかなー?
湊かなえ氏の「Nのために」も復讐するストーリーだったが、個人的にはこちらのほうが心理描写が分かりやすくて好きだ。

ただ、ラストがよく分からない。
なぜ森口悠子は少年Aの母親に会うことが出来たのだろうか?
少年Aが仕掛けた爆弾を母親のいる研究室に持って行ったとして、部外者が簡単に出入りできると思えない。
委員長が薬品を持ち出せたことについては先生から信頼されていたことが理由として記載されているが、森口悠子が爆弾を設置できた理由が分からない。
単に私の読解力不足だろうか?

それともう一つ気になったところは、直接その場面を見たわけでもないのに、自分の子どもが怯えていたと断定している箇所。
「きっと怯えていたことでしょう」と語ったほうが自然に思った。


あと、「ミステリ」って誤植?
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逆に言えば、不満な点はそれくらいしか見当たらない。
「委員長、あんたもサイコだったのか!」と思わずツッコミを入れたくなる展開も面白かったし、少年Aと熱血先生ウェルテルが実は似ている点も面白く思った。(意図的なものですよね)
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↑これは委員長の視点から見たウェルテルの特徴
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↑これは少年Aが共犯者にする人物の条件

利己的な人間に嫌気がさして、自分のエゴイズムを肥大化させると、結果的にその集団は爆発するだなぁ。
告白は良くできてるし、一人称で物語を書くならお手本になると思います。

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)