モブトエキストラ

左利きのメモ魔が綴る名もなき日常

「旅をする木 /著 星野道夫」の感想

読書の秋に目が眩んだ

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読書の秋という事で文春文庫では現在、本を二冊買うとプレゼントに応募できるキャンペーンをやっているそうです。
それを店頭で知った私はまんまと文春文庫の掌の上で転がされて二冊買ってしまい、A賞ポスター B賞1万円相当の牛肉詰合わせ C賞宝くじ20枚の中からどれか選ぼうとしているところです。
ポスターはデザインによりますが、高橋一生のポスターなら要らんガーナ。(だってファンじゃねーし)B賞はお肉。これは安牌であるが、ベジタリアンの場合は無縁の長物でしょう。C賞は文春文庫の抽選のうえにさらに年末に抽選があるという狭き門で、いわば芸能人のスカウトキャラバンみたいなものです。ちなみに宝くじというのは連番で10枚買えば1枚の当たりは確定(3千円で300円)しますが、賞品の20枚はバラだそう。。。

A賞:謎のポスター
B賞:肉
C賞:当たる可能性の低い宝くじ

な、何だこの三択は!
ポスターくらい抽選漏れのダブルチャンスでくれたっていいじゃないか!
『億男』にかけて宝くじが賞品になっているのだろうけど、結局儲かるのは銀行じゃないか。本を二冊買った読者に対してこんな難しい三択を迫るだなんて、文春文庫はとんだスフィンクスだ。
「文春文庫さん、肉を下さい!!」と念じながら投函したいと思います。

旅をする木

この本に関しては以前から買おうと思っていた一冊で、存在自体を知ったのはラジオ局のJ-waveの特番とSwitchという雑誌がきっかけだったと思います。

知ってると言っても「アラスカの大地について書かれた本」ぐらいの漠然とした認知と「作者である星野道夫さんはこの世に存在しない」という二点だけだったりします。
それに、私個人としては『旅』そのものにあまり興味が無いので女優さんや俳優さんが海外でロケをするだけのテレビ番組を見ると「ホームビデオじゃん。趣味でやれよ!」と悪態をついてしまいます。でも、そこに現地の文化を紹介するだとか、先住民に対するリスペクトがあるなら話は別です。
陸海空 地球征服するなんて|テレビ朝日
最近『陸海空 世界征服するなんて』という番組が好きで見ています。この番組は『黄金伝説』の制作チームがやっている番組で、ディレクターである友寄隆英さんの異常な人間力とサバイバル能力が魅力です。(そこら辺の芸人さんじゃ歯が立たないレベルにぶっ飛んでる)
なかでもとくに、失われゆく部族の生活様式に対しては丁寧に取材をしていて、西洋文明からもたらされる近代技術に部族の生活が飲み込まれていく感じがとてもリアルなのです。ついこの間のパートでは誕生日という風習が伝来していたり、スタッフが教えたわけでもないのに子供たちが「ジャンケンポン!」と遊んでいたり、いつか昔の日本でもこの様な文明が衝突する風景があったのだろうなと思いながら見てました。

 

前置きが長くなりましたが、こうした先住民の面白さに触れたいと思って『旅をする木』を購入しました。
ここから感想を書いていきますが、まず触れておかなければならないのが本のカバーにあった作者紹介。

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星野道夫(ほしの・みちお)
1952年千葉県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、アラスカ大学野生動物管理学部に入学。以後、アラスカを生活の基盤にして撮影・執筆活動をする。86年アニマ賞、90年木村伊兵衛写真賞受賞。
96年8月8日、ヒグマの事故により急逝。

この作者紹介が前提としてありつつ、読み進めると、詩的な表現であったり、五感に訴えかける自然のみずみずしさを文章化する能力がとても高い事が分かるし、活字の向こうに風景が浮かんでくる世界観がこの本にはあります。

