モブトエキストラ

左利きのメモ魔が綴る名もなき日常

「Q&A/著 恩田陸」の感想

ここ数年、月に一冊本を読んで感想文を書くというのを習慣化してきたのですが、昨年末から心が空虚なまま行き詰まってしまい、今年に入ってからはほとんど本を読んでいません。今回の『Q&A』は私が最後に買って積ん読状態にしていた作品です。

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表紙にあらすじが書いてある珍しい装丁で、死者が69人も出た事故の現場で謎の少女が目撃されたというとても気になる内容です。そして私はまんまと買ってしまったわけですが。

P38
どんな話だったんですか。
「つまり、警察の発表は嘘ではなかったと知った時です。警察も、必死に原因を捜していましたが、何も見つけられなかった。彼らの発表は正しかった。お客はほとんどが転倒したために死んだ。そして、消防士が言うには、どこをどう捜しても、あの時のMの店内には、火災はおろか、何かのガスの発生した痕跡、もしくは何かの事故が起きたあとは全くなかった。言い換えれば、彼らが死ぬべき原因はどこにも見つからなかったと言うんですからね」

感想文を書くたびに同じ事を書きますが、私は登場人物が多かったり、長い話が苦手で、短編集ぐらいのサイズじゃないと頭に入ってこないタイプの人間です。「じゃあなんで買ったのさ」って話ですが、読めると思ったんですよ。それが自分でも驚くほど読み込めなくて。笑
この作品の特徴である「Q&A」方式の書き方はネックで、質問者と回答者がそれぞれ誰なのかを考えながら読む楽しさがありつつも、同じ濃度の受け答えが淡々と続くので読むのが辛いのです。例えば落語家さんが、右を向いても左を向いても同じ人格で、ボソボソ喋っていたらお客さんは寝るじゃないですか? でも私はこのミステリーには興味があるので、眠気に耐えるわけです。だから辛い。

あと細かいところなんですけど、誰しもすぐに心を開くわけじゃないでしょう? とくに事件の被害者は記者やジャーナリストが質問したからといって、すぐに本心を打ち明けるわけじゃないと思うんです。でも、登場人物達がわりと能動的に喋るので私はそこに違和感がありました。

https://www.jiji.com/sp/bunshun?id=36818
(実例として、公文書の改ざんを命令されて自殺に追い込まれた赤木さんの奥様が大阪日日新聞の相澤冬木記者を通じて告白するまで2年かかっています)

それで読めなくて、積ん読状態になっていたわけです。で、時は過ぎて、新型コロナの大流行で社会が終わりかけてる最中、たまには本を読もうとリトライしました。その結果やっぱり頭に入ってこなかったので、飛ばし読みという愚行を働きました。(恩田陸さんすいませんorz)
結果、なぜMの店内で将棋倒しが起こるほどのパニックが発生したのかについては警察も明確には分からないまま、人々はこの奇妙な事件を娯楽として消費したり、金を稼いだりというサブストーリーもありつつ、背景には浅間山荘事件の重信房子重信メイさんみたいな話とオウム真理教がミックスされたような話があり、その少女を巡っての争いがあったというオチでした。散らかってる感じは否めませんが、ジャーナリスティックに事件を追う感じだったり、東海村の臨界事故だったり、色々と私にも興味があるパーツは入っていて、その時代の匂いを感じられる作品ではあると思います。
ーーとかなんとか書いて見たけど、飛ばし読みした感想文ってよくないよね。

(おわり)