人々は「知らないこと」を知らないーー 中卒が世界に暴露した
この本に関しては以前から買おうと思っていたのですが、他の本を買ってしまってお金が無くなって…今に至ります。
警察の権限拡大が意味するものは裏で待ち構えるNSAの権限拡大に直結すると私は思うのです。
公文書さえまともに管理できないクソジジイ達の権限拡大をどうしてメディアは報道しないのでしょうか?
その理由さえこの本を読むことで分かる気がして手に取りましたーー
本書の構成は以上の通りです。
序章から第二章までは映画のようなスリリングな展開が楽しめます。
第三章からは憲法学と市民権を専門とする著者グレン・グリーンウォルドがスノーデンのファイルをもとにした問題点の洗い出しと「自由とは何か?」「報道とは何か?」を読者と世界に問う内容となっています。
次に本書の登場人物とNSAが行っていたことについて書いておこうと思います。
グレン・グリーンウォルド
→著者 NSAに対して追及する記事を書き続けた姿勢がスノーデンの目に止まる。
ローラ・ポイトラス
→グレンが信頼する孤高の女性映像作家。スノーデンからメールが送られてきた。
〈ワシントンポスト〉
バートン・ゲルマン
ローラがプロジェクトへの参加を求めたが、問題の大きさに怖気付いたワシントンポストの顧問弁護士に香港行きを止められる。
編集主幹 ビル・ケラー
発行人 アーサー・サルツバーガー
〈ガーディアン〉
編集長 アラン・ラスブリッジャー(英版)
ジャーニーン・ギブソン(米版)
副編集長 スチュワート・ミラー(米版)
ベテラン記者 ユーウェン・マカスキル
主任弁護士 ジル・フィリップス
著者は情報を公開するにあたってプロジェクトチームが必要だと考え、ガーディアン紙のジャーニーンに参加を要請。
最終的に大スクープを報道。
〈FOXニュース〉
ワシントン支局長 ジェームズ・ローゼン
→アメリカ政府は今回の暴露に関する共犯者としてジェームズ・ローゼンの身柄を拘束。とばっちり笑
〈ニューヨーカー〉
記者 ライアン・リッザ
→外国諜報活動監視裁判所が機能していないことを受けて作られた委員会を批判。「委員会は高官を二枚目俳優のように崇拝している」と記事に書く。
ダイアン・ファインスタイン上院議員
→夫が軍事関係者でNSAの盗聴活動を肯定する政府の犬
エドワード・スノーデン
→29歳 中卒の天才
メリーランドの下位中流家庭に生まれる。父親は沿岸警備隊に所属。
その後、訓練で両足を骨折して除隊。
2005年には昇格してCIAテクニカルエキスパートに認定
2007〜2009年には外交官に偽装してスイスジュネーブでCIAのために勤務。
そこで他人の人生をめちゃくちゃにするCIAの工作活動に嫌気がさす。
CPシステムが倫理的な一線を越えようとしていることを上司に相談したが、それはお前の考えることではないと一蹴された。
こうした権力の氾濫もオバマが大統領に就任したことで減少すると考えたが現実はその逆だった。
2009年 CIAをやめてからNSAの請け負い会社デルに勤務。勤務地は日本。
ここでは一般ユーザーがリアルタイムでやりとりをするのを監視したり、無人機による殺害映像も目にしたという。
スノーデンのアイデンティティはインターネット上で形成されており、その空間では学歴も人種も国籍も関係なく、様々な人々と自由にやり取りを交わすことができたからこそ今の自分があると考えている。その保たれるべき自由な空間を自ら監視していることは明らかに違法であると考えた彼は行動に移すことを決めた。
2011年 日本からメリーランドのCIA施設へ転勤
2013年 最後のファイルをダウンロードするためにブーズ・アレン・ハミルトン社の仕事に応募
5月、会社を休んで香港に向かう
豪華なホテルに泊まり、ワニの置物の前でグレンとローラと待ち合わせ。
言われた通りにルービックキューブを手に持って登場←ここ笑うとこだからね
スノーデンファイル
2011年から2012年のデータが多く、NSAのやり取りは独特の官僚用語で行われており、特に技術文書は不気味な略称やコードネームが並んでいる。
著者はそれを解読するために多くのファイルに目を通す必要があった。
NSAは何をしていたのか?
