モブトエキストラ

左利きのメモ魔が綴る名もなき日常

飛ぶ教室(第2回)の感想

忘れ去られたインフルエンザ

高橋源一郎の飛ぶ教室 - NHK

今夜のお話も興味深いお話だったのでメモしておこう。以下メモ。

 

高橋源一郎さん)緊急事態宣言が出て最初の週末です。絵本作家の五味太郎さんは「逆に訊くけど、こうなる前は安定していたの?」「子供達にとっては今がチャンスだと言えるようにしたい」「早く元の生活に戻りたいと言うけど本当に戻っていいのか考えるべき」だと仰っていました。

五味太郎さん、不自由さへの直言「限られた材料の中、悩もう」「自由なんて、あると思うから意識しちゃう」(withnews) - Yahoo!ニュース

五味さんは「学校化社会」と呼んでいます。学校に行く事、会社に行く事がどういう事なのか考える時だと思います。実はスタジオではなく、鎌倉の仕事場に居ます。

 

小野文惠アナ)NHKアナウンサー以外はテレワークで、高橋源一郎さんと作家でクリエイターのいとうせいこうさんはスカイプでの出演となります
高橋さん)やった事ないからドキドキするね笑

11歳リスナーからのお便り)先週の放送(悪いオジサン&歌舞伎町を浄化するとか言ってる都知事が嫌いな菊地成孔先生の神回)を聴き逃しサービスで聴きました。お母さんは難しいと言っていましたが楽しかったです。

1コマ目『著アルフレッド・クロスビー/史上最悪のインフルエンザ 忘れ去られたパンデミック

高橋さん)感染症パンデミックの専門書を歴史の本として初めて書いたものです。私は大変感銘を受けました。スペイン風邪って知ってました?
小野アナ)聞いた事はありましたが、2500万人以上も死んだって凄い事ですよね…。
高橋さん)1918年当時の人口は20億人弱いて、そのうち5億人がかかり、亡くなった数については諸説あって1億人とも言われてる。これは戦争で亡くなった人よりも多い。それなのになぜ忘れられたのかを記したのがこの本です。

スペイン風邪が始まったのはアメリカ。これもいくつか説があるけど、戦争中だったので情報統制されていたと言われています。最初の流行はデトロイトカンザス州で確認されて国内の流行は消えちゃうんだけど、兵士がヨーロッパに行ったことで大流行する。そして第2波はヨーロッパから今度はアメリカに拡がって大変な事になった。

作者のクロスビーが2003年に書いた序文には「それを食い止めるべきに何をすべきか未だに知らない」と書かれています。
この本はアメリカを中心に書かれていて、フィラデルフィアでは9月22日から感染爆発するんだけど、8月の時点で流行について言われていたのに自分達は大丈夫だと、愛国行進をして拡がった。

この結論が大変面白くて、3年経つとみんな忘れていたそうなんです。最後の章は人の記憶について書いています。当時の作家達は戦争については書いているのに、スペイン風邪については書き残していないんです。ヘミングウェイなんて恋人をスペイン風邪で失っているのに書いてないんです。クロスビーさんは100万人がかかり、5万人が死んでも、人は高い死亡率の病気を気にすると書いています。そういう病気は死神のように畏怖の念を抱くから書くけど、インフルエンザなんて所詮は風邪だろうと思って書かない。スペイン風邪ですからね。これは人間が持つ正常性バイアスで、この本を読むと今僕たちがやってる事と全く同じ。人間は楽に生きようとして、都合よく忘れているのかもね。

『忘れられない過去にする為には?』
高橋さん)これは戦争と同じでキチンと歴史を学ぶこと。
小野アナ)忘れてしまいたい事もあるんですけどね。
高橋さん)それがマズイ!

2コマ目 ゲスト:いとうせいこう先生

高橋さん)今この時期にこの人はどう動いているのか気になるという事で、いとうさん聞いてました?

せいこうさん)スタッフに手伝ってもらってて。
スカイプが不調〉
小野アナ)静止画になったせいこうさんが見えます。(若干の焦り)

高橋さん)あのね、仕事場でやってるから積んでおいた本の山が崩れたんです(こっちでもハプニング)
せいこうさん)笑
高橋さん)さっきチラリと言ったんだけど、僕も100年前のインフルエンザを知らなかったんだけど。
せいこうさん)最初に思ったのが、東日本大震災津波。過去の津波がどこまで来たのか残っていたのに道路が作られ、繰り返されているなって。
インターネットは情報が早いけど消えていってしまうから、印刷されたものや日記に残して、バトンを繋いでいかないといけないと思う。
高橋さん)我々が残そうと。
せいこうさん)100年経ってまた人類が危機に瀕した時、歴史を遡ると思うんですよ。文字というのは映像とは違いますよね。
高橋さん)いとうさんは前の番組「すっぴん!」の時にもお招きして、2016年から国境なき医師団の取材をされていて、ハイチ、フィリピン、ギリシアに行ってましたよね。今、どんな動きをしているかご存知ですか?
せいこうさん)全世界で起きているので各地に飛んでいたり、今いる場所で対応していると思います。感染していても無症状なので、動きたくても動けない。例えばエボラ出血熱はワクチンが開発されている。でもコロナは何をすればいいのか分からない。ハイチでコレラが流行した事があるんですけど、もともとは大地震があって現地に行ったMFS(国境なき医師団)のヨーロッパの医師がたまたま持っていてドーンと流行った。人類が移動する限りウイルスの問題は起こりますよね。

