モブトエキストラ

左利きのメモ魔が綴る名もなき日常

HUNTER×HUNTER 38巻の感想(パクノダネキの制約と生牡蠣食わねぇか)

大満足



書店に飾られるポスターがカッコいいと評判になっていたHUNTER×HUNTER38巻。
表紙にはゴンさんがドン!

そして冨樫先生のコメントでドッカーン!
見事な2コマ落ちで幕をあける。
主人公はゴンさんであると今も思っているけど、本巻は出演者全員が主人公であると思わせてくれる濃厚さ。
たとえ数コマしか出ないキャラクターであっても、どのような人間性なのか分かるような会話劇が繰り広げられていて、背景の細かい描き込みは不穏な空気が漂う船内の雰囲気を際立てている。
もう、白い空間とは言わせない。

38巻の大トロの部分である旅団の過去は幼少期に流星街で過ごしたイノセンスな記憶。
ゴミ山の中から拾ったビデオテープを再生して異国の文化に触れ、語学を学び世界に想いを馳せる日々。
ある日、クロロ達は戦隊ヒーローのビデオテープを拾う。皆んなが分かるように自分達でアテレコして、流星街の子供たちを笑顔にした。これをきっかけに劇団を作って世界旅行をしようという夢を語った直後、友人のサラサが人身売買組織に攫われる。
あまりにも「やめたげて!」な展開にページをめくりたくなくなる。泣&笑


横槍メンゴ先生が投稿していた「まさにそれ」である。

それとキャラクター達の表情が素晴らしい!
自分のせいでサラサが行方不明になったのではないかと、ステージの上で告白するクロロがズボンを掴んでいる所作も細かいし、常に皆んなの事を考えているクロロに思いを寄せているパクノダは「涙腺崩壊するぞ!ボマーに気をつけろよ!」だった。




クロロに一生触れないという制約を自分に課したシーンの裏側にクロロが来るようになってるコマ割りたまらんし、ヨークシン編でクロロを救出したのもパクノダだし。メモリーボムで記憶を受け取ったフィンクスとフェイタンはきっと、幼かった日の自分達をゴンとキルアに重ねていたんだと思うと善人にしか思えない。
前提が変わるだけで正義と悪が簡単にひっくり返る恐ろしさもあって。

人身売買組織を追いかける為に人生を捧げて悪に徹すると決意したクロロと、同胞を虐殺されて奪われた緋の目を取り返す為にマフィアの世界に入り、ツェリードニヒにたどり着いたクラピカ。
これまでクロロとクラピカは対比の構造で描かれてきたけどクルタ族を虐殺した犯人は本当に旅団なのか?という疑問を抱かせる展開…。
ヨークシン編を読み返すとセンリツ姉さんは確かにこう言っている。

「彼らが今までに何をしてきたのか私は知らない。あなたの憎悪の深さから漠然と非道集団のイメージを膨らませただけ…」

旅団の過去というものが「生まれつきの悪党は存在しない」という事を描いているなら、本巻で元学友が登場したツェリードニヒもまたそうなのではないか?と脳裏をよぎる。(とはいえ、犯した罪の重さに値する末路が欲しい)

展開として大きいのはヒソカが登場した事。
私はイルミの姿に変装して乗船したのではないか?と疑っていたんだけどそれに関しては真偽不明。
団員が集結する場面にわざわざ来るか?とも思うし、最後の晩餐を模しているならユダが必要でもあるので何とも。
旅団にとってのバッドエンドである「全滅」をヒソカは狙っている。過去編を読んだ今なら、結成メンバーであるシャルナークを殺害された事で全員が憤怒しヒソカの首を取りたがっているのも理解できる。「コルトピうんこかな?」が遺言だなんて不憫すぎる。
😭💩🤡

