モブトエキストラ

左利きのメモ魔が綴る名もなき日常

「それでも命を買いますか? ペットビジネスの闇を支えるのは誰だ」の感想

アウシュビッツのある国と比喩される…



杉本彩さんが動物の保護活動を行っているのを知ったのは、日本外国特派員協会の会見を見てからです。
それまでは社交ダンスのイメージしかありませんでした。


2013年に動物愛護法が改正されたことは知っていたので、本の内容に関しては頭に入りやすかったです。
構成は杉本さんが概要を説明した後にコラムが掲載してあるので分かりやすく、字数もそれほど多くないので読みやすくなっています。

ペットが店頭に並ぶまでの流通過程を簡単にまとめておきたいと思います。


第一種動物取扱業者

繁殖業者
無理な繁殖を強要させられ続けた犬は歯がボロボロになり、ひどい場合では背骨が曲がってしまったり、顎の骨が溶けたり、目に膿が溜まったまま放置されている。業者にとっては使い捨てられる「産む機械」なので治療されることはほとんどない。
繁殖させすぎて手に負えなくなると、意図的に経営破綻をして動物愛護団体に多頭レスキューを要請する。
多くの保護団体がこのイタチごっこに頭を抱えている。

オークション

大量に仕入れ、大量に流通させるビジネスモデルは生体展示をきっかけに爆発的に広がった。
週に1、2回開催されるオークションだと平均で100の繁殖業者やブリーダーが参加しており、規模が大きいオークションでは1000を超える関係者が参加する。
主に対象となるのは生後1ヶ月の子犬や猫で、免疫力が低いうちに取り引きされるために病気のまま販売されることも珍しくない。単価の低い鳥の雛などはライン作業のようにぞんざいに扱われる。
小売店
集客効果を狙って近年はホームセンターで生体展示を行うケースが増えている。
2013年の改正動物愛護法では販売する際に条文の明示が義務付けられたが、監視するシステムや罰則規定がないために絵に描いた餅になっている。
売る側は生後間もない子犬や子猫を客に抱かせて、冷静な判断ができないうちに売ってしまいたいのでいちいち説明するわけがない。
売れ残った個体はバレンタインやクリスマスセールなどでバーゲン販売され、それでも売れない個体は繁殖業者や引き取り屋に転売する。
生体展示をする中で死んでしまった個体はビニール袋に詰めて冷凍庫に入れて、固まったらハンマーで砕いてゴミとして出す。
あくまでこれは一例です。

行政指導についても問題点があると本の中に書かれています。実例は以下のものです。


都によると、昨年6月に立ち入り調査した際、パピオンは約150平方メートルの店舗で犬29匹と猫28匹、鳥210羽の他、ハムスターなどの小動物を約20匹飼育していた。ウサギ用のケージに入れられて運動できない猫や、頭をぶつけるほど小さなケージに入れられた犬、ケージが狭くて羽ばたけない鳥などがいた。従業員もアルバイトを含めて3人しかおらず、清掃が不十分なため汚物が放置され、臭気もあったという。
上記の場合、犬と猫の販売は禁止されたがそれ以外の魚などは対象外なのだそう。
なんとも腑に落ちない内容です。
こうした現状を変えるために、動物愛護の理念に賛同した人々で「しあわせなおかいもの?」という一本の動画を製作したそうです。


全てのペット産業が「悪」ということではなく、生命倫理の問題であると私は考えます。
マハトマガンジーが残した七つの社会的悪における「道徳なき商業」に他なりません。
このようなビジネスが成り立たないように警鐘を鳴らすとともに、いかにしてペット産業をシフトさせていくかは社会問題化するべきだと思います。
業者のエージェントとして議会に送られている議員の落選運動も面白いかもしれませんね。

この本はペットビジネスの実情を知らせるとともに、政治やメディアに対して疑問を投げかける部分もあり、教養を身につけるという新書としての役割も果たしています。
また、批判だけではなく新潟県など、行政が行っている活動も紹介されているので、暗い気持ちのまま読み終えることはありませんでした。
著者は「杉本彩」ですが、動物愛護に携わる多くの人の熱意が代弁された一冊です。

追記

熊本県や近隣自治体を襲った震災によって離れ離れになってしまったペットの情報はTwitter上で見ることができます。
1日も早く飼い主の元に戻れる日を願います。

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