モブトエキストラ

左利きのメモ魔が綴る名もなき日常

「文豪たちが書いた怖い名作短編集/彩図社文芸部編集」の感想

怖いって何だろう?

 

私が子供の頃、夏休みに入ると真昼に「怖い話」をテレビでやっていました。

そういえばフジテレビの「ごきげんよう」は終わってしまったから、稲川淳二さんの話を聞く機会も減りましたね。

今の私には「怖い話」が怖く感じられません。創作物として捉えてしまうからだと思いますが、とくにホラー映画を始めとした映像作品は暗がりで叫んでるだけの意味不明なものが多くて、かえって私にとっての恐怖が風化していくのです。

 

『あぁー、ホラーゲームやりてぇなぁ。いや、小説でも読むか。オラわくわくすっぞ』ということで、この本を読むことにしました←笑えよベジータ

 

収録されているのは15作品。

ざっくりと感想を書きませう。

 

『卵』 夢野久作

トップバッターにしては気の抜けたタイトルだなぁと思ったが最後、羊の皮を被った狼トラップです。

主人公の三太郎が隣に越してきた美少女に一目惚れして、幽体離脱をして夜中に会いに行くんですね。この時点で勉強もしないで三太郎なにやってんだよ!って思うんですけど、これがまさかの両思いで、その美少女も幽体離脱して夜中にキャッハウフフ状態。

でも、三太郎も夢の中の話だから日常で顔を合わせると恥ずかしい。現実ではチラ見しつつ視線を外すくせに、夢の中ではキャッハウフフの繰り返し。

起承転結の転の部分で美少女が引っ越してしまうんです。しかも、タイムスパンでいうと春に越してきて夏の終わり頃に引っ越しました。とくに理由は記載されてないので謎です。

ここで卵が出現してくるんですよ。

のび太と恐竜みたいな展開に若干笑えるんですけど、三太郎が育て始めるとだんだん卵の中から苦しむ声が聞こえてくる。真夜中にとうとう怖くなった三太郎は元の位置に置いてこよう(自分ちの庭ですけど何か?)って急いで駆け出した時にガラガッシャーン!

あたり一面が小便の匂いに包まれて三太郎はすぐに部屋に閉じこもって寝ちゃうんですよ。朝起きたら何も無くなってて、隣の家にまた誰かが引っ越してきましたとさ。(終)

 

これって幽体離脱と想像妊娠の組み合わせですよね。「のび太と恐竜(想像妊娠の卵)」やべー

 

夢十夜夏目漱石

夏目漱石の割には…怖くない。

ただ、よくある『ねぇ、パパ。今度は殺さないでね(にこっ)』の元になった話はコレなんじゃないかと思います。

興味ある方は読んでみて下さい。

 

押絵と旅する男江戸川乱歩

この話は、とある男が八百屋お七というカラクリの中の美少女に魅入られて中に入ってしまう話。

その男の弟を自称する男が、絵の中の二人に風景を見せるように旅をしてるんです。

主人公は蜃気楼を見るために魚津を訪れた帰りの汽車でその男に会うんですが、主人公の記憶も曖昧で知人に話をしても「お前、魚津なんて行ってなくね?」っていう…

だから、主人公の証言に基づいて考察すると砂上の楼閣だから処理が難しい。

あと、兄がどうやって絵の中に入ったのかというと、横浜の支那人街で手に入れた「遠眼鏡」を遠近を逆さにして覗いてくれと弟に頼んで絵の中に入ったんです。兄はなぜそんな方法を知っていたのか書かれてないので分かりません。

それと主人公は絵の中の男性とその絵を持って旅をしている男は瓜二つだと何回か言及するシーンがあるんですよ。

裏読みできる要素がある匂いがするんですけど「魚津なんて行ってなくね?」のリフレインが邪魔をする…笑

深夜の馬鹿力でいう「空脳」のジャンルです。

 

『屍に乗る人』小泉八雲著 田部隆次訳

キャッチコピーを付けるなら平安メタルギアソリッド

ええ、読めば分かります。

 

『破約』小泉八雲著 田部隆次訳

キャッチコピーを付けるなら怨念ヘッドショット(捻じ切れてる)