王子たちの継承戦に関しては既に第12王子のモモゼと第8王子のサレサレ、船内からの脱出を試みた第10王子のカチョウと第11王子のフウゲツのうちカチョウが死亡している。
生き残ったフウゲツも気が変になっていて、センリツが見たところ「邪霊」が集まっているのが理由らしい。
「念獣」でもなく「守護霊獣」でもない「邪霊」という概念の正確な説明はないけれど、37巻で第2王子のカミーラの仲間が紹介されているところで「死後伴侶」の説明で「怨霊」という単語は出てるので邪霊≒怨霊と理解していいと思う。
呪術廻戦みたいに降霊術の能力者が出てきて、バラシ屋ジョネスの怨霊とか、ポックルさんの怨霊とか「俺じゃなきゃ見逃しちゃうね」の人の怨霊とか、色々な怨霊が復活す展開も悪くないのではないか。(噛ませ犬とギャグ担当のアベンジャーズ見たいよね)
最初は第1王子ベンジャミンと第4王子のツェリードニヒのどちらが王子になるか?みたいな感じだったけど、継承戦から逃げる事ができないと悟った第9王子のハルケンブルグが腹を決めてから必中必殺の能力を身につけた事で流れが変わり、ツェリードニヒも特質系の未来予知能力に加えて念獣も出て、守護霊獣と合わせてかなりの戦力アップをしている。
ツェリードニヒ>ハルケンブルグ>ベンジャミンという感じか?
第3王子のチョウライの守護霊獣が作り出すコインの能力はイマイチ判然としないし、他の王子の守護霊獣も分かっていない部分が多い。既に脱落したモモゼの守護霊獣(大きいネズミみたいなゆるキャラ)がカチョウ同様に死後強まる念の可能性だってあるし、能力の相性もあるから武闘派だからといって生き残るとは限らない。
クラピカが警護している第14王子のワブルの守護霊獣も明らかになってないけど、34巻で母親のオイトの身にストレスがかかって身体を震わせた時にクラピカが一瞬気配を感じるシーンがあった。これがメダマジャクシなのか「おヒマ?」なのか、クモとクマの誰の守護霊獣の気配なのか分からないけど、今後ドンパチが始まってクラピカが警護できない隙を狙ってオイトが絶命するみたいな展開になった時にとんでもない守護霊獣が爆誕するフラグかもしれないと私は思ってる。能力バトル漫画あるあるの後出しジャンケンの旨味よね。
本巻の戦闘シーンに関してはシュウ=ウ一家の若頭であるヒンリギ=ビガンダフノと旅団のノブナガのタッグが見どころだった。今までノブノガの戦闘シーンは「動くと切るぜ?」的な刀を抜かないカッコ良さがあったけど、今回のノブノガはルパン一味における五右衛門みたいに壁を切るシーンがあって、どのように刀を振り下ろしたのか動きが分かる線の美しさは冨樫先生の画力を味わえるコマだと思う。
他に目立つものとしてはエイ=イ一家の顧問弁護士のヨコタニが能力を発動するシーン。
モレナが居るアジト限定の能力かつ、法律を犯した侵入者に名乗る事で、完全守備専門の無敵の衛兵を出してきた。「無敵型」なんて守護霊獣より強い気がするのは私だけだろうか。

いやぁ〜、38巻はキャラの表情もいいし、背景もいいし、旅団の過去は涙腺にくるし、ノブノガが生牡蠣食えない事も分かったし、満足度が高い。
腰痛に苦しみながら創作活動をしてくれる冨樫先生のおかげです。


日常の多くの行動が制限されているだろうし、描きたいのに描けないストレスは半端じゃないと思う。
ヘルニアは長距離ドライバーや作家にとっては職業病で、お仕事をしながら完治させるのは難しいと思う。
冨樫先生の投稿に「大天使の息吹があれば」という返信をされている方もいたけど、空気階段の鈴木もぐらさんの股関節を治したゴッドハンドを紹介してあげて欲しい。

人工関節にするかどうかまで悩んでコンビのスケジュール調整までした段階で、吉本の女帝経由でゴッドハンドに施術してもらったらジャンプできるようになってて、相方の水川かたまりさんが「なんでジャンプできんだよ!」ってラジオで爆笑してた。
もう2年前の話だけど除念師待ったなしだよね。
(おわり)