モブトエキストラ

左利きのメモ魔が綴る名もなき日常

「すぐそばにいる他者の物語」の感想

NHKドキュメンタリー - ETV特集「すぐそばにいる他者の物語」

「人が心から笑う瞬間というのは、どうしてこうも美しいのだろうか」

NHKで放送された『すぐそばにいる他者の物語』を見終わってそう思った。
この番組はそれぞれ身体に難題を抱えた人々が舞台の上で当事者として、俳優として、というか全てひっくるめて人間として訴えかける朗読劇のドキュメンタリー。視聴感覚としてはTEDのプレゼンを見ている感覚に近かった。
社会の偏見にさらされながらも、理解者を得た方々はとにかく力に溢れていたし、自らの難題を言語化できるうえに何をしたいのかが言えるという事に凄いなぁと感じた。

そうした命の輝きを撮影できる取材班の方々も、おそらく相当に勉強を重ねたうえで取材しているのではと思う。

番組の中ではメインとなる朗読劇とは別に、手話で漫才をするというワハハ本舗が企画したシーンがあって、同時にやった場合に口で表現するのと手話で表現するのとで、完成度が中途半端になってしまうからどうしたものかと悩むシーンが印象に残っている。

その時に一瞬、手話にも違いがあるという話が出た。
【特集書き起こし】手話はひとつの言語である!特集(2017.6.24放送)

これは以前に『ウィークエンドシャッフル』で取り上げられた日本語対応手話と日本手話の文法構造の違いだと思うんだけど、その女性の生きづらさの一つが「声が出せるなら聾者じゃないじゃないか」という、難題を抱える人々の中に存在する差別。(ちょっとうろ覚えで書いてるので間違えてたらごめんね)
つまり差別やスケープゴートといったものはどんなに小さなコミュニティでも発生する可能性があるという事と、それは相互理解があって初めて乗り越えられるという事が映されている。だからこそ、笑いであっても完成度が重要なんだという悩みに繋がるわけだけど、それはかなりの高等技術だと思うし、当事者だからこそできる事に他ならないと思った。
番組の最後は「私はあなたのそばに居ます」というようなセリフで締めくくられる。これは単に番組タイトルを強調する言葉ではなくて「私達は千差万別の難題のあくまでごく一部ですよ」という意味合いのほうが強いと感じた。
国の法整備であったり、雇用者の水増しといった今まさに目の前にある闇の部分にも触れられていたし、スマートフォンを使って部屋の鍵を操作する事だったり、インターネットで繋がるという光の部分も映されていて構成としても良かった。
なんていい番組なんだろうか。

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