モブトエキストラ

左利きのメモ魔が綴る名もなき日常

「トリノトリビア〜鳥類学者がこっそり教える野鳥のひみつ〜/著 川上和人×マツダユカ」の感想&タネで匙投げた話

ベランダの異変ーー

先日ベランダにタネのような落ちていました。

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お煎餅の『味ごのみ』の中に入ってそうな大きさです。

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これが一つや二つではなくバラバラと散乱していて驚きました。

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ちょうどその頃は節分だったので「狂ったパリピがベランダに投げ込んだのでは?」なんて空想していたのですが、節分を過ぎた今もベランダに同じようなタネが点在するという事が続いています。恐らく鳥の仕業であって、朝早くにウチのベランダでパーティを繰り広げているのだろうというごく普通の予測は立つのですが、それ以上の事は分かりません。
今までにこんな事はなかったし、家庭菜園のようなプランターも置いてませんし、どうしてウチに来るのかも分かりません。

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(毎年夏になると自宅でセミを羽化させるギリジンさん)

この現象を紐解くために鳥の本が読みたくなった私は、片桐仁さんが「道端のスズメやカラスと友達になれます!」と言っているのにまんまとつられてこの本を買ったのでした。(私はカモというオチさ)

トリノトリビアの感想

第1章 いつも見かける気になるあいつ
第2章 食べることとは、生きること
第3章 鳥たちの恋愛事情
第4章 育て!鳥の子
第5章 けっこうすごい鳥のからだ
第6章 鳥にまつわるエトセトラ

(1章から6章まで鳥の生態について分かりやすい見出しになっています)

第三弾「危険な読書」の感想 - モブトエキストラ

鳥類学者のバード川上さんは『危険な読書』の第三弾でもチラ見しましたが、著書を読むのは初です。本書は共著という事で右側にマツダユカさんの4コマ漫画があって、左側にバード川上さんの文章、その下に吹き出しで補足情報があるという構成になっています。章の合間には「トリノアレコレ」というコーナーもあって、専門書のような堅苦しさはなく、図鑑のように重くないので、読みやすいというのが最初の印象です。
ここからは気になったところを紹介します。

P24〜25
『汚れたスズメは砂風呂に入る』
スズメは大のお風呂好き。池や川、ちょっとした水溜りなどで「水浴び」もしますし、砂を使った「砂浴び」もします。植木鉢や花壇、街路樹の根元を覆う砂や土に、浅いくぼみがいくつか並んでい砂浴びることがあります。これが、スズメが「砂浴び」をした跡です。

これを読んで思い出しました。
光浦靖子さんが去年ラジオで言っていた話なんですけどね、自宅のベランダの隅に片しておいた植物の土が散乱していたそうなんです。まるで人殺現場のようになっていてかなり驚いたそうなんですが、人が侵入するには高すぎるし恐らくカラスだろうと言っていたんです。
この犯人(人間じゃないけど)が実はスズメで、砂浴びをするためにわざわざ袋を引きずって嘴で突いて穴を開けたというのは無理筋でしょうか? バード川上先生に光浦靖子宅の謎を解決してもらいたいですね。

P36〜37
ヒヨドリの飛行は省エネ型』
少し羽ばたいて上昇し、翼を閉じて弾道飛行、短く羽ばたいて上昇したら、また弾道飛行……これをくり返す「波状飛行」です。

何がすごいって、この文章の分かりやすさです。読んでいて「タタタッ、タタタッ、タタタッ」と羽ばたきと滑空を繰り返して空でスキップするような絵が頭に浮かびました。もちろん漫画で図解されているのですが、それが無くても文章だけで成立するというのは流石『子ども科学電話相談』のスターです。

P54〜55
『カラスはときに吸血鬼になる』

北海道の十勝地方では、乳牛の乳房の血管をつついて流血させ、血をなめる一群が見つかっていますし、盛岡の動物園では飼育されているニホンジカの背中をつつき、傷つけて吸血する現場も目撃されています。

これは初耳でした。この文章の注目ポイントは「血をなめる一群」です。つまりグループで知識が共有されているという事ですよね。そうなると、駅前で頭髪の薄い方がカラスに襲われているのは意味合いが変わってくる気が…。巣の周りで警戒しているのではなく、露出した肌を傷つけて吸血しようとしていたら恐ろしいですね。

P76〜77
シジュウカラはカタツムリでカルシウム補給』

人間はフランス料理でカタツムリの中身を食べますが、鳥にはカルシウム豊富な殻のほうが必要なのです。カタツムリが減ると、鳥も減ってしまうかもしれません。

これも頭の中にピーン!とくるものがあって、それはロイコクロリディウムです。閲覧注意だけどURL貼っておきます。
カタツムリを「ゾンビ化」する寄生虫ロイコクロリディウム | ナショナルジオグラフィック日本版サイト

この寄生虫はカタツムリが鳥に食べられやすいほうに移動させ、鳥に食べられる事で移動するという脅威の生態を持っています。

そこに今回の知識を加えると、鳥にはカタツムリを食べなければならない理由があるわけですから、見方を変えると鳥とロイコクロリディウムが共生しているようにも見えませんか? こんなグロテスクな遠距離恋愛も無いと思いますけど。(ゾワゾワ…)
カルシウムの他にもカルシウム補給のためにダンゴムシやムカデを食べるそうですが、そこにも未知の寄生虫がいたりして…。

