モブトエキストラ

左利きのメモ魔が綴る名もなき日常

【月一宮台】「悲劇の共有」と「ギャザリング」と「自由」

早いもので6月の月一宮台。前回は新型コロナと検察庁法についての議論が中心でしたが、今回はアイデンティティだったり、遠隔授業が子供たちに与えるメリットやデメリットなどが語られました。

早口でガンガン流れていくのでメモするの大変なんですが書いておきます。

(あくまで個人的なメモです。ちゃんとしたものはradikoのタイムフリーでお聞き下さい)

以下、メモ。

 

青木さん)宮台さんこんばんわ。

宮台さん)はい、こんばんわ。

青木さん)よろしくお願いします。前回も言いましたが、一ヶ月という期間は物事を考えるには丁度いい長さだと思います。今夜はリスナーから多くメールが届いているので、ご紹介します。

リスナー)日本のジャーナリズムが自浄作用として機能するにはどんな制度設計が必要ですか?
宮台さん)制度設計の問題ではなく、日本は倫理を持つ人間が育たないようにできてる。ユニバーサルにある「これは絶対に許せない」という公共性の問題なんですね。
倫理を持つための前提は「悲劇の共有」です。滅びに瀕した社会はそれを繰り返し再生して共有します。しかし日本はアメリカのケツを舐めてしまった。「ギブミーチョコレート問題」ですね。冷戦体制が終わった後の日本は、アメリカのケツを舐めるのをやめるのかと思ったら付いて行ってしまった。

青木さん)宮台さんは、先の大戦の敗戦も悲劇の共有をされなかったと仰いましたが、一定程度の共有はあったけど共有者たちが社会の中枢から居なくなってしまったとは言えませんか?

宮台さん)ドイツではダメさを徹底してします。日本の場合は謝罪はしますがどこがダメだったのかは追及しない。

青木さん)そうすると、検察庁法の問題についてSNSで運動が起こったのは、コロナ禍という悲劇の共有があったから起きたと言えるのですか?

宮台さん)そう言えるでしょう。しかし、喉元過ぎれば熱さ忘れるという事を繰り返しています。丸山眞男が一国独立すべきだと主張し、「そうだ!」と言う意見がありましたがブームとして忘れ去られてしまった。メタ的にそろそろ学ばないといけないと思います。

リスナー)なぜ安倍内閣はこんなに酷い事をやってるのに、そろそろ政局にならないのでしょうか?

宮台さん)悲劇の共有をしてないからです。安倍をトップに奈落の底に落ちないと理解しない。まだまだウヨ豚、周りの目をキョロキョロしてる安心厨が跋扈してます。

青木さん)それなりの思考能力がある人なら、良い方向には行っていないと感じてると思うのですが、大手新聞が調査したところ、いまだに自分は中流だと感じてる人が多いようです。僕はカタストロフが大きくなってしまうのではと思うのですが?

宮台さん)実質賃金が最高だったのは27年前。韓国とイタリアに抜かれ、皆さんどう思ってるか分かりませんがオリンピックはもう無いでしょう。日本人は能天気なのでMMTで破綻するかどうか議論してますが、財政破綻はしません。問題は貧乏になっている事。海外では教育が無料で受けられる。潮目を越えないといけない。それはカタストロフの手前でしょう。

青木さん)宮台さんが「産業構造を変えないといけない」とよく言ってますが、この変わらなさは日本人特有なんですか?

宮台さん)日本特有です。日本人の祖先は縄文前から定住していました。台湾とは離れていたし、平野と平野には距離があり、争う必要もなくジェノサイドもなかった。

青木さん)侵略もされた事もないし、先の大戦では自業自得で存立危機になりましたが、何をどうするか分からない?

宮台さん)日本には貫徹がない。周りが「いいんじゃない?」と言うからそうしてやってきた。これは日本の歴史が作り上げた特性です。考えてみると、それが酷くなる可能性もあります。ズームが増えたり、この放送もブロードキャストでやってますが、知識社会化の基盤である集まりの共有であるギャザリングが無くなってしまう。
あれ?聞こえますか?
青木さん)聞こえます。
宮台さん)僕のPCが落ちました。
青木さん)じゃあここで一曲挟んで立て直しましょう!

✳︎これが悲劇の共有である(笑)

 

青木さん)宮台さん、後半もお願いします。スタジオの作家さん(青木さんのポケモンGO友達の西田さん)も興味があると言ってました。リモートだとギャザリングが失われてしまうという事ですね。

宮台さん)法の外で繋がっていく事が倫理を育む。みんなで外遊びをしたり、虫を獲ったり、縄跳びなんかもそうですね。人の痛みをダイレクトに自分の痛みとして学ぶ。簡単に言うと『仲間』ですよね。
今後、コロナでロックダウンと緩和を繰り返すとなると大変な事になってくる。
コロナ死と自殺と経済死と孤立死を合わせた数を減らさないといけない。
倫理の再構築をしないといけません。

青木さん)9月入学の移行についてどう考えてます?
宮台さん)くだらないと思います。以前、『デイキャッチ』という番組でも言ったのですが、国際化する事でコストが安くなるんです。恐らくこれから海外留学する事になると、リモート授業にお金を払う事になると思います。ポケトークみたいなものが一般化すると英語教育が必要なくなる。
日本で春に入学するのは共通感覚として、みんなで集まって祝うとか、お花見をするという事がけっこう大事だと思います。
全米ライフル協会のチャールズへストンは「ガンを手放せば秩序は保たれるが、それはもうアメリカではない」と言っていた。

共通感覚を壊すような改革でのっぺらぼうのようになり、安心安全便利快適な社会を手に入れてもそれは果たして日本なのかどうか。

青木さん)わりと保守が9月入学と言ってますがレガシーが欲しいのか…。

宮台さん)そうでしょう。インチキ保守です。

青木さん)日本では「これは許せない」という公共性が薄いという話でしたが、自粛警察はどうなんでしょう?

宮台さん)それは神経症的な個人的感覚で、劣等感に基づくものです。不倫炎上もそうですね。周りの目を気にするキョロ目で不自由な中に、自由なやつがいると「みんなでコイツやっちまえ!」となる。

青木さん)アメリカのトランプを見ても、なんか壊れかけてるように見えるのですが?

宮台さん)トランプの支持基盤はラストベルト。オピオイドの蔓延もあり、彼らは心身ともに痛んでます。昔はこんなではなかったと。そこでトランプは「俺が古き良きアメリカを取り戻してやる!」と言って支持を得た。テクノロジーを駆使すればトランプならできるとインテリも支持してる。でも、これはポピュリズムです。
リチャードローティが、リベラルというのは座席のある乗り物だと言っていて、席が無くなってくると「なんでお前が座ってるんだ!そこはもともと俺の席だ!」と言い出す。移民国家だからこそ起こる問題でもありますが、アメリカの自由は白人のキリスト教徒の中にしかなかった。だから原理主義的になる。
そういう意味で日本の保守を名乗る人間は参照点がどこなのか、頭大丈夫なの?と思ってしまう。

青木さん)わかりました。そろそろお時間となりました。宮台さんありがとうございました。

宮台さん)ありがとうございました。

✳︎メモ、ここまで。

 

今回はいつにも増して濃密に感じました。奈落の底に落ちないと未来に対する打開策が打ち出せないというのは、考えさせられるものがあって、例えば新型コロナの話で集団免疫が60%にならないと流行が収まらないという問題がありますが、悲劇の共有というのはまさにそれなんだと気付かされます。しかもそれは学習能力が高くとも倫理観がなければ機能しない。

忘れたくないですね。