『SLIDE PRINCESS DUNGEON ESCAPE』
脱出ゲームというと、謎を解いて部屋から脱出するだけのものが多いですが、このアプリは途中で「何かがおかしい」とプレイヤーに違和感を抱かせ、それを最後まで持って行ってくれる作品でした。
ある日、主人公のお姫様は大きな音で目を覚まし、執事のヨウムと一緒にダンジョンを降りて行くというのがプロローグ。
私はこの設定に若干のスティーブン・キング感を感じました。(といいつつ、スティーブンキングの小説読んだことないんだけどネッ☆彡)
スワイプでキャラクターを移動させながら、木とロープを見つけてハシゴを作って向こう岸に渡り、新たな仕掛けをクリアするというのが基本的な流れです。
ステージの合間にヨウムとの会話もあり、ほのぼのしたやり取りで退屈させない構成になっています。
しかし、降りていくにつれ、違和感が大きくなっていきます。というのもダンジョンと言いながらここにあるのは人工物が大半。なのにこの少女以外に人間が見当たらないのです。
そして、しまいにはヨウムも喋らなくなってしまう…。何かがおかしい。先に行きたい。でもギミックが難しい…。(ぐぬぬ)
本と主人公の重さから1目盛りの単位を計算しなければならないステージで私は躓き、顔面を強打。鼻血でダイイングメッセージを残してやめてしまおうかと思いながら、ヒント見まくっても分からず、とうとう攻略サイトを見るという愚行に走りました。愚行と探究心を天秤にかけたわけです。
そして迎えたステージ23
謎を解いて進んでいくと驚き。
そこは地下ではなく宇宙!
つまり、主人公の少女は箱舟の生存者だったのです。
「えっ?じゃあ?他の人達は何処へ…?」
そんな疑問も回収してくれる親切設計。
このゲームにはキングダムハーツにおけるアンセムレポート的な読み物が用意されていて、各ステージにあるシークレットファイルを読む事でストーリーを補完できるようになっています。
(やたらステージに魚が出てくるのは箱舟での実験に魚を使用していたから)
(どこの世界も上級国民様は腐ってらっしゃるの)
ファイルを読んでみると、魚以外にも、ステージにあった時間移動のギミックの正体や、人為的に事故が引き起こされた事、主人公の少女の副作用についても触れられていました。
そして、不可解に残された開かずの扉の謎も回収すると表記されない最深部(便宜上ステージ24と言った方がいいですね)へとたどり着きます。
脱出ポッド?に乗り込むとその先はーー
なんときれいなラストシーン
青空!ヨウムも無事!
達成感!(サイト見たのに)
そしてラストのファイルが明らかに。
「大きな音で目を覚ました」という冒頭のプロローグ。その正体は事故の記憶だったわけですが、ラストには「汽笛の音で目を覚ます」という表現になっています。光景が目に浮かぶような上手な文章表現だなぁと思いました。
気になって作者の「Bloom mush,room」を調べてみたらTwitterアカウントがあって個人開発者と記載されていました。
1人で作ったのっ?! すごい!
しかも新作はNintendo Switchでもリリースしてるらしい!
おわりに
脱出ゲームとして、なぜ脱出するのかをこれほど丁寧に説明してるアプリはあまりないと思います。
区画を閉ざした理由、装置が止まっている理由もファイルには書いてあります。
ストーリーも「〇〇と思ったら実は□□だった。なぜかといえば△△だったから」みたいな構成で、プレイヤーをちゃんと驚かせてくれる作品でした。
アニメも良くて、ピッケルで岩を砕いた時の反動もちゃんと描いてたり、あとは音ですね。地底深くに行った事はないし、もちろん宇宙にも行った事はないですが、音がちゃんと空間を演出していました。かなり良い。やれば分かります。
総じてセンスがいい!
私の中で刺さりまくったアプリ『マジョノシマ』『INO』と並ぶすんばらふぃーふぁふひぃんだと思います。
おっと失礼。今、宇宙にいるので回線が乱れました。(嘘)
かつて漫画が宇宙を描いてきましたが、現代はこうやってゲームクリエイターがその一端を担っている事に時代を感じました。
(おわり)