高橋さん)『群像』で連載しているMFSの小説について訊いていいですか?
せいこうさん)パレスチナガザ地区で活動するMFSの話で、去年トランプがイスラエルの首都をエルサレムにしてしまった。これで刺激されたパレスチナの人々は金曜日にデモをしているんですが、毎週500人の人間が撃たれて、亡くなる方もいます。死者が出ると世界で問題になるので足を撃たれる。今の銃弾は小さく入って中で大きく破裂し骨を砕く。彼らは歩けなくなり、パレスチナの労働力も落ちる。銃弾は汚れているので治療にものすごく時間がかかるんです。僕らはインターネットに触れているのに、この事を全く知らない。

高橋さん)クリエイター活動も大変でしょ?
せいこうさん)小池都知事がロックダウンと口にしてから、ミュージシャンは表現する場所を失ってしまった。これはダメだと思って、政治学者の中島岳志さんとか落語さんに協力してもらって配信をしました。

音楽を封鎖しない!いとうせいこう、DUB MASTER Xらが、新しい配信型音楽フェス「MUSIC DON'T LOCKDOWN!」を今夜スタート - ニュース | Rooftop
高橋さん)お金はどうなのよ?
せいこうさん)投げ銭制度があります。でも儲からない。これは世界中のミュージシャンが同じ事を考えているから、配信アプリの人とも話し合って、例えばタイのミュージシャンのライブを見た人々と日本の人々が投げ銭を投げ合ったりできないか考えてる。

高橋さん)そろそろお時間です最後に。
せいこうさん)座ってないで歩いたり、踊ったりしたほうがいい。ラジオを聴いて誰かと一緒にいる事はいい事だと思う。
高橋さん)スカイプ初めてやったけどこれもいいね。いとうさんまたねぇ〜

下校の時間

高橋さん)確かに外に出れないし、うちの子達の学校も始まらない。ネガティヴになるかもしれないけど、今しかやれない事がある。コロナの野郎に、離れて考える時間をもらったというのが良いことなのかもしれない。これがなかったら家でラジオをやる事もなかったし、どうなるか分からないからね(配信が止まる放送事故にヒヤヒヤしながら)
小野アナ)来週の先生は詩人の伊藤比呂美さんです。
高橋さん)伊藤さんと人生相談をしたいと思います。デジタルが苦手で今日は長男がフロアディレクターで〜(すっぴん!の終わり方)

✳︎メモここまで

感想

100年前の人々と、今まさに生きてる私たちの行動(情報統制と希望的観測)が同じというのはゾクッとしました。それそこ第0回でゲストだったヤマザキマリさんがEテレの緊急対談に出演されて、ウイルスの研究者の方と話してたんですけど、その中でスペイン風邪のインフルエンザのウイルスを永久凍土の中の死体の肺から取り出して、人口的に塩基配列をデザインしてみたらこれまでに発見されていたインフルエンザよりも強毒だった(10頭の猿に感染させたら全てが死亡した)と語っていた場面があったんですよ。

NHK 番組表 | ETV特集「緊急対談 パンデミックが変える世界~歴史から何を学ぶか~」 | パンデミックとなった新型肺炎。人類はいま大きなチャレンジを突きつけられている。これから社会はどう変わるのか。識者たちが人類の今と明日について対話する緊急特番。

で、スペイン風邪は第2波のほうが致死率が高かったと言われてる。しかも理由が分からない。100年前から学ぶとしたら、今の時点で感染力が強いCOVID-19が強毒性を持ってしまうかもしれないという事。それを想像したらとてもじゃないけど、あちらこちら出歩く事はできませんよね。

一方で、人間は経済活動が止まってしまっても生きていけない。どうにかして生きようとYouTubeチャンネルを開設する芸人さんがいたり、YouTubeライブをするアーティストさんも増えました。スペイン政府はベーシックインカムの導入を検討したり、デモができない香港では「どうぶつの森」をプラットフォームにバーチャル空間でデモを行ってるそうです。(これがゲーム禁止の条例が可決された香川県民だったら絶望するしかないわ)

新しい価値観が必ず生まれる転換期にいるのは間違いないでしょう。ただそれが新自由主義独裁政権による監視社会ならば牢屋でしかありませんから、人類滅亡さえ選択肢に入るかもしれません。

新型コロナの情報ばかり見ていると気分が滅入ってきますが、ラジオから聞き慣れた声が聞こえると安心します。やっぱりラジオっていいなぁと改めて感じます。

おわり