P134〜135
『ハトの育児は年中無休』
ハトのひなは、親からもらう「ピジョンミルク」という液体で育ちます。親鳥の食道の途中にある「そ嚢」という、食べ物を貯蔵しておく器官の内側がはがれたもので、栄養たっぷりな食品です。哺乳類のおっぱいと違ってオスも出せるので、夫婦交代で与えることもできます。

子育てをする男性の中には、おっぱいをあげられない事が悔しいという感情を抱く方もいるそうですが、それを考えるとこの「ピジョンミルク」はかなり有能ですよね。ひょっとして、これによって親から消化に必要なバクテリアを受け継いでるという側面もあるのでしょうか? 詳しくは書いてないので分かりませんが、コアラとかカバとかはそういうのありますよね。食べるのウンコだけどさ。

P144〜145
『ミミズクのミミは耳じゃない』
そういえば、トトロにもミミがありますが、位置的に耳ではなさそうです。彼らも夜に活動していたことを考えると、あれもなかまを見分けるための特徴ですよね、きっと。

この文章に関しては読書に対する問いかけで終わっているのがツボです。しかも私の脳内に流れたBGMは『トトロ』ではなく『平成たぬき合戦ぽんぽこ』の「いつでも誰かがきっと側にいる、思い出しておくれ、素敵なその名を〜♫」です。
あと全く関係ないのですが、一部のヤギ好きはトトロに対して不満を抱いているようですょ。
トトロしってるか ヤギは下顎にしか前歯が生えない #となりのトトロ - Togetter

P174〜175
『カラスやトビが原因の火事がある』

京都の社寺では、よく和ろうそくが奉納されます。脂肪分が多く栄養満点な和ろうそくをハシブトガラスが好んで持ち去り、野火が起こるのです。

「この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた/著 ルイス・ダートネル/訳 東郷えりか」の感想 - モブトエキストラ
私はこの本を読むのと並行して、世界が終わった後の本を読んでいました。その中にちょうど動物性脂肪をもとにロウソクが作れる事が書いてあったのでタイムリーな知識です。つまり牛丼屋の寸胴鍋の上澄みの脂肪を掬ってやっとロウソクを作ったのに、カラスに放火されるというバッドエンドが開拓されたわけです。ただ、サバイバルドラマのオチだったらマヌケな感じが面白いですよね。でも実は最初から火事を起こして人間を焼いて食べるのが目的だったというオチなら見る者を裏切れるでしょう。
結果「カラスに文明が滅ぼされるのはあり得ない話ではないんじゃないか」というのがこのページの感想です。

ここまでバード川上さんの文章について書いてきましたが、マツダユカさんの絵も良いのでご紹介します。

私は身近な鳥の中でセキレイが一番好きで、トコトコと歩いている姿はコミカルだしそこから羽ばたいて飛ぶ感じが好きなのです。歩くのが得意な鳥というとまずダチョウがパッと思い浮かびますが、彼らは飛べないんですよね。空を飛ぶために軽量化するものと、飛行能力を捨てて巨大化したものとが居ると思いますが、身近で見れるうえに綺麗でコミカルで空も陸も得意という特徴を持つセキレイが不思議に感じるのです。
そんな「推し鳥」のセキレイマツダさんは見事に描いてました。

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(P42『ハクセキレイは飛ばなくていいなら飛ばない』より)
ご覧の通り特徴を捉えた完璧なイラストです。The 才能
漫画ってデフォルメと記号化がベースにあると思うんですが、同じ種類の動物を描きわけるのって難しいと思うんです。だからキャラクター性を出すために頭にリボンを描いたりするのでしょうけど、この本は模様であったり系統をハッキリさせて、何がどう違うのかを視覚化させています。(生息場所によってヒヨドリに差がある可能性とか、ハヤブサはインコに近いとかね)

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(P38『シジュウカラは鳴き声で会話する』より)

中でも一番テクいなぁと思ったのがコレです。分かりますか? ベーシックな起承転結ではなく4コマ漫画で三段オチをやっているんです。「こっ…これが武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒のスキルなのか!」と震えました。

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(P53『食べることとは、生きること』より)
あと鳥だけでなくこのネズミも可愛いです。目が点なのに表情がある感じが良いですね。


感想のまとめとしては総合的に良くて、レーダーチャートにしたらスパイダーマンのハンモックみたいになると思います。

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↑こんな感じ(私の画力はヤムチャ
私の画力の他にあえて足りない部分を言うなら、スパッと終わってしまうのが寂しくて、最後におわりのページが欲しかったなぁというぐらいです。
あと途中で「漢字にルビが振ってあれば子どもでも読みやすいんじゃないかなぁ」と思ったのですが、読み終えて逆に「ルビが振ってないからこそ漢字を覚えるんじゃないか?」という感想に至りました。私は小学校の頃に鳥を調べていた時に「油脂線」という漢字が読めなかったのを調べて今も覚えていたんですね。それがこの本を読んだ事で「尾脂線」にアップデートされました。探究心が旺盛な子どもであれば恐らくこの本は読めると思うし、難しい漢字もそんなに多くないんじゃないかと。(イラストもあるし) バード川上先生大好きっ子ならば、なおさら齧り付くように読むのではないでしょうか。

そして私は匙を投げてタネを蒔いた

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ーーなんて事を書いているうちにベランダに木の実が落ちているのを発見。
ピラカンサ?」と思ったけど実をつけるのは秋だったはず…。
「2月 木の実」で検索したらナナカマドがHit。北海道や東北地方で愛され山地に分布している木だそう。鳥も食べるんだってさ。でもタネが違う…。
\(^o^)/わからん!
私はこの名前も知らないベイマックスみたいなタネをばら撒いた。

(おわり)