おじさんっていいな!
またフリースタイルダンジョンがヤバかったので感想を書いておきたい。
今回は新しいRecの初戦ということで、どんなチームが来るのかは分からない。
そんな中やってきたのがーー
NAIKA MC、TKda黒ぶち、崇勲で構成されるパンチラインフェチズ。
紹介VTRではおっさんに夢を与えるおっさん達だと。
また、隠れモンスターとして登場したこともある崇勲はモンスターを倒すシナリオはできていると意気込んでいた。
初戦は2on2
そのシナリオを有言実行するかのように、崇勲とTKコンビが1小節の細かいマイクリレーで漢&サ上コンビをクリティカルで撃破。早いビートにはめつつ、サ上さん喋ってないと的確に指摘する崇勲のスキルが評価された感じ。
「おじさんっていいな」とDOTAMA先生。
そういえば先生はゆるキャラのイベントに呼ばれてそこでフリースタイルをさせられ、ゆるキャラに悪口を言いすぎると雰囲気が悪くなるからすぐ褒めてdisって…地獄みたいなイベントだった!とJ-waveの金曜深夜のラジオで言っていた。お疲れ様です。
さて、神回たらしめる展開が起こったのは「1on1」ステージ。
NAIKAさんが手を挙げてステージの上に立つと、隠れモンスターにFORK氏が登場。これに会場は湧き立った。
この時点の空気としては「どうなるんだろう。ザワザワ…」みたいな感じなんだけれども、先行のFORK氏が韻を踏むごとに雰囲気を作り上げていった。
ようNAIKA お前に足りねぇのはライムだ
それを教えに来たFORK レペゼンICE BAHN
これはルールじゃねぇ HIPHOPマナーだ
お前は今まで群馬で何を学んだ?
そのマナーを学ぼうとしねぇ奴は マナーモードみたく黙って震えとけボケ
邪魔なんだよ 下がれチャレンジャー
俺はお前が越えられる壁じゃねんだよ
完成度の高いライムで空気を作るFORK氏
「とけボケ」とか、「下がれチャレンジャー壁じゃねんだよ」なんて若手には言えないフレーズ。
壁だと思った事 一度だってねぇけど
何この人 韻がどうこう はぁ?
死ねよテメー おい
別に気にしてないよ 韻を踏むんだろ
ひたすら踏んでくれよ 踏まなくても お前の10年後によ
韻踏まなくてもテッペン取ったぞ おい
「何この人」「死ねよテメー」とか強い印象を持たせる言葉で、モンスターの空気を振り払うNAIKA MC
ワイプの反応も面白い。
言ったろ 韻だけってのは俺にとって褒め言葉
寿司屋で寿司しかねぇって言ってるのと同じ事だ
変わらねぇやり方やってる俺らがICE BAHN
変わらねぇんだよ 常に一味はライムだ
変わらねぇ味を じわじわと熟成
乗り方がどうとかこうとか知ったこっちゃねぇだ うるせぇ
古いスタイルで時代遅れ
でも1週回って最先端までスキル磨いておくぜ
スキル磨いてもよ 他の戦いに出ねぇで ここで何? こうやって上から見てるわけ 甘いよ パイセン
下からアッパー食らったら 一撃でくたばるぜ
おいおいおい 何だよお前
寿司屋に来て寿司屋しかねぇって 寿司屋には来てねぇんだよ
お前じゃなくてハンバーグが食いたいな
焼いて じゅう〜
背伸びすんのはいいけど身の丈は超えるな
背伸びはまだ地に足がついてっからな
浮き足立つな あくまで等身大
そういう言葉にしか 俺は応答しない
お前のスタイルが王道になっちまうんだったら 今後バトルの熱は相当冷める
それが正義だって言うHIPHOPシーンなら 俺は抜いた刀をそっと納めるよ
「そういう言葉にしか俺は応答しない」という一文は意図しないものかもしれないけど、O.O.Oでアクセントを揃えていて、次節から順番に「音」が「意味」を持って変化していく。
そっと納めて帰れよ じゃあ
別に韻だけじゃなくても勝ち上がる
覚えとけよ 温故知新 確かに韻はヤバい
でも何も出来なくても出来ることを証明したい
この前のDOTAMAの借りはお前で返させてもらう
甘く見んなよ そんじょそこらの安いバトルじゃねぇ
NAIKA MC 今日はダンジョンひっくり返しに来たんだよ
FORK氏のライムに痺れるワモンスター達。
そこで「帰れよ!」と言い放つNAIKA MC笑。
ラップの面白いところは音楽が無意識に韻を作り出すところで「温故」と「そんじょ」で踏んでるんです。
判定はーー
3-2でNAIKA MC
ですよねぇ。
アチー事言ってドヤ顔すんのやめろ
最後まであくまでラップやれよ
俺らはライムで切り開いていくオリジナリティー つまり自己流
ハンドルとHIPHOPは遊びがなきゃ事故る
事故ったら最後 保険はきかねぇ
自賠責に入ってても次回席はねぇんだよ
2階席で見とけ 時代劇みたいにはいかねぇんだよ
気持ちいいぐらいの全韻が続いて、ストーリー性もあるから聞きやすいですね。
お前 俺の帽子をとったこの頭が時代劇役者以上に役者だって事知らねぇらしいな 教えてやるぜ
別に事故んねぇよ問題ない
シートベルトして安全に韻踏んでるだけのお前とは違う
まるでラリーのようにのらりくらり前に進むぜ
熱い顔でドヤ顔 お前もクールな顔でドヤ顔よしとけよ
1回優勝したくらいで群馬背負ってるつもりか?