ジャーナリストのジェームズ・バムフォードは以下のように報道
- データの大量収集は2006年には始まっていた
- ユタ州ブラフデールに巨大な施設を建設
- 2300m^2のフロアが4つ
- フロアはケーブルとストレージ用の二重床になっており、ほとんどサーバーで埋め尽くされている
- 他にテクニカルと管理用に8万3千m^2のスペースがある
Upstreamのプログラム
【BRARNEY】
アメリカ最大手電話会社A&Tと提携
2010年の盗聴対象リストに記載されていたのは以下の国
【FAIRVIEW】
ポーランド政府内部局も協力したと文書に記載されている。
【OAKSTAR】
民間企業のSTEELNIGHTが持っている海外通信システムを利用してNSAのデータベースへ転送していた。
2009年11月6日の内部文書には別の企業と思われるSILVERZEPHYR(銀のそよ風というコードネーム)の協力で、ブラジルとコロンビアの国内通信を傍受していた。
【STORMBREW】
アメリカ国内にある海底ケーブルの上陸ポイント二ヶ所(コードネーム 西海岸 BRECKENRIDGE/東海岸 QUAILCREEK)を監視するプログラム。
PISMプログラム
インターネット大手9社
✳︎Twitterは政府の要請を拒否した。ぐっじょぶ。
提供されたデータは
Eメール、チャットデータ、動画、写真、ストアデータ、IPアドレスなど
さらに、プライバシー保護の為に自社が設けた暗号プログラムを解除するプログラムをNSAと協力して構築した←笑
CNE(コンピューターネットワーク利用の略)
また、情報収集の為に出荷されるコンピューターやルーター(とくにシスコ製)にシステムを組み込むこともする。
↑リモート・オペレーションズセンター(S321)が出荷されるCPを押収して秘密の場所でつくってあそぼする。
2013年4月にバクが発生←ざまあ
ちなみに遠隔地から個人の携帯を起動させて盗聴機にする方法をローヴィング・バグといい、バッテリーを抜くか冷蔵庫の中に入れないと回避できない。
以上の様々なプログラムから収集したデータがユタ州の巨大施設で管理されるわけであるが、NSAの職員はXkeyscoreという管理プログラムを使えば誰でもアクセスできるという。本来であれば裁判所の令状が必要なものであってもだ。
スノーデンもこのプログラムを使っていた。
1日20テラバイト、30日間で419億9630万4146件の情報をデータベースに蓄積。
圧縮プログラムはバウンドレス・インフォーマントというらしい。
新たにGCHQが提案したのはフライト中の携帯電話の盗聴を可能とするプログラムでコードネームはTHIEVINGMGGPIE(泥棒カササギ)
すでにブラックベリーの端末なら監視は可能であると文書に記載されている。
それと、オンラインバンキングと医療記録の閲覧を可能にするものを開発するものもある。(マイナンバーの狙いはこれですね)
NSAと諸外国の関係について
カテゴリー1
共にスパイを行いデータ提供を行うが、自国の官庁要請がない限り互いを監視しない取り決めになっている。
合衆国政府は過去3年間でGCHQに1億ポンド支払った。
カテゴリー2
諜報活動の協力を求めると同時に監視対象国
オーストリア、ベルギー、チェコ共和国、デンマーク、ドイツ、ギリシア、ハンガリー、アイスランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、スウェーデン、ノルウェー、スイス、トルコ、ポーランド、ポルトガル、スペイン、日本、韓国
カテゴリー3
アメリカが日常的に監視する国で、協力関係はほとんどない国。
著者は本書の中でアメリカとイスラエルの奇妙な関係を知る。
イスラエルは中東問題におけるアメリカの立ち位置を知るために監視するが、それ以外に興味はなく、協力というよりも一方的にアメリカの情報を吸っているような感じ。
スノーデンのファイルにあった情報ではバウンドレス・インフォーマントで処理された情報は以下の通り
インド 135億件
ブラジル 23億件
ドイツ 5億件
ブラジル 23億件
ドイツ 5億件
他国の協力を得たものとしては
フランス 7千万件
スペイン 6千万件
イタリア 4700万件
ノルウエー 3300万件
デンマーク 2300万件
オランダ 180万件
また、NSAは相手国に技術開発・活動資金を提供してスパイ活動のノウハウを教えることがあり、2012年度「海外協力国総括」に挙げられている国として、カナダ、イスラエル、日本、パキスタン、台湾、タイなどが記載されている。
そういえば、お笑い芸人でCIA関係者の方いましたね。(関係ないですか?)