凄まじい念能力と役立たずな男どもが見所です。

 

赤いろうそくと人魚小川未明

かぐや姫と鶴の恩返しを混ぜてバッドエンドにした話です。

端的に内容をいうと、最初は愛情に溢れていた老夫婦が人魚に違法労働を繰り返し人身売買に手を染めます。

最後には「早く檻に入れ!」って笑

クソGGYとクソBBAへ豹変してから畳み掛けてくる感じが面白いです。

 

『過ぎた春の記憶』小川未明

主人公の正一は怖がりな男の子で、かくれんぼで鬼になったら全員を見つけるまで無責任に帰れないという考えの持ち主。だから、いつも隠れる側を選んでたのだけど、いつの間にか闇のゲームの参加者となっていて、黒ずくめの坊さんに捕まってしまう。気づいたらもう二度とかくれんぼのできない身体になっていた(終)

 

コナンかと思った笑

正一は犠牲になったのだ…

 

『昆虫図』久生十蘭

天井にハエがびっしり張り付いていたら殺人の匂いがプンプンするじゃないですか?

この話はそういう意味で読者を裏切らないんですけど、一番怖いシーンが主人公の妻が真夜中に枕元に座ってるシーンだったりする。恐怖のクリティカルヒットを楽しめます。

 

『骨仏』久生十蘭

白い磁気を作りたすぎる男がボーンコレクターになる話。

読み終わってからフリスビーのおっさんを思い出しました。

 

『妙な話』芥川龍之介

正直、この話は私にはよく分かりませんでした。

「夫が出兵した隙にゲス不倫を迫ってくる男がウザくなったから、妻は頭のおかしなフリをして自己防衛した」という解釈をしました。

 

『剃刀』志賀直哉

剃刀名人の床屋は完璧主義者で、体調不良で熱があっても客を拒むことはしなかった。

その先はドリフのコントで、震える手で客の髭を剃っているうちにだんだん思うように剃れないのが腹立たしくなってきて、今まで客に傷をつけたことのない男が傷をつけてしまう。その瞬間にどうでもよくなって殺しちゃいました←なんでやねーん(=゚ω゚)ノペシっ

全てのドミノが倒れてしまう感じは分からなくもないけど、プロとして失格だと思いました。マジレスすいません。

 

『蟹』岡本綺堂

映画化するとしたらサメ映画のジャンル。蟹にパニックする人々は滑稽で全く怖くありませんでした。

タイトルを『すべすべまんじゅうがに』にすると内容が分かると思います。

 

『紅皿』火野葦平

殺意の波動に目覚めた河童の話です。

それ以上でも以下でもありません笑

 

『件』内田百閒

主人公は気づいたら、人の顔した牛の化け物「件(くだん)」になっていて、三日の間に人間に対して予言をして三日後に死ぬという運命をいきなり背負う。

別に死ぬことは構わないが、誰かに不幸を予言したくないから人気を避けていたが、予言を聞こうと人に囲まれてしまう。

その中にはかつての恩師や同級生の顔があり、なかなか予言をしない主人公に対して予言を聞くより今のうちに殺してしまえという声も聞こえた。

その声は自分の息子で、その姿を見ようと立ち上がると、予言をすると勘違いした人々は一目散に逃げ帰った。

死ぬ気がしないというオチで話は終わります。

 

この話も解釈が難しいです。

身体は現在、顔は過去、声は未来と変換してもイマイチ分からないですし、だからと言って「人間は愚かだ」みたいなオチにしてもつまらないですよね。

姿が変わってしまう話に「変身」や「山月記」がありますが、この話は予言をするという点で独特です。

宗教に対するアンチテーゼ何でしょうか?

うーむ。。分からん笑

 

『冥途』内田百閒

この話はノスタルジックが好きな人にはオススメです。私は「千と千尋の神隠し」の「6番目の駅」をフラッシュバックしました。芥川龍之介の「トロッコ」とかね。

 

6番目の駅 「千と千尋の神隠し」より - YouTube

 

感想は以上です。

怖くなかったね。

 

 

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