偉くなったなNAIKA
ジョウジはどうした RdaMaster
ついでにガジローマイクも入れときますか?
俺の地元じゃそんな事は口が裂けても言えねぇ
ここで実力を示せ 井の中の蛙大海を知らねぇ
お前はこの後必ず白旗をかざすよ
サンキュー 白旗かざしても ケツは別に振るつもりはねぇよ
それと俺の地元のマイメン出してくれてありがとう 喜んでるぜ
井の中の蛙大海を知らず されど空の高さを知るんだよ
分かる? 地に居なきゃ分かんねぇ
アンタこそ何かやってんのかよ 最近
ちなみに「されど空の高さを知る」 という言葉を考えたのは大河ドラマ「新選組」をやってた時に三谷幸喜が考えたものだと私は記憶してます。
何かやってんのかよ最近 知らねぇ
ライムはお前の中に入っていく細菌だ
ウィルスはねぇぜ ないぜワクチン
タッグチームじゃなくてソロでここで叩き潰すよ
NAIKA MC 群馬知らねぇ こんな所までノコノコ出てくんな
お前の横浜の夜の事 言ってやろうか?
お前の家庭壊すのは簡単だぜ
細菌からのウィルスでワクチンでタッグチームという自然な流れの連想で確実に韻を踏んでるのはヤバいし、「ん」という言葉の持つエアポケットの自在性たまりませんね。
やめてください それだけは やめてください それだけは
アホか? 言ってみ
でもこれ最後のバースだぜ 後で終わったらな ゆっくりとな
俺 別に何言われても家庭は崩れねぇ
全ての上に積み上げて立ってるぜ
FORKさん 3人なら最高にかっけぇけど
HIDAさんとの勝負のアンタはもういない
ノリツッコミをするのはサ上さんだけじゃなかったんだ!と一部の視聴者は喜んでいるに違いない。
以前はDOTAMA先生に「俺がアルバム作ってる間にアンタは子ども作って地元で威張ってただけだろ。HIPHOPに還元できてねぇ」みたいなどぎついdisをされたのにここでも家庭を狙われるとは。お子さんはどんな気持ちで画面を見つめていたのだろう。
一歩間違えたら不倫スタイルですよ←おい!
判定はーー
2-3でモンスター
バツン!とね。分かります。
結局アチー事 言ってる事だけだな
そんなもんかよNAIKA
韻踏めとは言わねぇ それはルールじゃなくてマナーだからな
だけどお前は何も学んでない
韻というのは韻と韻の間を埋める言葉への愛だ
そこのセンスにHIPHOPがあんだ
分かるか? お前のやり方
そんなんじゃ通用しねぇって事をここで教えてやるよ
aa.naで拍をつけるという感じの最後に来る「 なんじゃ」はライムなのか、音素の問題なのか私には分かりません。(あなた考え過ぎよ…)
レクチャーサンキュー
韻と韻以外のことを じゃあ教えてやるよ
韻で表現の自由が固まっちまうなら 俺はそれに踏まれたかねぇ
俺の影を踏むなよ アンタの負けになるぜ
1対1のこの勝負のやり合い
どこに行くのかな この答え 天下分け目の大戦
いやいや 俺達の希望は今日高ぇんだ
お前を撃ち殺して般若も討ち取るんだよ
大戦じゃねぇよ マジでそう 俺はそう質より量じゃなくて 量より質でいくさ
このライム そう全て自由が生まれる
知らねぇ ライムするのはHIPHOPって理由だ
つまりそうReason Four Season マイクだけで生きて来てる
まじでこのリズムに乗っけるぜ 沈むのはお前だ
そこでそう死んどけばいいんだ NAIKA MC
ちゃんとアンサーしつつ「いくさ」を持ってきたり、reason(理由)とseason(季節)で内容にも幅をもたせる英語を使ってますね。
最後の「生きてきてる」と「死んどけばいんだ」って対になってるフレーズなんだけども、単体で細かい韻が入ってるんですよ。これは日常的にとことん追求しないととっさに出てこないというか、職人技に感じました。
一度は沈んだほうが男として格好良くなるって
色んな奴に教わったからな 沈んだよ
でも 今そっから浮き上がってる
アンタこそさっきの1本目より浮き足立ってる
俺が量より質 質より量 それよりも良質のフリースタイルがしたいよ
それをしっかりと見せてくれよ
韻を軽く踏んでみた どうっすか?