NSAはTPPに関する情報も盗聴していたので甘栗むいちゃいましたのUR口きき問題よりも深刻です。
国会議員さんしっかりして下さい。
バッヂ返して下さい。
自由と報道について
後半については憲法学の範囲になります。
誰からも干渉されない権利は最も包括的であり、自由な人間が最も大切にする権利であるこれとはまた別に
個人的な文書やその他すべての個人的な作品を、窃盗や物理的な剥奪からではなくあらゆる形式においての公開から保護するという原則には、実は私的財産保護の原則ではなく、不可侵の人格を保護する原則があてはまると主張しています。
簡単にまとめると思想の保護に用いられるべきは窃盗罪ではなく人格権であり、個人の人格権を侵害してはならないと合衆国憲法にあると。
著者の論理はこうです。
「テロとの戦い」のもと愛国者法によって取り締まりが強化されたが、盗聴対象はテロと関係のない情報がほとんどであることがスノーデンファイルで明らかになった。その上、ボストンマラソンテロ事件や銃乱射事件を防ぐことができていない。無差別に監視することで本物の計画が分からなくなっている。(後者の指摘は民主党下院議員ラッシュ・ホルト議員の意見)
→NSAの狙いは自己検閲
おそらく日本でも出てくるであろう意見について、本書には攻略法が記載されていた。なんと素晴らしい本なのだろうか。
「自分は悪人だから関係ない」という意見に対するものである。
これはとても大切
政府にとって何の問題にもならない者が抑圧的な手段でターゲットにされることはまずない。そんな人々から見れば抑圧などというものは実在しないものになる。
しかし、社会の自由を計るほんとうの尺度はその社会が反対派やマイノリティをどう扱っているのかということにあるのであって、"善良な"信奉者をどう扱っているのかということにあるのではない。世界最悪の専制政治のもとでさえ忠実な支持者たちは国家権力の氾濫を免れる。ムバラク政権下のエジプトで逮捕され、拷問され、射殺されたのは街頭で打倒ムバラクを訴えた人たちであり、彼の支持者や家の中でおとなしくしていた人々ではなかった。
社会というのは個人と個人によって形成されているので、たった一人が自由を捨てるだけで簡単に自由が侵食されてしまう。
自分の自由を守ることは決して利己的(自己利益を最優先すること)ではなく、普遍的な自由を守ることに繋がると私は思います。
自主規制に関しては放送法についても通じていますね。圧力を感じないと思う人間はその程度の報道しかしていない御用か「〇〇が〜と言っていた」という毒にも薬にもならない記者でしかないということ。
ちゃんと戦ってくれる記者であれば、必ず一般市民は評価します。
少なくともスノーデンと記者たちの暴露によって世界は変わりましたし、私がこの本を読めたのも彼らのおかげに違いありません。
視聴率という名の自己利益の追求により、国民の知る権利を捨て去ってしまえば簡単に私達の自由は侵害されてしまいます。
スノーデンが語っていた手法の1つはターゲットを飲酒運転をさせて警察に逮捕させ情報と引き換えに罪を軽くするというものです。
もちろんCIAのターゲットは一般市民に限らないですから、報道関係者は日常的に一般市民から信頼を得られていないのであれば誰も味方してくれませんよ。
普段から政府関係者とご飯を食べている人間なんて特にそうでしょう。
長くなりましたがとりあえず重要なものは以上です。
携帯電話会社は捜査機関の要請により利用者の位置情報を提供する場合、従来のガイドラインでは「裁判所の令状」「位置情報取得時の本人への通知」が求められていました。
従来は「この端末の位置情報が検索されようとしています」という画面表示と音、振動で利用者に通知していましたが、警察庁の「本人通知によって捜査が困難になる」との要請により、ガイドラインの「本人通知」要件が削除されました。
19日採決というのはめちゃくちゃです。今年から選挙に行ける方はどの議員が賛成したのか覚えて、次の選挙で落選させましょう。
気になることがあったらまた記事にします。
Breaking: The Intercept begins releasing large batches of Snowden documents https://t.co/kHiiCapisBhttps://t.co/RtMfXS6cYy
— The Intercept (@theintercept) 2016年5月16日