ご自身の生い立ちであったり、アラスカで知り合った仲間や家族に関する事がご自身の感情と共に書いてあるのですが、そこを読むと切ないのです。純度の高い感情表現であるほど「この後、星野さん亡くなっちゃうのか…」と悔やまれるのです。ただ、それは作者の本意ではありませんから強調するのは良くないのかもしれませんね。
先住民の人々の暮らし、アングロサクソンの侵略、カトマイ山の大噴火、世界大戦による領土の変遷、自然の普遍的な美しさと大地や海の中で生きる動物たち、そしてそれを伝える冒険家や本の素晴らしさ…どのページからでも読めるようになっているので読む順番によっても印象が変わると思います。(過ぎ去っていく時代の風景を写真に残しておきたいというフォトジャーナリストの視点もカッコよかった)


私はふと以前に読んだ、ロストオデッセイというゲームの小説で重松清さんの『永遠を旅するもの』を思い出しました。この小説もどこからでも読める構成になっていて、死ぬ事ができない主人公カイムが数え切れない出会いと別れを繰り返す物語になっています。自分の中を巡る命の大切さと、他人の中を流れる命の大切さの違いに苦悩する場面があったのを覚えています。

旅をする木』はワスレナグサという話を最後に1995年の7月に書かれた「あとがき」で終わりますが、『永遠を旅するもの』のなかには「忘れないでね」という話があったりします。偶然でしょうか?
また、ゲームでいうと1つ気付いた事があります。

P38ーー
ぼくはいつか読んだ、ナバホ族の神話に出てくるハエの話を思い出しました。そのハエは、人間が砂漠を歩いているとき、時々飛んできては肩に止まります。ナバホの神話では、そのハエは"小さな嵐"と呼ばれ、試練を課せられた幼い英雄の耳元で、父親の出した難問の答をそっと教えてくれるのです。つまり隠れた知恵を明かしてくれる聖なる霊の声なのでした。

この部分を読んで衝撃が走りました。「MOTHER2のブンブーンはここからきてたのか!」と。確定ではありませんが、MOTHER2も旅をするゲームですからナバホ族から来てる可能性は十分あると思います。


いやー、気付きを与えてくれるいい本ですね。
ただ一つ問題があるとすれば、私のボキャブラリーが貧困で針葉樹林やヒグマやオオカミ、セミクジラといった断片的な絵は頭の中で想像できるのですが、ユーコン川のあたりでどうしても『水曜どうでしょう』で大泉洋さんが尻を大量の蚊に刺されながら用を足してる絵が浮かんできてしまうのです…。

星野道夫さん!すいません!笑

ユーコン川と聞くと『コレ』しか浮かんでこないし、つい先日も千葉テレビでやってたアフリカ編を見て笑いました。

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(笑わずにいられません…笑)
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マレーシア編のブンブンクンバン(ブンブーンじゃないょ)と全く違う展開で、動物がたくさん居すぎるあまり、早々に風景に飽きてしまい、大泉さんが動物を馬鹿にし始めたあたりで、布切れでできた宿泊所の外を毎晩ライオンがウロついてるっていう。笑

おわりに

記事の終わりで『水曜どうでしょう』の分量が多くなってしまいましたが、こうした素晴らしい大自然を描いた本を脳内再生できる人間力がある人を尊敬したいところです。

またどこかで、ワタリガラスによって始まるエピソードや、地球の原語や土地の記憶を伝えようとする本やキャラクターに触れた時、私はきっとこの本のことを思い出すのでしょう。

さすが「秋100ベストセレクション」ですね。

なんでもない日の、星野道夫さんのこと。- ほぼ日刊イトイ新聞

星野道夫さんはアラスカで何を見つめていたのか?写真展でたどる「星野道夫の旅」 – J-WAVE 81.3 FM JK RADIO TOKYO UNITED

旅をする木 (文春文庫)

旅をする木 (文春文庫)