採点下さいよ
いやいや 全く出来ちゃいねぇ
つまりNAIKA MCは全く俺の敵じゃねぇって事
量より質じゃねぇ その質が悪ぃから言ってんだ
今がお前の時代ならお前がいねぇ
お前がダッセェから俺が呼ばれてんだろ
隠れモンスター 知らねぇ マジでそのままコースターみたく落下してく急降下
つまりどっちが間違いねぇHIPHOPか教えてやるぜ
そういえば「知らねぇ 」っていうワードは焚巻相手の般若も多様してましたね。
俺のほうがヤバいHIPHOPだって言わしてやるぜ
お前のその目 俺から絶対離すなよ
さっきから何か隠れモンスターとか正直俺いらねぇと思ってるよ
何故ならモンスター降ろさせたいから
俺はここからモンスターぐらい成り上がるぜ
でもFORK 最高にかっけぇのは確かだ
だがな アンタの韻よりも俺の言葉が勝った
悪ぃけど 今夜の試合 俺が全部かっさらった
全韻でありながら「勝つ」に対して「かっさらう」だから反復法みたいな効果がありますね。
「勝った」「かっさらった」って、かなり親油性の高い言葉ですよね。
例を挙げるならハイジの「クララが立った!」と同じジャンルで。
判定はーー⁉︎
判定は4-1でチャレンジャー
NAIKA MCの勝利(最後に一礼してました)
せいこうさんの評価
バトルという名のラップ論ですよね。
「韻と韻の間にHIPHOPがあるんだ」っていう人と、「いやそんなものに踏まれたくないんだ」って、「もっと自由になりたいだ」っていう。
HIPHOPって自由の事だと僕も思ってる。
「いや、HIPHOPは自由だ!」って言い返す。
これはそのまま起こして額に入れて実篤とか書いて貼っておいて欲しいくらい素晴らしいHIPHOP論。
どちらが勝っても良かったと思うんだけども、まぁ最終的にNAIKAが「踏まねぇ」って言ってた韻を2つ入れてきて、相手に譲ったように見せて自分の点を上げたっていう、そこが試合巧者として面白いから僕はそっちに入れました。
モンスタールーム
FORKさんのバースでモンスタールームが湧きまくりで、上手すぎて伝わらんレベルのライムが凄くてごちそうさまでしたって感じです。最高でした。
こうやってリリックを書き出すといかにFORK氏のライムが凄いのかが分かるけど、 NAIKAさんが腹から声を出してこの言葉のパズルを吹き飛ばす感じが面白くて仕方なかった。
この試合はライムの良さも分かるし、パンチラインの魅力も分かる凄い試合だった。
パンチラインというのはポエトリーリーディングの技法に属していると個人的には思っていて、韻とパンチラインが見事に合わさった作品の一例としてコモンとウィルアイアムの「A Dream」を紹介しておきたい。キング牧師の声をサンプリングして自由についてラップしている。
放送終了後。
Twtterにはオフショットがアップされていた。
続行!
— TKda黒ぶち (@TKdakurobuchi) 2017年3月7日
来週も是非! pic.twitter.com/QfrJT7nOKy
昨夜のダンジョンありがとうございました。我々は次のラウンドへ。FORKさんは最高だった。2006年のUMBで魅せられてから俺の中の憧れ。目の前で聴いてて聴き惚れるラインばかり。けど、向き合ってしまえば譲れないから。FORKが最高なのは一番知ってる。さて、来週も是非に。 pic.twitter.com/EsnGfB6vyc
— NAIKA MC (@NAIKA9) 2017年3月8日
面の皮が厚い馬鹿な政治家みたいなおじさんじゃなくて、年輪を重ねて言葉の重みを知っているおじさんがいいなぁ。