場所と記憶と本
先に書いておきますが、あくまでこれは私のメモです。正確な書き起こしが読みたい方は公式サイトでお楽しみ下さい。ヒャッハー!
という事で第10回。冒頭の高橋さんの1人喋りは、今回のゲストが堀部安嗣さんということで、これまでに引っ越した場所をリスト化したら32箇所だったというお話。
子供の頃に夜逃げをした家なんかはもう無いけどーー
記憶は脳裏だけでなく、場所に宿っている事を知るのです。私たちの記憶は普段は眠っていて、その場所に行くことで揺り動かされるのです。大切な場所を失うことは記憶を失うことなのです。それを知るのは失ってからなのですが。
私がこの世を去った後、息子たちの記憶の中で私はどのように再生されるのか。
ーーという、深いところに着地するお話でした。私も戦争のドキュメンタリーなんかを見た時に、記憶は場所に刻まれると考えた事があるので、引き込まれるものがありました。あと、世界には臓器の移植手術でドナーの記憶があったりというエピソードもあるので、人間の細胞と記憶と再生の話は面白いものが多い気がします。
第一回 ことばの自由 - ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集https://t.co/yMkjETlmhH #高橋源一郎の飛ぶ教室
— 海老原いすみ (@ebiharaism) 2020年6月12日
小野アナ)「アイスクリームは死ね」っ??
— 海老原いすみ (@ebiharaism) 2020年6月12日
ぼく)アイスクリームは溶けるんじゃなくて、何のために死ぬの?
おじさん)救うため。夏を特別な時間にするため。アイスクリームは死ななければならない
小野アナ)素敵なおじさん! なんか、源一郎さんに似てる#高橋源一郎の飛ぶ教室
高橋さん)ようするに、おじさんは社会や世間や学校が教えてくれない事を教えてくれる。もしかしたら、詩や文学がおじさんの役割をしてくれてるのかもしれない。あまり解説をしないのは、おじさんの言ってる事を理解できるように、すごく良くできてる。
— 海老原いすみ (@ebiharaism) 2020年6月12日
1コマ目に紹介されたのは『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』という作品。お話を聞いてても前半はイマイチよく分からなかったんですけど、後半になるにつれて、詩の素晴らしさをおじさんが主人公のぼくに継承するところで、一気に化ける感じがしました。
2コマ目 ゲスト:堀部安嗣
高橋さん)僕は本は記憶で、いつか大事な時に取り出せばいいと思ってて、阿佐ヶ谷書庫を見た時に人間の記憶ってこういう形をしているんだと思った
— 海老原いすみ (@ebiharaism) 2020年6月12日
堀部安嗣さん)本と仏壇は似ています。阿佐ヶ谷書庫は死者の声が聞こえる、対話ができる、荘厳な空間になってます
小野アナ)『住まいの基本を考える』の中で好きなのが、風景が消えてしまった話。自身の建物は周辺に何も返していない、利己的な家だったから利他的な家を作りたいと書かれてますね
— 海老原いすみ (@ebiharaism) 2020年6月12日
堀部さん)意外と日本建築の特徴で、風景を借りるのであれば返さないといけない。本でも借りっぱなしは良くないです
堀部さん)僕はどんな小さな家も公共建築だと思ってるんです。外観に関わるものは公共性を持ってるはずで、そういう家が増えると散歩が楽しくなったり、街自体が楽しくなると思うんです。
— 海老原いすみ (@ebiharaism) 2020年6月12日
小野アナ)変化が求められるコロナの時代。建築の分野ではいかかですか?
堀部さん)建築というのは鈍臭いもので、出来上がるまでに時間がかかるんです。だから、当時考えていたものの賞味期限が切れたりします。だから、どんなに時代が変化してもビクともしない、悠然とした不器用なものが建築の魅力だと思います。
— 海老原いすみ (@ebiharaism) 2020年6月12日
ここまで聞いて、建築物は内部に包容力があって、外部に公共性があるという二面性があるという指摘は興味深かったです。そしてそれは土地の面積が小さくても、デザインによって体現できるというところは言わば『匠の優しさ』だなぁと。笑
今日の放送も面白かった。阿佐ヶ谷書庫=記憶の形という話のところで、つまりそれってDNAだよねって気付いて、私の頭の中に小島秀夫さんの本の記憶が蘇った。#高橋源一郎の飛ぶ教室
— 海老原いすみ (@ebiharaism) 2020年6月12日
そのうえで、螺旋状の書庫の中に仏壇があるというのはまさにDNAじゃないか!と思ったわけです。そして思い出されるのが小島秀夫さんの本。
人間が生きているのは、どんなかたちであれ他の人間に記憶してもらうためだ。人は死ぬ。でも死は敗北ではない。(略)その人が成し遂げたことの意味は、こだまのように人から人へと伝わってゆく。
— 海老原いすみ (@ebiharaism) 2020年6月12日
(伊藤計劃『メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット』 小島秀夫『創作する遺伝子』より)
↑この引用文は小島秀夫さんの大ファンであった伊藤計劃さんが、メタルギアを小説化したもの。伊藤さんは亡くなってしまったけど、小島さんは伊藤さんに影響を与え、そして伊藤さんから再び影響を受けるという循環がある。詳しくは『創作する遺伝子』を読んで頂ければ分かります。
冒頭の「アイスクリームは死ななければならない」とも重なって、まさに本と記憶を体験した。面白かった。
— 海老原いすみ (@ebiharaism) 2020年6月12日
そして、私の中にある『創作する遺伝子』の記憶を呼び覚ましてくれた阿佐ヶ谷書庫の話の前の『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』の中にある「夏とアイスクリームの死」の中にも循環を見ました。
今回の放送は、記憶の扉を開けてくれる体験型アトラクションといった感じでした。
(おわり)