モブトエキストラ

左利きのメモ魔が綴る名もなき日常

「くまのレストラン」というアプリの感想

死者に「最後の晩餐」をふるまう優しいドット絵のアドベンチャーゲーム『くまのレストラン』Steam版が配信開始

先日、電ファミニコゲーマーのサイトで「くまのレストラン」というゲームがSteamでリリースされるという記事がありました。

このゲーム自体は以前からアプリストアでリリースされていましたが、私はてっきり料理を作って客に提供して店を大きくしていくジャンルのものだと思い込んでいて、「泣ける」という言葉を見てやってみる事にしました。

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タイトル画面はレストランと関係ない大きな木の下にベンチがポツンとあります。落雷したら危険です。

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あらすじに関しては電ファミさんが書いたとおりで、亡くなった人間の最期の食事を提供するのがこのレストランの役目。
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重いテーマ設定ではありますが、コミカルなやり取りもあります。
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故人が食べたいものを提供するのがシェフであるくまの仕事ですが、全ての料理を知ってるわけではありません。そんな時は相棒のネコが記憶にダイブして、料理を見てくるミッションをこなします。見てきた料理をくまに伝えて作ってもらい、提供するという流れですね。

私はドット絵が好きなので、料理のドット絵の上手さに感動しました。

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↑ちゃんとおでんに見える!すごい!

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↑これは食材をかじっていたネズミの記憶の中。大きなキノコがあります。
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ラクタリウス・インディゴという名前らしく、ゲームの中の創作物かと思いきや…。

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実際にあるっていう。日本で発見されるのは稀だそう。モンスターハンターに出てくる青いキノコもこれなのかなぁ。

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故人にはそれぞれ死に至るまでの背景があり、それは主人公のくまとネコも同じです。ストーリーの核心部分はくまとネコが生前は親子であったという事。言葉にしてしまえばこの一言で終わりですが、なぜくまはくまの姿をしているのか、なぜ娘はネコの姿なのかについても触れられています。

ただ、人によってはこのゲームをやっていて辛くなる方もいると思うので、万人にオススメできるかというと…躊躇してしまいます。
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それでも本編をクリアした時に心に残るものは必ずありますし、お客さんにプリンを提供する時にくまがプリンを見ていた事も思い返すでしょう。

↑本編自体は1時間もかからずクリアできました。

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本編クリア後には虚無編というストーリーが始まります。ある日、レストランに謎のお客が入り込み、ブラックホールのような穴にネコが吸い込まれてしまいます。くまは娘を助ける為に、地獄行きの列車に乗るというプロローグです。

虚無編は購入しないと遊べませんが、とある方法を使うとアンロックされます。親切設計ですね。
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虚無の世界に連れてこられたネコは、ボボボーボ・ボーボボに出てくるドン・パッチみたいなキャラクターに寄り添い、友達になります。それまで自分が抱いてきた寂しさを、ドン・パッチの中にも感じたからです。しかし、虚無の世界に長くとどまったせいで魂が消えかかってしまいます。
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一方、その頃くまはカロンの舟に揺られて虚無の世界を目指します。ここで魚釣りのイベントがあって、ユニークだなぁと思いました。
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急いで娘の元へとたどり着いた時には魂が消える寸前でした。
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存在が消えかかる娘にお弁当をあげるシーンは涙腺クラッシャー。
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2人は生前の姿を取り戻しますがーー
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虚無の世界でずっと一緒だよ!というバッドエンドに…。

いやいやいや、これではうかばれないですよ。

この虚無の画面の中で「つづきから」をタップすると…。

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ドン・パッチが登場。

ネコから友達とは何なのかを教わった彼は、自らの存在と引き換えに2人を蘇らせるのでした。プレイヤーに対して「ぼくの事、忘れないでね」と言い残し、彼は姿を消しました。f:id:ebiharaism:20211012113551j:image

そして2人は姿を取り戻します。

無事、レストランに帰ってきた時にプレイヤーはドン・パッチとの約束を果たさなければなりません。彼のことを忘れない事。ネコの部屋で彼の記憶にダイブするとエンディングロールが流れるのです。

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これまでインストで流れていた曲に歌がついて、これまた涙腺を破壊するラストになっていました。

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そもそも、ドン・パッチがネコを虚無の世界に連れて行かなければ別に何てことなかったのではないか?と考えられない事もありません。

でも、このキャラクターは地獄に送られた人間を食べて生き続け、永遠の孤独を抱えているのですから、寂しさに勝てなかった事についてはプレイすれば理解できると思います。

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最終的にドン・パッチも黒いネコに生まれ変わりました。可愛いから許しましょう。

おわりに

一本道のノベルゲームなので途中で迷う事はないと思います。ただ、途中で書いたように辛い記憶を持っている方に対しては、傷口をえぐる可能性があるので個人的にはオススメできません。私自身、去年に妹が死んでいるので、ゲームとはいえ死者の記憶に触れる事を楽しんでやる事はできませんでした。それでも、シナリオ自体はトラウマとの戦いを描いていますし、キチンと希望の光が見えるようになっているので、トータルとしてアプリストアのレビューの評価が高いのは頷けます。

人に優しくできるゲームだと思います。

(おわり)